歯と歯の間があいてしまうすきっ歯と呼ばれる不正咬合を裏側矯正で治療する場合についてご説明します。
目次
すきっ歯ってどんな状態?
歯と歯の間に隙間が出来ている不正咬合をすきっ歯と呼びます。すきっ歯は空隙歯列(くうげきしれつ)とも呼ばれています。前歯の中央に隙間が出来ている場合は正中離開(せいちゅうりかい)と呼ばれ、比較的目立つため、気にされる方が多いです。
また、隙間が空いているために食べ物が詰まりやすくなり、その部分に細菌が繁殖して虫歯や歯周病のリスクが高くなります。中には、隙間から空気が漏れて発音が不明瞭になる方もおられます。
裏側矯正ですきっ歯を治療
裏側矯正でにすきっ歯を治療することは可能です。当院では主に「インコグニト」という名称の装置を使用します。
噛み合わせに問題のないすきっ歯なら部分矯正で可能
奥歯の噛み合わせに問題がなく、前歯のすきっ歯だけが気になる場合は、前歯だけの部分矯正が可能かもしれません。部分的に気になる部分だけを治療する方法で、歯全体を動かす場合と比べて治療期間が短く、費用も抑えられます。
裏側矯正は他の装置よりも費用が高めですが、部分矯正なら少し費用が抑えられるかもしれません。
また、噛み合わせに問題がなく、下の歯に不正咬合がない場合は、上顎の8本程度だけを動かす方法が可能な場合もあります。
すきっ歯の治療の流れ
1. 診断と治療計画
初診相談で、歯科医師が患者さんの口腔を詳しく調査します。X線写真や口腔の模型などを使って、すきっ歯の状態、歯の位置、噛み合わせなどを評価します。この情報をもとにして、患者さんお一人おひとりの治療計画が作成されます。
2. 装置の取り付け
診断と治療計画作成の後、実際の治療に移ります。裏側矯正では歯の舌側にブラケット(小さな金属またはセラミックのパーツ)が接着されます。ブラケットは特殊なワイヤーによってつながれ、このワイヤーが歯を動かす力を与えて、歯を徐々に正しい位置へ動かしていきます。
3. 治療の進行
装置が歯に僅かな力をかけ続けることで、歯が動いていきます。定期的な診察でワイヤーの調整が行われ、すきっ歯が徐々に閉じていきます。
すきっ歯が閉じるまでの期間は患者さんのお口の状態、歯並びの複雑さ、治療計画がきちんと守られているかなどにより異なりますが、全体の歯を動かす場合は一般的には1年半から3年程度とされています。前歯を動かすだけで治療可能な場合は数ヶ月で治療が終わります。
4. 治療の終了とアフターケア
治療が終了すると、ブラケットとワイヤーは歯から外されます。その後、歯が元の位置に戻るのを防ぐためにリテーナー(保定装置)と呼ばれる装置を使用します。リテーナーは、一定期間定期的に装着しなければならないことが一般的です。
裏側矯正とは?
歯の裏側にワイヤーとブラケットを装着するのが裏側矯正です。他人から見えにくいことから、矯正をしていることを他人に知られたくない方や、職業上、人から見える装置をつけることが出来ない方などにお勧めです。
メリットとデメリット
メリット
- 他人から見えづらく目立たない
- 治療中であることが他人にはわからない
- 美的な懸念が少ない。
デメリット
- 装置が舌に当たるため違和感や発音の問題がある
- 表側に装置をつける場合と比べて歯磨きが難しい
- 費用が高額になることが多い。
▼裏側矯正についてはこちらで詳しく説明しています。
インコグニトについて
当院ではインコグニトという名称の装置を使用しています。インコグニトはドイツで開発されたオーダーメイドの装置で、ブラケットを患者さんお一人おひとりの歯のカーブにピッタリ合った形で薄く作製出来るのがメリットです。
- オーダーメイドで作製するので可能な限り装置を薄くできる
- ブラケットを歯に接着する面積が大きいため脱落しにくい
- 治療中の虫歯のリスクが少ない
▼インコグニトについてはこちらで詳しく説明しています。
すきっ歯になる原因は?
すきっ歯になる原因は「先天的な原因」、つまり生まれつきによるものと、日常の習慣や癖によってすきっ歯になる「後天的な原因」によるものがあります。
先天的な原因には、歯のサイズが小さい、生えてこない歯があるために歯の本数が少ない、顎の大きさに対して歯が小さいなどが考えられます。
後天的な原因には、乳歯が永久歯に生え変わるタイミングや、頬杖をついたり、舌を前に出す癖、前歯で舌を押す癖などが考えられます。これらのような舌の動きの癖があると、歯を内側から外側に押す力が働き、癖を長く続けていることで少しずつ歯が移動してしまい、すきっ歯や、または出っ歯を伴ったすきっ歯になる場合があります。
すきっ歯のままだと困るの?
すきっ歯の問題点は見た目だけのように思われがちですが、すきっ歯も不正咬合の一つで、そのまま放っておくと弊害があります。
一つは食べ物が挟まりやすいということで、毎回気をつけてブラッシングしないと、すきっ歯の部分に汚れがたまり、歯垢から歯石になってしまうことがあります。
すきっ歯の隙間はデンタルフロスが簡単に通り過ぎて、かえって汚れをフロスで絡め取るのが難しいということも起こり、歯に歯垢が残りやすくなってしまいます。歯垢が残ったままになると虫歯や歯周病のリスクが高まりますので、虫歯や歯周病を防ぐためにも、早めに治療を行うことをお勧めします。
また、話す際に空気が抜けてしまって発音に影響を及ぼす可能性もあります。
裏側矯正ですきっ歯は治せるかに関するQ&A
はい、当院では主にインコグニトという装置が使用されます。
はい、一部の歯を治療する場合は、全体の歯を動かすよりも費用を削減できる場合があります。ただし、具体的な費用は症例によって異なります。
すきっ歯の部分矯正は、奥歯の噛み合わせに問題がなく、前歯のすきっ歯だけが気になる場合に適しています。この方法は治療期間を短縮し、治療費を抑えることができます。
まとめ
すきっ歯は裏側矯正で治せるのかご説明しました。舌側に装置をつけると他人から見えにくいため、人目を気にすることなく歯並びをきれいにすることが出来ます。矯正を考えておられる方は、選択肢の一つとして考えて見られてはいかがでしょうか?
裏側矯正(リンガルオーソドンティクス)によるすきっ歯(ディアステマ)の治療に関する研究は限られていますが、以下の研究が参考になります。
1. 前歯のすきっ歯治療
ある症例報告では、裏側矯正を用いて前歯のすきっ歯を閉じる治療が行われました。この治療では、上顎前歯を後退させることで上唇と下唇を後退させ、審美性が向上しました。【Katada, 2019】
2. 裏側矯正によるすきっ歯の安定性
別の研究では、すきっ歯の閉鎖後の安定性について言及しており、異なる治療法によるすきっ歯の閉鎖の安定性には違いがあることが指摘されています。この研究では、裏側矯正特有の治療法によるすきっ歯の閉鎖については直接言及していませんが、すきっ歯の治療には複数のアプローチが存在することを示しています。【Honores, 2019】
これらの研究から、裏側矯正によってすきっ歯の治療が可能であることが示唆されていますが、治療後の安定性には個々のケースに応じた考慮が必要です。