歯科矯正全般

不正咬合の種類と原因

不正咬合の原因と種類

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

ガタガタの歯や出っ歯、受け口などの気になる歯並びをきれいに整える治療を矯正治療といいます。不正咬合にはどのような種類があるのかご説明します。

歯並びをきれいにするには、歯に矯正装置を付けて、少しずつ歯を動かして重なりや歪みがないように整えていきます。実際にどのような治療をしているのかご説明します。

不正咬合にはどんな種類があるの?

不正咬合は歯の位置や生え方、上下の歯が噛み合っていない等の状態のことをいいます。歯並びが悪い場合、見た目が気になる方が多く、まず見た目の改善をご希望されますが、見た目以外にも虫歯や歯周病になりやすいなど、様々なリスクがあります。

不正咬合の種類は以下のようなものです。

  1. 叢生(ガタガタの歯・八重歯)
  2. 上顎前突(出っ歯)
  3. 下顎前突(反対咬合・受け口)
  4. 空隙歯列(すきっ歯)
  5. 切端咬合
  6. 開咬(上下の前歯が開いて噛み合っていない)
  7. 過蓋咬合(噛み合わせが深い)
  8. 交叉咬合(噛み合わせがずれている)

1. 叢生(ガタガタ・八重歯)

叢生(八重歯)

歯が部分的に重なって生えていて、歯並びがガタガタになっている状態を叢生といいます。八重歯も歯が重なって生えている状態を指しますが、犬歯が八重歯になりやすい為に、特に犬歯が外に飛び出ている状態を指して八重歯と呼ぶ場合もあります。

叢生の原因

  • 顎が小さい・・顎が小さくて歯が一列に並びきれずに歯列から飛び出して重なってしまう
  • 柔らかいものばかり食べる・・柔らかいものばかり食べると、顎が発達不全を起こして大きくならず、歯が生えるスペースが不足して重なって生えてくる

叢生の種類

  • 歯並びがデコボコ、ガタガタ・・歯の大きさと顎の大きさがアンバランスで、歯が一列に並びきらずに重なって生えている状態・・矯正装置をつけて治す。抜歯が必要な場合もある。
  • 八重歯・・本来は歯が重なって生えている状態のことをいうが、特に犬歯が歯列の外側に飛び出している状態を指すこともある・・矯正装置をつけて治す。殆どの場合、抜歯が必要。

2. 出っ歯(上顎前突)

上顎前突(出っ歯)

出っ歯は上顎前突ともいい、上の前歯が前に突出した状態のことです。日本人に多い歯並びで、悩んでおられる方も多いです。

出っ歯の原因

  • 親からの遺伝による出っ歯・・遺伝によって顎の骨格が前に出ている、顎が小さい、歯が大きい等の場合に出っ歯になることがあ
  • 指しゃぶり、舌で歯を押すなどの癖による出っ歯・・癖によって前歯を前方に押し続けて出っ歯になることがある

出っ歯の種類

  • 前歯が前に突出している・・矯正装置をつけて治療する
  • 上顎が前方に大きく過成長している・・外科手術の適用
  • 下顎が後退しているために出っ歯に見える・・外科手術の適用

3. 受け口(下顎前突・反対咬合)

下顎前突(受け口)

受け口は、上下の歯の噛み合わせが、上の歯よりも下の歯が前に出ている、または下顎が過成長して前に出ている状態のことです。

下顎前突は骨格性の場合が多く、歯に矯正装置を付けて歯を動かしただけでは、見た目が大きく改善しない場合も多くあります。その場合は外科手術を併用することもあります。

下の歯が前に出ていて、噛み合わせが逆になっているだけのケースでは、歯の矯正だけで治る場合もあります。

受け口の原因

  • 親からの遺伝による受け口・・受け口の方は遺伝による場合が多い。必ず遺伝するわけではないが、両親どちらかが受け口の場合、子供に遺伝するケースが多い。
  • 唇を吸う癖、頬杖、顎を前に出す癖・・これらの癖がある場合は早めに治す必要がある。

