受け口としゃくれは時として同じ意味に使われますが、これらは似ているようで異なる状態ですので、それぞれの違いについてご説明します。
受け口としゃくれの違いとは?
受け口としゃくれはどちらも下顎が出ている状態ですが、意味が違います。受け口は歯並びが反対咬合で、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態です。そしてしゃくれは、下顎の骨格が前突している状態をいいます。これらの定義の違いによって、治療方法も異なります。
受け口(反対咬合)とは?
受け口は反対咬合とも呼ばれ下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態の不正咬合のことをいいます。
正常な咬合では上の前歯は下の前歯よりも数ミリ前に出ています。受け口は逆になっていて、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態です。
横顔を見ると下唇を前に突き出したような容貌になることが多く、下顎が前に出ており、奥歯の噛み合わせにも問題があるケースが多いです。
受け口を放置すると、歯磨きの難しさや咀嚼の問題、口の乾燥、発話の障害、顎関節症、肩こり、頭痛、消化器系の問題、集中力低下、見た目への影響など、多くのデメリットがあります。
受け口は舌癖や指しゃぶりなど後天的な要因で発生することが多いため、歯並びに影響を与えるような癖を早めに治すことが好ましいといえます。
しゃくれとは?
しゃくれは、骨格の問題により下顎が前に突き出た状態を指します。これは歯並びの問題ではなく骨格に原因があります。反対咬合を起こしている場合は、噛み合わせと見た目の両方を改善させる必要があります。
しゃくれは主に骨格の遺伝が原因ですが、生活習慣によって起こることもあります。将来下顎が前に出るような輪郭になることが予想される場合は、3歳頃から治療を始めることが出来ます。
受け口としゃくれの治療方法について
受け口としゃくれは全く違った原因で起こります。原因の違いにより、治療方法も異なります。
受け口の矯正方法
受け口は歯列矯正によって治療が可能です。以下の3つの方法が一般的です。
1. マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使用して歯を動かし、歯並びを整える方法です。マウスピースは取り外しが可能で、食事や歯磨きの際には外すことが出来ますが、1日に20時間~22時間以上の装着が必要になります。
他人から装置が見えにくいことと、ゆっくりと歯を動かして行くため痛みが少ないことが特徴です。しかし、歯が動くスピードが遅いため、抜歯矯正のように大きく歯を動かさねばならないケースにはあまり向かないということもいえます。
2. ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯の表側にブラケットという小さな装置を貼り付け、そこにワイヤーを取り付けて歯に力をかける方法です。この方法は伝統的なやり方で、殆どの不正咬合の治療に対応出来ます。
金属製の装置が目立つため、見た目を気にする方には不向きとされてきましたが、近年はセラミックやプラスチック製の白いブラケットと白いワイヤーが使われ、あまり目立たなくなりました。
3. 裏側矯正
裏側矯正は、歯の裏側にワイヤーとブラケットを付ける方法です。装置が他人から見えにくいため、目立たせたくない方に適しています。しかし装置によって舌の動きが制限され、発音しにくい音があったり、歯磨きが難しいという問題があります。
しゃくれの矯正方法
しゃくれのは主に骨格に原因があるため、歯並びの矯正だけでは下顎の突出感を十分に改善させることが出来ません。しかし、反対咬合を起こしている場合は、受け口と同じく、噛み合わせの治療も必要になります。
子供の矯正では、下顎の過成長を抑えるような装置が使われます。子供の間に顎が大きくなりすぎないように成長をコントロールすると、大人になるともう顎骨は成長しませんので、しゃくれになることがありません。
大人の方の治療は、多くの場合、外科手術が必要となります。しゃくれの外科矯正では、セットバック手術と呼ばれる手術が行われます。
セットバックは左右の小臼歯を抜歯し、歯1本分の骨を切り取って下顎を後ろに下げます。セットバック手術は全身麻酔によって行われ、大変専門的な処置であるため、経験豊富な医師によるカウンセリングと治療計画が必要です。
治療方法の比較
治療法 | 受け口(反対咬合) | しゃくれ |
---|---|---|
マウスピース矯正 | 透明なマウスピースを使用し、歯をゆっくり動かす | しゃくれに対しては効果が薄いが、反対咬合の治療には効果がある |
ワイヤー矯正 | 歯にブラケットを装着し、ワイヤーで力をかける | しゃくれに対しては効果が薄いが、反対咬合の治療には効果がある |
外科手術 | 必要に応じて顎の手術を行う | 主にセットバック手術で顎の骨を後退させるとしゃくれと反対咬合が一度に改善する |
裏側矯正 | 歯の裏側に装置を付け、見た目に配慮 | しゃくれに対しては効果が薄いが、反対咬合の治療には効果がある |
不正咬合による影響と対策
影響 | 説明 | 対策 |
---|---|---|
発音障害 | 歯並びの問題で正しい発音が難しい | 矯正治療で改善 |
顎関節症 | 顎の位置異常で顎関節に負担がかかる | 早期治療と定期検診 |
消化器系の問題 | 咀嚼機能が低下し、消化不良が発生 | 矯正治療で正しい噛み合わせを回復 |
受け口としゃくれはどう違う?に関するQ&A
受け口(反対咬合)は、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態を指し、主に歯並びの問題です。一方、しゃくれは下顎骨自体が前に突出している状態を言います。これは骨格の問題であり、歯並びだけではなく、顔の形状にも影響を与えます。受け口は歯並びの不正咬合によるもので、しゃくれは下顎骨の形状に関連しています。
受け口は、舌癖や指しゃぶりなどの後天的な要因によって発生することが多いです。また、遺伝的要因も無視できません。正常な咬合では上の前歯が下の前歯よりも前に位置しますが、受け口の場合は逆になります。このため、下唇が前に突き出し、フェイスラインに影響を与えることがあります。
しゃくれは主に遺伝的な要因によるもので、下顎の骨格が先天的に前に突出している状態を指します。このため、3歳頃からの治療が可能であり、成長期に骨格の成長をコントロールすることで、大人になってからのしゃくれを防ぐことができます。骨格の問題によるものであるため、歯列矯正だけでは十分な治療とはなりません。
まとめ
受け口としゃくれは、一見似ているものの、原因が異なるため、治療方法も異なります。受け口は主に歯並びの問題であり、歯列矯正によって治療が可能です。対して、しゃくれは骨格に原因があるため、反対咬合のみであれば矯正治療でも改善が可能ですが、輪郭の改善には外科手術が必要になります。
但し、子供のしゃくれは早期の対処が重要であり、下顎の成長を抑制することで将来しゃくれになることを防ぎます。
気になる症状がある場合は専門の医療機関に相談することをお勧めします。
1. Le Jeune, L., Swinkels, W., Sun, Y., Politis, C., & Claesen, L. (2018). 顎顔面手術アプリケーションにおける暗黙の球体ツリーを使用した衝突検出の分析。[Analysis of Collision Detection Using Implicit Sphere Tree in Saptic Interaction Environments for Maxillofacial Surgery Applications]
2. Beddis, H., Durey, K., Alhilou, A., & Chan, M. (2014). 深いしゃくれの修復管理。[The restorative management of the deep overbite]
これらの研究は、受け口としゃくれの基本的な違いと治療法に関する洞察を提供します。