部分矯正

ワイヤーによる部分矯正で出っ歯は治りますか?

部分矯正で出っ歯を治すのはワイヤー矯正?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

気になる部分を部分的に治す部分矯正で出っ歯を治したい場合に、歯にワイヤーをつけるワイヤー矯正で歯並びを整えるケースについてご説明します。

部分矯正とは?

部分矯正とは、歯全体ではなく、特定の部分だけを動かす矯正治療のことです。例えば、前歯の数本だけを対象にした治療を行い、歯並びを整える方法です。

部分矯正のメリット

  • 治療期間が短い(数ヶ月~1年程度)
  • 費用が抑えられる(全体矯正より安価)
  • 目立ちにくい矯正方法も選べる(裏側矯正など)

このようなメリットがあるため、「少しだけ歯並びを整えたい」「短期間で治療を終えたい」と考えている方には魅力的な選択肢です。

ワイヤーによる部分矯正で出っ歯は治せるの?

出っ歯の原因や状態によって、部分矯正が適応できるかどうかが決まります。

部分矯正で改善できる出っ歯

  • 軽度の前歯の傾き
    前歯が少し前に傾いているだけの場合は、部分矯正で歯の角度を調整することで改善できることが多いです。例えば、1~2本の歯がわずかに前に出ている場合には、ワイヤー矯正による部分矯正で対応可能です。

  • 歯並びのわずかな乱れ
    歯が軽く重なっている状態や、歯の生える位置が少しずれているだけであれば、部分矯正で修正が可能なことがあります。

部分矯正では難しい出っ歯

  • 顎の位置が原因の出っ歯
    出っ歯の原因が「歯の傾き」ではなく「顎の骨の位置」にある場合、部分矯正では改善できません。このようなケースでは、全体矯正や外科的な治療が必要になることがあります。

  • スペース不足による出っ歯
    もともと歯が大きく、スペースが足りないために前歯が前方に押し出されている場合は、部分矯正だけでは改善が難しいです。このようなケースでは、抜歯を伴う全体矯正が必要になることが多いです。

  • 咬み合わせに問題がある場合
    出っ歯の状態によっては、奥歯のかみ合わせを調整しなければ、前歯を後方に動かせないことがあります。このような場合は部分矯正では対応しきれず、全体矯正が適している可能性が高いです。

出っ歯に対する部分矯正の効果

出っ歯(上顎前突)の改善には、部分矯正が一つの選択肢として考えられます。歯並びの一部分だけが気になる場合の治療であり、歯を全体的に動かして噛み合わせも整える治療と比較して、軽度の症例に限られるため、治るまでの期間や費用が少ないことが一般的です。

出っ歯に対する部分矯正で使用できる装置

出っ歯の治療には、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正等の装置を使います。ワイヤー、ブラケットは前歯のみに装着し、マウスピースは歯全体を覆う形になります。全体的な咬合(歯の噛み合わせ)は調整せず、歯並びの見た目の改善に重点を置いた治療となります。

部分矯正が効果的なケース

部分矯正は以下のようなケースで特に効果的です。

・軽度から中度の出っ歯・・軽度から中度の突出がある場合、部分的な治療だけで改善が見込める場合が多いです。
・成人の軽い不正咬合・・大人になってからの歯並びのほんの少しの修正には、部分的な治療が適しています。気になる歯だけを動かすため、社会生活に与える影響が少ないです。

部分矯正は、特定の問題を解決するための方法であり、全体的に歯を動かす場合に比べて経済的で終了までの期間も短いです。

ワイヤーを使った部分矯正では難しい歯並び

部分矯正では治らない例

部分矯正は重度の不正咬合を治すのには適しておらず、あくまでも軽度の出っ歯やガタガタ、受け口を治療するためのものです。

ワイヤー矯正であれば、部分矯正でもかなり歯を動かすことが出来ますが、それでも重度の出っ歯(上顎前突)、重度の受け口(下顎前突)、重度のデコボコ(叢生)、開咬の場合は部分矯正での治療は難しいです。

部分矯正が適しているかどうかの判断方法

部分矯正が可能かどうかは、歯科医師の診断が必要です。以下のポイントを確認することで、ある程度の目安をつけることができます。

  • 前歯の傾きが軽度である
  • 奥歯のかみ合わせに大きな問題がない
  • 抜歯せずにスペースが確保できる

上記に当てはまる場合は、部分矯正が有効である可能性が高いです。一方で、顎の骨の影響やスペースの問題がある場合は、部分矯正ではなく全体矯正を検討する必要があります。

