矯正治療では歯を動かして歯並びを整えていきますが、歯を動かすためにはスペースが必要です。どのようにしてスペースを作るかについてご説明します。
矯正治療におけるスペースとは?
歯列が重なってデコボコになっている場合、歯をきれいに一列に並べようとしても、顎が小さいために歯を並べるためのスペースが足りません。子供の矯正では顎を大きく成長させることが出来ますが、大人は骨の成長が終わってしまっています。そのため、一般的には小臼歯の抜歯をするか、前歯の側面を削るかといった方法をとります。
出っ歯もまた、スペースが不足していると起こります。歯列矯正には必ず歯を動かすのに利用するスペースが必要です。
歯列矯正のためのスペースを作る方法
歯を動かすためのスペースを作る方法は以下の5つがあげられます。
- 小臼歯を抜歯する
- 矯正装置を使って顎を横に拡げる
- 歯の側面のエナメル質を削る
- 矯正装置で歯を後方に移動させる
②の顎を横に拡げるのは、専用の装置を歯に付けて行います。子供の場合は骨格の成長を利用して顎を拡げますが、大人は成長が終わっているため、あまり横には拡がりません。
IPRとはどんな処置?
IPRは、歯の側面を僅かに削る処置のことをいいます。ディスキング、ストリッピング、スライスなどと呼ぶこともあります。
削る量は、1歯あたり0.5mmまでです。エナメル質の厚さは平均1.5mm程度で、薄い所で焼く1mm位です。そのうちの0.5mmを削るだけですので、痛みが出ることはありません。
前歯6本の側面を削れば、3mmのスペースが出来、前歯以外の歯の側面も削れば、5mm程度のスペースが出来ます。
IPRで出来たスペースを2で割ると、前歯を何mm下げられるかがわかります。
IPRでは僅か数ミリのスペースしか出来ませんので、ガタガタや出っ歯が酷い方は、より大きなスペースが使える抜歯矯正の適用になります。
抜歯矯正だと何ミリくらいのスペースが出来る?
抜歯矯正では主に小臼歯を抜歯します。小臼歯のサイズは1本7~8mmくらいですので、左右の小臼歯を抜歯すると、14~16mmくらいのスペースが出来ます。
IPRと比べると、随分大きなスペースです。そのため、重度のガタガタや八重歯の歯並びをきれいに一列に並べたり、重度の出っ歯もかなり後ろに下げられる可能性があります。
歯列矯正で歯を動かすスペースの作り方に関するQ&A
歯列矯正治療では、歯を正しい位置に移動させてきれいに一列に並べるためにスペースが必要です。歯が重なっていたり、出っ歯の場合、スペースを作らないと効果的な矯正が難しいです。
歯列矯正のためのスペースを作る方法には、小臼歯の抜歯、顎の横拡げ、エナメル質の削り、歯の後方移動などがあります。最も効果的な方法は症状や患者の状態により異なります。
IPR処置はエナメル質の表面の0.5mm程度を削るだけなので通常は痛みを伴いませんが、エナメル質が薄くなっている方の場合は知覚過敏が起こる場合があります。
まとめ
歯並びを整える矯正治療では、歯を動かしていくためのスペースが必ず必要になります。どのようにしてスペースを作っていくかは、患者さんの不正咬合がどのような状態かによって決まります。
その結果、スペースを確保するために抜歯をするのか、IPRを行うのか、担当の歯科医師が判断し、患者さんと話し合ってどの方法にするかを決定します。
歯列矯正において歯を動かすためのスペースを作る方法には、いくつかのアプローチがあります。
1. ミニインプラントを利用したスペースクロージャー
また、上顎の前歯のエンマスリトラクション(一斉後方移動)において、ミニインプラントがオルソドンティックアンカレッジ(固定源)として使用されることもあります。リンガル(裏側)とラビアル(表側)の矯正治療において、ミニインプラントとエラストマーチェーンを使用し、歯にかかるストレスを3次元有限要素法で解析することにより、スペースクロージャーのバイオメカニクスを理解することが可能です。【Ringane & Hattarki, 2018】
2. スーパーエラスティックニッケルチタンループアーチワイヤーを用いた独自のスペース獲得法
歯列不整合や位置異常の歯の整列には、スペース開放/獲得が必要です。最も一般的に使用される方法はニッケルチタンオープンコイルスプリングの使用です。この新しい方法では、ニッケルチタンループアーチワイヤーを使って、治療開始時に直接スペースを開放することができます。この方法では、より硬いアーチワイヤーの配置を待つ必要がなく、治療期間を短縮することが可能です。【Surani, 2020】
これらの研究から、歯列矯正におけるスペースの作成は、患者のニーズや治療の目的に応じて異なる方法が採用されることが分かります。