気になる部分だけを治す部分矯正は、気軽に始められるのが魅力ですが、具体的にはどのようなメリットがあるのかご説明します。
部分矯正で歯並びを治すメリット
1. 治療期間が短い
部分矯正は、全体の歯列矯正と比べて非常に短期間で治療が完了するのが大きな特徴です。全体矯正では通常1年半から3年程度の治療期間が必要とされる一方で、部分矯正の場合は数ヶ月から1年程度で完了することが一般的です。
これは、特定の歯や部位だけをターゲットにして治療を行うため、全体のバランスを取るための細かい調整が少なく済むからです。例えば、前歯の軽度な歯列不正や隙間を埋めるための部分矯正は、比較的短期間で目に見える効果が期待できます。
2. 費用が安い
全体の矯正に比べて部分矯正は経済的に有利です。これは治療範囲が限定されているため、必要な装置や素材が少なく、治療回数も減少するからです。
例えば、全体矯正では全ての歯にブラケットを装着し、定期的に調整を行う必要がありますが、部分矯正では特定の歯にだけ装置を装着するため、その分費用が抑えられます。また、治療期間が短いため、通院回数も少なくなり、トータルコストの削減に繋がります。
3. 痛みが少ない
部分矯正は、全体矯正に比べて痛みが少ないことが多いです。これは、治療範囲が限定されているため、矯正力が特定の部分に集中し、全体に及ばないためです。通常、矯正治療の初期段階では、装置が装着されることによる圧迫感や痛みが生じますが、部分矯正ではこの不快感が軽減されます。
また、治療中に装置の調整が少ないため、痛みや不快感が持続する期間も短くなります。これにより、患者さんはより快適に治療を受けることができます。
4. 抜歯をしない
部分矯正では、多くの場合、抜歯を行わない治療法が選ばれることが多いです。全体矯正では、スペースを確保するために抜歯が必要な場合がありますが、部分矯正では特定の歯や部位のみを対象に治療を行うため、スペースの問題が生じにくいです。
これにより、患者さんは痛みや不快感を伴う抜歯のリスクを避けることができ、自然な歯をできるだけ多く残すことができます。抜歯をしないことで、治療の負担が軽減され、回復も早くなります。
5. 審美的な効果
部分矯正は特に審美的な効果が高い治療法です。前歯の並びや軽度の不正咬合など、目立つ部分を短期間で改善することで、見た目の印象が大きく変わります。
例えば、結婚式や重要なプレゼンテーションを控えている場合、部分矯正を選択することで短期間で笑顔を整えることができます。特に、前歯の小さな隙間や軽度な傾きなどは、部分矯正で迅速かつ効果的に治療できます。
6. 快適な治療
部分矯正では、必要な部分だけに矯正装置を装着するため、口腔内の不快感や違和感が少なくなることがあります。全体矯正では全ての歯にブラケットやワイヤーを装着するため、初期段階では口内炎や装置による擦れが生じることが多いですが、部分矯正ではこれらのリスクが軽減されます。
また、装置のサイズも小さくなることが多いため、話すことや食事がしやすくなります。装置の影響が少ないため、日常生活におけるストレスも減少し、快適に治療を進めることができます。
7. 保定期間が短い
部分矯正後の保定期間も全体矯正に比べて短くなることが一般的です。保定期間とは、矯正治療が終了した後に歯並びが元に戻らないようにするための期間のことです。
全体矯正では、治療後にリテーナー(保定装置)を数年間装着する必要がありますが、部分矯正の場合は特定の部分だけを治療するため、保定期間も短く済むことが多いです。
これにより、矯正装置を外した後のケアも簡単に済ませられ、患者さんにとっての負担が軽減されます。
8. 健康面でのメリット
歯並びが改善されることで、日常の口腔ケアがしやすくなります。例えば、歯の重なりや隙間が減少することで、歯ブラシやデンタルフロスが届きやすくなり、虫歯や歯周病の予防に効果的です。
また、噛み合わせが良くなることで、食べ物をしっかりと噛み砕くことができるようになり、消化器官への負担も軽減されます。さらに、正しい噛み合わせは顎関節への負担を減らし、顎関節症のリスクを低減することができます。歯並びの改善は、見た目の向上だけでなく、全身の健康維持にも寄与する重要な要素です。
部分矯正にはどんなリスクがあるの?
