インビザラインはマウスピース型の矯正装置で、透明で取り外し可能で、周囲から治療中であることがわかりにくいなど、メリットが沢山あります。逆に、デメリットや注意すべき点はないのでしょうか。たくさんの費用をかけた後で後悔しない為にも、ありがちな失敗例10パターンについてご説明します。
インビザラインでありがちな失敗例
失敗1. アライナーの装着時間が不足した
インビザラインで最も重要なのは、指示された装着時間を守ることです。一般的に、アライナーは1日に20~22時間以上装着する必要があります。この装着時間が守られない場合、歯は計画された通りに動かず、結果として治療が失敗に終わることがあります。
原因と対策
- 原因・・日中にアライナーを外している時間が長すぎる、食事や歯磨き以外でも間食などで頻繁に取り外す。
- 対策・・装着時間を厳守し、必要最小限の時間以外はアライナーを外さないようにする。間食を減らす。
失敗2. マウスピースを清潔に保つことが出来なかった
アライナーの清潔を保つことは、治療の成功に直接関係しています。清潔に管理されていないマウスピースは、細菌の温床となり、虫歯や歯周病などの問題を引き起こす可能性があります。これによって、アライナーのフィット感が悪くなり、治療が失敗に終わることもあります。
原因と対策
- 原因・・アライナーがきれいに洗えていない。不適切な方法で洗っている。
- 対策・・アライナーを毎日適切な方法で洗い、清潔を保つ。
失敗3. 歯科医師からの指示がなかった
歯科医師から治療計画に沿った正しい指示がなければ、患者さんは適切なケアを行えず、結果的に失敗に終わることがあります。
原因と対策
- 原因・・治療計画や毎日のケアについて十分に説明がされていない。
- 対策・・定期的にメンテナンスを行い、歯科医師からの指示に従う。疑問がある場合は、すぐに相談する。
失敗4. 歯並びはきれいになったが咬み合わせがずれた
例えば出っ歯や八重歯などの見た目をきれいに治療したけれど、奥歯の咬み合わせがずれていたら、今後顎関節に負担がかかって顎関節症になる可能性があります。矯正では、見た目の歯並びだけでなく、かならず正しい噛み合わせに整えるようにしなければなりません。
失敗5. 歯の正中線が合わなくなった
インビザラインの治療後に不満が残ったケースでよくあるのが、歯の正中線が合わなくなったというものです。上下の前歯の中心の線を正中線といい、矯正治療後に上下の前歯の中心がずれてしまうことがあります。その場合は、担当医とよく話し合って追加の治療を行うことになる場合があります。
失敗6. 歯科医師がIPR(ディスキング、スライス)で歯を削り過ぎた
スライスでドクターが歯を削りすぎると、歯の象牙質が薄くなって知覚過敏の症状が起こります。知覚過敏によって熱い物や冷たい物を食べた時に歯がしみて痛いという症状が起こり、患者さんは歯が動く痛み以外に知覚過敏の痛みにも耐えなければなりません。
また、IPRで削り過ぎるとスペースが出来過ぎて、すきっ歯になってしまう可能性があります。すきっ歯をなくすためにアライナーの作り直しが必要になる場合があります。
矯正の経験が十分にある歯科医師なら歯を削り過ぎるということはありませんが、そうでない場合は削り過ぎということも起こりえます。
失敗7. 非抜歯で無理やり矯正したため出っ歯になった
スペースが足りないのに非抜歯でインビザラインで治療を行った結果、歯並びはきれいになっても歯が全体的に外側を向いた形になり、出っ歯になってしまうことがあります。
歯をきれいに並べるスペースを作るためには一般的には抜歯かIPRでスペースを作る必要があります。しかし本来ガタガタや出っ歯が重度で抜歯矯正が必要なのに、無理にIPRで治療を行うと、治療後に出っ歯になってしまうということが起こります。
失敗8. ブラックトライアングルが出来てしまった
歯を動かした結果、歯と歯の間の歯茎が退縮してしまって隙間が出来、三角形に黒く見える場合があります。これをブラックトライアングルといいます。
ブラックトライアングルが出来やすい方は2つのパターンがあります。
- 前歯が細長い逆三角形型になっている場合
- 前歯の重なりが大きい、または重度の出っ歯の場合
ブラックトライアングルが出来てしまった場合は、隙間をレジンで埋めたりクリーニングで炎症をとることで目立たなくすることが出来ます。
失敗9. 治療中に歯周病や虫歯になった
マウスピースの衛生管理ができていなかったり、マウスピース装着のまま飲食をしたり、歯ブラシでのお口の歯磨きが不完全な場合、歯周病や虫歯のリスクが高まります。それらが積み重なり、口腔内が歯周病や虫歯になってしまうと、矯正より一般歯科の治療が優先順位が高いため、いったん矯正を中断します。
つまり、その歯周病や虫歯の治療期間分、終了予定が遅れてしまいます。重度の虫歯に陥って、例えば抜歯せざるを得ない状況になってしまった場合、作製したマウスピースが合わなくなってしまうので、抜歯した状態の口腔内を、もう一度クリニックでiTeroやシリコンでの歯型採得をしないといけない事になります。
https://www.osaka-kyousei.com/column/1181.html
失敗10. 矯正のせいで歯根が見えるようになった
過度な力をかけ歯を動かしていく歯科矯正により、歯槽骨が吸収されてしまい、歯肉が退縮し、歯根が見えてしまう現象が起きる事があります。
歯を支える歯槽骨がなかったり、医師が患者さんのお口に合わない不可能な治療計画を立ててしまう等の場合、このような残念なトラブルが起こってしまいます。
失敗11. 矯正したのに効果を実感できない
