インビザライン

インビザライン治療中の虫歯リスクと予防策

インビザラインは虫歯になりやすい?虫歯にならないためにはどうしたらいいの?

歯並びの矯正にインビザラインを選択される患者さんが多くなってきました。矯正中にたまに虫歯になることがありますが、インビザラインでのリスクはどの程度でしょうか。虫歯にならないようにするための方法についてもご説明します。

なぜインビザラインが虫歯リスクを高めるのか

インビザラインアライナー

マウスピースでの治療中は虫歯になりやすいというリスクがあります。その主な理由は、マウスピースを付けることで歯の表面の湿度と温度が変化し、細菌が繁殖しやすい環境を作り出してしまうからです。

インビザラインの使用中に虫歯リスクが高まる理由は、主に以下の要因が考えられます。

1. アライナーの装着時間

インビザラインのアライナーは1日に20~22時間装着することが推奨されています。長時間装着することで、唾液の流れが制限され、唾液の自浄作用が減少します。唾液は口内を洗浄し、食べかすや細菌を除去する役割があるため、その機能が制限されると虫歯リスクが高まります。

マウスピースを使用していると、外出時などで歯磨きが難しくなる場合があります。マウスピースを長時間装着していると、唾液の流れが阻害され、歯やお口の中の自然な洗浄作用が弱まることがあります。そのため歯垢が蓄積しやすくなり、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。

2. 食べ物の残留

食事後に十分に歯磨きをせずにマウスピースを装着することで、食べかすが歯とマウスピースの間に閉じ込められ、虫歯の原因となることもあります。マウスピースがきれいに洗えていない場合も同様です。

食事や飲み物を摂取した後にアライナーをすぐに装着すると、歯に付着した食べかすや糖分がアライナーの下に閉じ込められます。これにより、細菌が繁殖しやすくなり、虫歯のリスクが増加します。特に、糖分を含む飲食物が原因となることが多いです。

3. 清掃不足

アライナー自体も清掃が必要ですが、適切に清掃されていない場合、アライナーの内部に細菌やプラークが溜まりやすくなります。これが長時間歯に接触することで、虫歯のリスクが高まります。

4. フッ化物の使用制限

従来の矯正器具と比較して、インビザラインではフッ化物入りの歯磨き粉やフッ化物ジェルを効果的に使用することが難しい場合があります。フッ化物は虫歯予防に効果的ですが、アライナーの装着によりその効果が十分に発揮されにくくなります。

5. 口腔内のpH変動

アライナーを装着している間、口腔内のpHが低下しやすくなります。これは食事後に特に顕著であり、酸性環境が続くことでエナメル質が溶解しやすくなり、虫歯のリスクが増加します。

インビザライン矯正治療中の虫歯の主な原因

インビザラインでの矯正治療中に虫歯になる原因は、主に以下のようなものです。

1. オーラルケアの不足

アライナーは取り外しが可能ですが、食事の後や再度装着する前に十分な歯磨きが行わないと、食べ物のカスや歯垢が歯の表面に残り、これが直接的な原因になります。

2. アライナーの長時間装着

インビザラインは1日に22時間以上の装着が推奨されています。長時間装着することで、唾液の流れが阻害され、歯を保護する唾液の作用が低下します。これにより、アライナーの中が細菌が繁殖しやすい環境になってしまうことがあります。

3. 食べ物のカスが残っている

マウスピースを装着したままでの飲食は推奨されていません。しかし、水以外の飲料や食べ物を摂取した後に歯磨きをせずに装着すると、糖分や酸が歯の表面についたままになり、虫歯を引き起こす原因となります。

4. アライナーがきれいに洗われていない

アライナー自体をきれいに洗うことが出来ていない場合、マウスピース内に細菌が繁殖し、その細菌が歯に影響を与えることもリスクを高めます。

5. 定期的な歯科健診

矯正治療中は定期的な歯科健診が必要ですが、これを怠ると早期の虫歯を見逃し、進行させてしまう可能性があります。歯科健診の際のクリーニングを受けると、歯から歯垢や歯石を除去し、虫歯や歯周病の予防に繋がります。

インビザライン治療中の虫歯予防策

アライナーを清潔に保つ

  • マウスピースは毎日清潔に保つ必要があります。使用前後には必ず水で洗い、専用のクリーナーで定期的に除菌しましょう。
  • 食事後は必ず歯磨きをしてからマウスピースを装着してください。小さなブラシを使って歯間や歯の隅々まで磨き、アライナーの汚れを全て洗い流すことが大切です。

食事と生活習慣の調整

  • 糖分の摂取を控えめにし、酸性の飲食物の摂取も避けるようにしましょう。これらは虫歯の原因となる菌の活動を促進させます。
  • 水分を多く摂ると、口内を清潔に保つことができます。特に、食事後は水を飲むことで、口内の食べ物のカスをきれいに洗い流しましょう。

定期的な歯科健診の重要性

  • インビザライン治療中でも、定期的な歯科健診を欠かさずに行うことが重要です。健診時に歯科衛生士によるクリーニングを受けると、虫歯リスクを減らすことに繋がります。

インビザラインをつけたままで糖分の入っている物を飲んでいないか?