受け口の種類

  • 上下の前歯の噛み合わせが逆になっている・・矯正装置をつけて治療する
  • 下顎が前方に大きく過成長している・・子供時代に顎の成長を抑制する治療をする。大人は外科手術の適用になる

4. すきっ歯(空隙歯列)

空隙歯列(すきっ歯)

すきっ歯は歯と歯の間に隙間がある歯並びのことで、海外ではすきっ歯は人気がありますが、日本においてはすきっ歯の方は殆ど気にしておられるため、治療の対象となります。

すきっ歯の原因

  • 顎に比べて歯が小さい・・顎と歯のサイズにアンバランスで、歯が一列に並んだ時に歯と歯の間に隙間が開いてしまう
  • 生まれつき歯の数が足りない場合もすきっ歯になる
  • 虫歯等で歯を失った場合に歯が動いてすきっ歯になる場合がある
  • 歯周病で歯が動いてすきっ歯になる場合がある

すきっ歯の種類

  • 空隙歯列・・矯正装置、またはダイレクトボンディングで隙間を埋めて治療する
  • 正中離開・・上の前歯の真ん中に隙間ばある場合は「正中離開」と呼ばれ、矯正装置、またはダイレクトボンディングで隙間を埋めて治療する

5. 切端咬合

奥歯を噛んだ時に、上下の前歯の先端がぶつかってしまう状態のことを切端咬合といいます。正常な咬合の場合は、上の前歯が下の前歯に1~3mm程度被さって、上の前歯は下の前歯よりも2~3mm程度前にあります。切端咬合を放っておくと、噛むたびに上下の前歯が当たるため、歯の先端が欠けたり摩耗して知覚過敏を起こす場合があります。

切端咬合の原因

  • 舌の動きや口呼吸や顎骨の成長異常によって起こりやすい・・矯正装置をつけて治療する

6. 開咬(上下の前歯が開いて噛み合っていない)

開咬

奥歯を噛んだ時に、前歯が噛み合っておらず、垂直的に隙間が出来ている状態のことです。

麺類などが前歯で噛み切れなかったり、硬いものを齧るのが苦手になってしまうこともあります。

ものを噛む位置が不安定なので、顎関節に負担をかけ、顎関節症を発症する場合もあります。

開咬の原因

  • 指しゃぶりや舌を突き出す癖
  • 飲み込む時に、前歯のすき間から舌を出す癖
  • 扁桃腺肥大や鼻炎などが原因で口呼吸になった結果開咬になる
  • 舌の下についている舌小帯が短い

7. 過蓋咬合(噛み合わせが深い)

過蓋咬合奥歯を噛んだ時に上の前歯が深く被さって下の前歯が殆ど隠れてしまう状態を過蓋咬合といいます。

過蓋咬合の方は噛みしめ、歯ぎしりの癖がある場合が多く、特定の歯に力がかかるため、知覚過敏を起こしたり、詰め物や被せ物が外れやすいという特徴があります。

過蓋咬合の原因

  • 上顎の過成長
  • 下顎が小さい
  • 前歯が大きく伸びすぎている
  • 歯ぎしり・噛みしめの癖で奥歯が擦り減ったため

8. 交叉咬合(噛み合わせがずれている)

前歯がデコボコしていて、部分的に上下の噛み合わせが逆になっている状態をいいます。噛む度に上下の前歯が強く接触してしまうので、歯の根や歯茎に悪影響を与えます。

交叉咬合(噛み合わせがずれている)の原因

  • 永久歯の生える位置が悪かった
  • 同じ側で頬杖をつく、同じ側を下にして寝る

矯正歯科治療って何ですか?

