前歯1本だけが出っ歯やガタガタの場合、見た目や咀嚼機能に大きな影響を与えることがあります。このようなケースでは、部分矯正(プチ矯正)を検討することが一般的です。前歯1本だけ出っ歯やガタガタの場合の一般的な治療についてご説明します。
目次
前歯1本の不正咬合に対する部分矯正
前歯1本だけが出っ歯やガタガタの場合、部分的な治療で治るかどうかは、次の点を考慮して歯科医師が判断します。
- 歯並びの全体的なバランス
- 隣の歯との位置関係
- 患者さんのご希望とライフスタイル
1. 歯並びの全体的なバランス
出っ歯の原因が一か所の位置の異常のみであれば以上のある歯だけの治療で治ることが多いです。全体的な歯並びや噛み合わせに問題がある場合は、一般的には歯列全体の治療が必要になることもあります。
2. 隣接歯との関係
前歯1本だけを後方に移動させたい場合でも、隣接する歯の位置や角度も考慮する必要があります。隣接歯と大きく重なっておらず、歯が歯列から大きく飛び出していない場合であれば、問題のある歯のみの治療が効果的です。
3. 患者さんのご希望とライフスタイル
部分的な治療は短期間で結果が得られるため、急ぎの治療を希望する患者さんには適しています。また、目立たない装置(インコグニト、インビザラインなど)を使用することで、見た目を気にする必要もありません。
歯が1本だけ不正咬合になる原因
- 生えた位置が悪い・・永久歯が生えてくる際に、スペースが不足している場合や、周囲の歯に押されて正しい位置に生えられない場合があります。
- 親からの遺伝・・親から受け継がれる遺伝的な要素が影響することがあります。
- 外傷の影響・・歯が外的な力によって移動したり、変形したりすることがあります。
- 乳歯を早期に失った・・乳歯が早く抜けると、永久歯が正しい位置に生えるスペースがなくなることがあります。
- 指しゃぶりなどの癖・・長期間の指しゃぶりや舌で歯を押す癖などが歯並びに影響を与えることがあります。
部分矯正とは?
例えば、前歯1本だけが歯列から飛び出ていたり、ねじれていたり、隣の歯とわずかに重なっている等、気になる歯だけの歯並びを改善したい方は多くおられます。その場合は、部分矯正と呼ばれる方法で治る場合が多いです。
すべての歯を動かす治療とは異なり、前歯の2~8本程度のみを動かし特定の歯の歯並びのみを治療します。この方法は、前歯に対して行うことが多く、見た目の問題を解決するのに向いています。
歯全体を動かす場合と比較して、部分的な治療は期間が短く費用も抑えられ、患者さんの身体的な負担も少なくなることが期待できます。また、見た目の改善を希望する大人の患者さんに特に人気があります。
部分的な治療はは軽度の不正咬合に向いており、前歯1本だけの見た目を整えたいという場合でも、前歯が2本殆ど重なって二重に生えている場合などは、歯を大きく動かす必要があるため、他の歯も動かさないときれいに並ばないケースとなります。部分矯正が可能かどうかは、担当医の診断によって決まります。
部分矯正が適しているケース
部分的な治療は、以下のようなケースに向いています。
- 軽度の不正咬合・・小さな重なりやわずかな傾きがある場合。
- 後戻りの治療・・以前に歯並びをきれいにする治療をしたが、時間が経過するにつれて歯が動いて元の位置に戻ってくる「後戻り」が起こっている場合。
部分矯正で治しやすいのは前歯2本~8本の範囲で、軽度のガタガタ(叢生)や出っ歯、受け口、一度矯正したけれどリテーナーの付け忘れなどでしっかり保定が出来ずに歯列が後戻りしてしまった場合などです。簡単に治る程度の不正咬合が適用となります。
軽度の不正咬合であっても、奥歯の噛み合わせに問題がある場合は、前歯だけでの治療は難しいため、全体矯正になります。そのため、見た目が気になる部分だけを治したいと思っても、奥歯の噛み合わせを治す必要がある場合は全体矯正の適用となり、費用と治療期間が多くかかることになりますので注意が必要です。
部分矯正のメリット・デメリット
メリット
- 治療期間が短い・・歯全体を動かすよりも短期間で終えることが出来る
- 費用が安い・・歯全体を動かす場合よりも費用が安く設定されている場合が多い
- 痛みが少ない・・大きく歯を動かすことがないので痛みが少ない
- 見た目の改善が早い・・気になる歯だけを集中的に治療するため、見た目の改善が早く実感できます。
デメリット
- 軽度の不正咬合しか治せない・・主に前歯2~8本程度の軽度の不正咬合に適用される
- 噛み合わせは治せない・・全体の歯並びを治すわけではないため噛み合わせは治せない
矯正装置について
歯並びを治すには、以下のような装置を使います。
マウスピース矯正
インビザラインという透明のマウスピースを使います。まずiTeroと呼ばれる光学スキャンで歯型を取り、専用ソフトを使用してきれいな歯並びに変わるまでのクリンチェックと呼ばれる治療計画のデータを作成します。
治療計画に合わせて、少しずつ歯が動いた状態のマウスピースが規定枚数作られ、患者さんは1日22時間マウスピースをはめ、2週間程度で新しいマウスピースに交換していくことで、歯を動かして歯列を整えていきます。
ワイヤー矯正
前歯8歯にブラケットと呼ばれる小さなボタンのような装置を貼り付け、それにワイヤーを通して歯に力をかけて歯を動かしていきます。全顎矯正の場合は全ての歯にブラケットとワイヤーをつけます。
当院ではブラケットは主に白いセラミック製のものを使用しますので、金属のブラケット程目立ちません。また、ワイヤーも銀色のワイヤーに白い樹脂を巻いたホワイトワイヤーを使うと目立ちにくくなります。
裏側矯正
ブラケットとワイヤーを歯の裏側につけます。当院ではインコグニトという名前の装置を使っており、従来の裏側矯正の装置よりも薄く、違和感が少ないです。
部分矯正、全顎矯正共に使用できます。
【動画】お手軽にできる部分矯正とは
前歯1本だけの部分矯正に関するQ&A
前歯1本だけの歯並びはどのように治療すれば良いですか?
前歯1本だけの歯並びは、部分矯正で治療が可能な場合が多いです。前歯2~8本程度に矯正装置をつけて歯を移動させます。
部分矯正では、どのような歯の問題を治療できますか?
部分矯正は前歯1本だけのねじれ、歯とのわずかな重なり、前に突き出ている歯など、前歯1本に関連する歯並びの問題を治療するのに適しています。
部分矯正で前歯1本だけを治す場合、周囲の歯も動かす必要があるのですか?
はい、周囲の歯も動かす必要があります。歯をきれいに一列に並べるためには、気になる1本の歯だけを動かすのではなく、周囲の歯も移動させる必要があります。
まとめ
気になる前歯1本だけを治したい時には、基本的に部分矯正の適用となります。しかし、重度の不正咬合や噛み合わせの治療が必要な場合は、全顎矯正となります。