「矯正したのに、効果を実感できない」
患者さんがせっかく矯正したのに効果を実感できない原因として考えられるのは、担当医に言われた装着時間を守らなかった場合、アライナーを順番通り装着しなかった場合、保定装置(リテーナー)をきちんとつけなかった場合などの理由が考えられます。
矯正治療をする為には、担当医と目指したゴールに向けて後戻りをしない為にも保定期間までやり遂げるぞというしっかりとした意志、通院も決められた間隔で行くことがとても大切です。
失敗12. 歯の後戻りが起こった
装置によって歯に力をかけて歯を動かしていくと、歯が元の場所に戻ろうとする力が加わって、多少の後戻りが起こります。歯が動く際には装置によって骨の吸収と再生を起こしますので、特に治療中、完了直後の歯茎は不安定な状態になっており、後戻りが起こりやすくなります。
後戻りを起こさないために治療が終わって装置を外した後は、リテーナーを付けて頂きます。リテーナーを付ける時間帯や頻度は担当医が患者さんの歯の状態によって決定し、指示を出しますので、必ず守るようにしましょう。
リテーナーの装着をサボると、後戻りの原因になり、何年かしてからまた矯正を行わねばならない可能性があります。また、きちんとリテーナーを付けていても後戻りが起こってしまう場合もあります。そのため、治療後も定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける必要があります。
失敗13. インビザラインは意外と面倒臭かった
インビザラインは食事と歯磨きの際にアライナーを取り外すことが出来ます。これはメリットと考えられる反面、その度にアライナーを洗ったり、食事や間食の際には歯磨きをする必要があり、再度アライナーを装着する際には、アライナーも歯もきれいな状態で行う必要があります。
それを面倒くさいと感じる方も多く、アライナーをつけるのが億劫になってしまったり、装着時間を守れなかったりといったことに繋がります。ご自身を面倒くさがり屋と思っている方は、インビザラインでの矯正を続けられるかどうか、一度じっくりと考えてみる必要があるかもしれません。
失敗しないために気を付けること
では、このような失敗を防ぐ為には、どのような点に気を付ければいいのかご説明します。
1. 症例などの実績が豊富な信用できる歯科医のもとで矯正すること
口コミやホームページの情報の内容だけで決めてしまうのは大変にリスクが高いです。相性などもありますし、実際にコミュニケーションを取ってみないとわからないものです。矯正歯科の初診カウンセリングを予約受診して、このドクターとなら治療を行えるかなど、信用のおけるドクター、スタッフがいる歯科医院かを見極めて開始しましょう。
2. 抜歯やIPRなどの治療方法に疑問を持ったら、事前に担当医に必ず確認をすること
1点目と重なる部分がありますが、カウンセリングで治療計画を立てた時に抜歯やIPRが必要な場合には、ドクターに不明な点や質問があれば必ず尋ねてください。後日になっても、些細な質問でも対応し、相談に乗ってくれる歯科医師であれば、それは信用のおける医師だと言えます。
逆に、後日になっても説明してくれず、診療開始を急かされるようであれば、他の矯正歯科を探してください。期間が長くかかる治療ですので、相場かどうかも比較検討し、正しく治療を行えるクリニックに通院しましょう。
3. 装着時間を厳守し、マウスピースや歯のお手入れを衛生的にすること
アライナーを最大限に付けて、装置の効果を引き出すことがマウスピース型矯正において重要です。併せてアライナーを清潔に保つ、洗浄も怠らない事です。衛生的なアライナーにより歯周病や虫歯のリスクを低くできます。少なくとも、計画通りの日数で行うことが可能になります。
インビザラインでありがちな失敗例に関するQ&A
インビザラインでの失敗例において、咬み合わせがずれるのはなぜ起こるのですか?
咬み合わせの問題は、歯の位置だけでなく、上下の歯が合わさる位置に関係します。歯並びのアーチがきれいに整っていることだけを目標とし、咬み合わせを無視したままで行ってしまうと、奥歯の噛み合わせがずれたり、前歯の正中線が合わなくなることがあります。そのため、矯正では、見た目だけでなく必ず噛み合わせも考慮した治療を受ける必要があります。
インビザラインにおいて、歯を削り過ぎると悪影響がありますか?
スライス(ディスキング、IPR)で歯を削り過ぎると、歯の象牙質が薄くなって知覚過敏が起こる可能性があります。熱や冷たい刺激に敏感になり、歯がしみる痛みが生じます。
インビザライン治療中に歯周病や虫歯が進行してしまうのは何故ですか?
インビザライン中の歯周病や虫歯は、マウスピースの不衛生な管理や飲食中の装着、不完全な歯磨きなどが原因です。これにより、歯周病や虫歯のリスクが高まります。口腔内の問題が進行して治療が必要になると、矯正が中断され、期間が長引く可能性があります。
まとめ
インビザラインでの失敗例として、まず、咬み合わせがずれたままになるケースがあります。技術や知識の乏しい医師や経験不足の歯科医院で起こります。次に、歯を削りすぎることによる知覚過敏が挙げられます。経験のある歯科医師であれば起こりにくいです。
また、不衛生な状態で行うと歯周病や虫歯のリスクが高まります。これらの症状が進行すると治療が中断されることもあります。過度な力によって歯根が見える問題や、効果を実感できない場合もあります。さらに、面倒くささから治療を続けることが難しくなる場合もあります。
これらの失敗を防ぐためには、実績のある歯科医院で治療を受けることや、方法に疑問があれば確認すること、装着時間と衛生管理に気を付けることが重要です。