歯列矯正のイメージ

歯並びや噛み合わせが悪い場合に、見た目を整えると同時に、きちんと歯が噛み合うようにするのが矯正歯科治療です。矯正歯科治療では歯に矯正装置を取り付けて、1本1本の歯を少しずつ正しい位置に移動させていきます。

歯を動かすためには、スペースが必要ですので、大人の矯正治療ではスペースを作るために、上下左右の4本の小臼歯を抜歯することもあります。

子供の矯正では、子供の顎の骨の成長を利用して、顎の骨の大きさを整えながら、最終的に永久歯がきれいに並ぶように整えていきます。

歯並びがきれいに揃っていなかったり、上下の歯の噛み合わせが悪い場合は不正咬合と呼び、矯正治療の対象となります。

▼矯正治療とはなにかについてはこちらで詳しく解説しています

不正咬合の原因と種類に関するQ&A

不正咬合の主な種類にはどのようなものがありますか?

不正咬合には多くの種類がありますが、主な種類には上顎前突(出っ歯)、下顎前突(反対咬合・受け口)、叢生(ガタガタの歯・八重歯)、空隙歯列(すきっ歯)、切端咬合、開咬、過蓋咬合、交叉咬合などがあります。

出っ歯(上顎前突)の原因は何ですか?

出っ歯の原因には主に遺伝や癖が関与しています。遺伝的要因による顎の骨格の前方への発達や、指しゃぶりや舌で歯を押す癖が出っ歯の原因となります。

受け口(下顎前突・反対咬合)の原因は何ですか?

受け口の原因は主に遺伝と癖が関与しています。遺伝的な要因や、唇を吸う癖、頬杖、顎を前に出す癖などが受け口を引き起こすことがあります。

まとめ

歯のキャラクター

不正咬合には様々な種類があり、それぞれ原因も異なります。治療法としては、殆どのものが矯正装置を歯に付けて歯を動かすことで治療出来ますが、一部の骨格性の不正咬合については、外科手術の適応となります。歯並びでお悩みの方は、一度矯正医による矯正相談をお受け下さい。

不正咬合の原因と種類に関する論文を2件ご紹介します。

1. 不正咬合の環境要因
不正咬合は、顔面骨格の骨、歯の大きさと形、舌、唇、頬の間のバランスの不足として見られる問題です。最も一般的な環境要因として、指しゃぶり、爪噛み、歯ぎしりなどのパラファンクション(異常な口腔機能)と、口呼吸や乳幼児式の嚥下などのディスファンクション(機能障害)が挙げられます。指しゃぶりやおしゃぶりは、クラスII不正咬合、過度なオーバージェット、過小なオーバーバイト、開咬、小さな上顎幅による後方のクロスバイトを引き起こす可能性があります。持続する乳幼児式の嚥下とパラファンクションが併発することで、不正咬合の重症度が増す可能性があります。 (Pietrzak & Hanke, 2012)

2. 不正咬合の永久歯冠サイズへの影響
不正咬合は、多因子的な問題とされ、最も一般的な不正咬合は、歯のサイズと支持骨のサイズの不一致によるものです。歯のサイズが重要な要因とされています。この研究は、自然に良い咬合を持つ若年男性と矯正治療が必要な若年男性の永久歯の冠の寸法を比較しました。ほとんどの歯冠寸法(14種類の歯の中央切歯から第一大臼歯まで、両顎で計24種類)の平均値が、不正咬合を持つ被験者で良い咬合を持つ被験者よりも有意に大きかったことが示されました。 (Agenter, Harris, & Blair, 2009)

これらの研究結果に基づくと、不正咬合の原因には、環境的な要因や歯のサイズが関連していることが示されています。特に、パラファンクションやディスファンクションが不正咬合の一因となること、および歯のサイズの不一致が不正咬合を引き起こすことが指摘されています。不正咬合には、クラスII不正咬合、開咬、クロスバイトなど様々なタイプがあり、それぞれ異なる原因や特徴を持っています。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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