部分矯正で出っ歯を治すメリット・デメリット

矯正には歯全体を動かして歯並びを治す「全体矯正」と、主に前歯の気になる部分だけを動かして歯並びを治す「部分矯正」があります。

メリット

  • 気軽に始められる
  • 期間が短縮できる
  • 費用が安い
  • 前歯の後戻りも治せる

デメリット

  • 重度の出っ歯は治せない
  • 噛み合わせは治せない

部分矯正の限界

1. 治療の範囲に制限がある

部分矯正は、特定の歯の歯並びの治療に限定されるため、全体的な歯並びや噛み合わせの問題は解決できません。全体的なバランスを考慮した治療が必要な場合は、部分的な治療だけでは不十分なことがあります。

2. 数年後に再治療の可能性がある

治療完了後、時が経つにつれて再び歯並びが悪化することがあります。これは、治療範囲の限定が原因で起こることがあります。その原因は以下のようなものが考えられます。

  • 保定装置をきちんと使っていなかった
  • もともと舌で前歯を押したり歯ぎしりをする癖がある
  • 親知らずが生えて来て歯を押している
  • 噛み合わせも悪かったが前歯の歯並びのみ治した

部分矯正は、まず適した症例かどうかの判断と、正確な治療計画により、前歯の一部分だけの歯並びを治したい患者さんにとって有効な選択肢となりますが、そのメリットと治療の限界を理解しなければなりません。

ワイヤー矯正とは?

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットと呼ばれるボタンのような小さい装置を貼り付け、そこにワイヤーを通して力をかけることで、歯を動かしていきます。

ブラケットは昔は金属性で歯につけるととても目立つものでしたが、最近では白いセラミックで出来たブラケットが良く使われるようになり、かなり目立ちにくくなりました。

ワイヤーも金属の銀色がとても目立つことから、患者さんのご希望があれば、金属に白い樹脂を巻いたホワイトワイヤーや、金属の表面に艶消しの処置がされているワイヤーも使われます。

ワイヤー矯正の図解

 

ワイヤー矯正に向いている人

ワイヤー矯正は、裏側矯正(歯の裏側にブラケットとワイヤーをつける)やマウスピース矯正と比べると費用が抑えられますので、費用を抑えたい方には最適です。

また、重度の不正咬合で歯の重なりが大きい場合や、複雑な不正咬合の場合も、ワイヤー矯正が適しています。

部分矯正は前歯数本のみを動かしますので、ワイヤー矯正であっても全ての不正咬合には対応出来ません。メリットとしては、価格が抑えられるという点になります。

ワイヤー矯正以外での部分矯正は?

インビザライン

マウスピースを使用しても部分矯正は可能です。歯をあまり動かさないため、マウスピースの枚数が少なく、短期間で治るのが特徴です。

マウスピースを使った場合の費用はワイヤー矯正よりはやや高くなります。

マウスピース矯正のメリット

  • 取り外し可能で食事、歯磨きは外して行える
  • 透明なので矯正していることがわかりにくい
  • 取り外して洗えるので清潔を保てる

マウスピース矯正のデメリット

  • 重度の不正咬合にはあまり向かない
  • 装置を洗う、つけるなどの管理を自分でする必要がある
  • 1日に22時間の装着が必要

ワイヤー矯正と他の矯正方法の比較

ワイヤー矯正以外にも、出っ歯の改善に適した矯正方法があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

矯正方法 治療期間 費用 適応範囲
ワイヤーによる部分矯正 3ヶ月〜1年 比較的安価 軽度の出っ歯
ワイヤーによる全体矯正 1.5年〜3年 高額 中~重度の出っ歯
インビザライン(マウスピース矯正) 1年〜3年 中程度 軽度~中程度の出っ歯
外科矯正(手術) 1年〜数年 高額 骨格性の出っ歯

このように、ワイヤーによる部分矯正は軽度の出っ歯には向いていますが、根本的な原因が歯の傾き以外にある場合は、他の方法を検討したほうが良いでしょう。

まとめ

歯のキャラクター

ワイヤーによる部分矯正で出っ歯を治せるかどうかは、出っ歯の原因によって異なります。

  • 軽度の前歯の傾きやわずかな歯並びの乱れなら部分矯正で改善可能。
  • 顎の位置が原因の出っ歯やスペース不足による出っ歯は、全体矯正や他の治療法が必要。
  • 適応範囲を確認し、歯科医師の診断を受けることが大切!

ワイヤー矯正は、歯全体を動かす場合は殆ど全ての不正咬合の治療に対応できます。一方で、前歯だけの部分的な治療では治らない歯並びがあります。部分矯正で適応可能な歯並びであれば、ワイヤー矯正による治療は、費用が抑えられるメリットがあります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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