部分矯正(プチ矯正)を受ける際には、いくつかのリスクや注意点があります。
1. 治療効果に限界がある
特定の歯の位置だけを修正するため、全体的な噛み合わせの改善には限界があります。広範囲の歯並びの問題や複雑な噛み合わせを解決するには、全体矯正が必要となることが多いです。
2. 治療期間の予測がやや難しい
部分矯正の治療期間は一般的に短いですが、症例によって異なるため、正確な期間を予測するのが難しい場合があります。また、想定していた期間よりも長くかかることがあります。
3. 歯列後戻りのリスクがある
矯正治療後にリテーナー(保定装置)を使用しない場合、歯が元の位置に戻る「後戻り」が生じることがあります。特に部分矯正の場合は、動かす歯が限られていてそれ以外の歯には影響を与えることが少ないため、後戻りのリスクが高くなりがちです。
4. 歯や歯根へのダメージがある
歯に力をかけて動かすことで、歯や歯根にわずかな損傷が生じる可能性があります。特に、歯根の吸収や歯の移動に伴う痛みが発生することがあります。
5. 歯茎や骨に影響がある
歯の移動により、歯茎や歯を支える骨にも変化が生じます。物理的に力が加わったことの結果としての歯茎の炎症により、歯肉炎や歯周病のリスクが増加することがあります。また、骨の変化によって歯がグラグラする状態が続き、歯の安定性に影響を与えることもあります。
6. 治療中に不快感や痛みを感じることがある
矯正器具が口の中にあることで不快感や痛みを感じることがあります。初期の段階では異物感や軽い痛みが続くことが多いですが、個人差があります。
7. 装置の破損や脱落が起こることがある
装置が破損したり、脱落することがあります。その結果治療が遅れることや追加で修理費用がかかることがあります。
8. 期待していた結果が得られない可能性がある
部分矯正は全体的な矯正治療と比較して、得られる結果に限界があります。そのため、患者さんが期待していた結果が得られない場合があることを理解しておく必要があります。
部分矯正を考える際には、これらのリスクや注意点を十分に理解し、担当医と詳細な相談を行ってから開始することが重要です。
部分矯正とは
部分矯正は、前歯などの目立つところを部分的にきれいな歯並びにする治療で、主に前歯2~8本程度の歯列をきれいに揃えます。
部分矯正で治療可能な不正咬合は、軽度のガタガタ、出っ歯、受け口などです。歯の重なりが大きい場合や、噛み合わせの治療が必要な場合は、部分矯正では対応出来ませんので、全顎矯正になります。
▼部分矯正に関する詳しい解説はこちら
部分矯正で治療できる症例
部分矯正で治せる歯並びはどの程度の不正咬合なのかについてご説明します。
- 軽度のガタガタした歯並び
- 軽度の出っ歯
- すきっ歯
- 矯正後の後戻り
部分矯正では軽度のガタガタなど、簡単に治せる範囲の治療しか行うことが出来ません。横顔のEラインの改善までは期待出来ませんし、奥歯の噛み合わせも治せません。上の前歯だけ、下の前歯だけという治療は可能です。
部分矯正で歯並びを治すメリットに関するQ&A
部分矯正と全体矯正の治療期間の違いは何ですか?
部分矯正は歯を動かす距離が少なく、軽度の不正咬合を治すため、通常は2ヶ月から数か月で治療が終了します。一方、歯列全体を治す場合はより広範な歯の修正が必要で、治療期間は通常長くなります。
部分矯正で歯を動かすためのスペースを作る方法について教えてください。
部分矯正では通常、歯を削る方法でスペースを作ります。この方法はIPR(ディスキング、スライス)と呼ばれ、前歯の両側をわずかに削ります。削るのはエナメル質の表面の0.25ミリ~0.5ミリ以内であり、通常は痛みや知覚過敏を引き起こす心配はありません。
部分矯正で治療可能な不正咬合の例を教えてください。
部分矯正で治療可能な不正咬合の例には、軽度のガタガタした歯並び、軽度の出っ歯、すきっ歯、矯正後の後戻りなどが含まれます。ただし、部分的な治療では横顔のEラインの改善や奥歯の噛み合わせの治療はできず、通常は上の前歯だけまたは下の前歯だけの治療に適しています。
まとめ
部分矯正は気になる部分の歯並びの見た目だけを改善できるので、人気のある治療方法です。ただし、軽度の不正咬合しか治せませんので、治療前に担当医としっかりと話し合って、どの程度まで治るのかを見極める必要があります。