甘い飲み物

インビザラインはつけたままの飲食は基本的にアウトで、飲食はマウスピースを外して行います。その理由は3つあります。

  1. アライナーを装着したまま食べ物を噛むことによって、アライナーが変形してしまうから
  2. 食べ物、飲み物がアライナーの中に入り込んでしまって汚れや着色につながるから
  3. 食べ物がアライナーの中に入り込んで歯垢になり細菌が繁殖するから

アライナーを付けたまま飲んでも良いのは「水だけ」だと思っておきましょう。糖分の含まれた「飲み物」には注意が必要です。

マウスピースをつけたままで甘い糖分が含まれている飲み物を飲むと、アライナーと歯の間に飲み物が入り込んで虫歯になりやすくなります。ジュースやコーラだけでなく、スポーツ飲料にも糖分が多く含まれていますので気を付けましょう。

飲食をするときにはアライナーを外して歯磨きをして再装着する

インビザライン洗い方

間食したり甘い飲み物が飲みたいときは、マウスピースを外します。そして飲んだ後は歯みがきをして、マウスピースも軽く洗ってから歯に装着しましょう。

そうすればインビザラインでの矯正治療中に虫歯になるリスクをかなり下げることが出来ます。

マウスピースをつける

虫歯の出来やすい箇所をチェックしてみよう

  • 歯並びが悪く歯が重なっていてデコボコしている部分
  • 歯と歯の間の隙間部分
  • 生えかけの親知らずや親知らずの一番後ろの部分
  • 以前治療をした歯の詰め物・被せ物の隙間

矯正中に虫歯の治療は出来る?

インビザラインの場合は最初に全てのマウスピースを作製するため、その途中で虫歯治療を行って詰め物や被せ物をして歯の形が少しでも変わると、マウスピースがぴったりはまらなくなってしまいます。

そのため、インビザラインの治療中に虫歯治療をするとしたら、小さな虫歯に限られます。その場合は歯を削った後にレジンと呼ばれる白いプラスチックを詰めて光を当てて固めます。

大きな虫歯になると歯を大きく削って被せ物をつける必要がありますので、矯正のためのアライナーを再度作り直さなければいけません。神経を取る根幹治療が必要な場合も、今後の治療計画が大きく遅れる可能性がありますので、虫歯にならないように注意する必要があります。

インビザライン治療中の虫歯予防

予防のために意識して頂きたい点をご説明します。

1. フッ素入りの歯磨き粉を使う

フッ素入り歯みがき

フッ素は歯の脱灰を抑制し、再石灰化を促進する効果があります。虫歯菌の活動を抑えるという作用もあるため、大人も子供も予防の為にはフッ素配合の歯磨き粉が欠かせません。

歯科医院で販売しているフッ素入り歯磨き粉は、ドラッグストア等で売られているものと比べるとフッ素の濃度が高いので、虫歯の予防効果も高くなっています。

フッ素の働き

*未就学児は歯みがき粉が甘いためになめてしまってフッ素の誤飲に繋がる可能性を考慮して、フッ素濃度1000ppm以下の歯磨き粉をお使いください

2. フロスや歯間ブラシを使う

糸ようじ(フロス)、歯間ブラシ

歯ブラシでのセルフケアはきちんと磨いているつもりでも、実際にはお口の中の6割程度しかきれいになっていないといわれています。

そのため歯ブラシの補助道具として、デンタルフロスや歯間ブラシ、ワンタフトブラシを使って、歯と歯の間や、歯と歯茎の間など、歯ブラシの毛先が届きにくい部分を掃除しましょう。

3. こまめに水分を摂ってお口の中の乾燥を防ぐ

水

インビザラインを使っての矯正治療中は、1日に22時間以上もマウスピースをはめているためにお口の中が乾燥しやすくなっています。そのためこまめに水分を摂ることで唾液の分泌を促しましょう。

唾液には抗菌作用があり、食べかすを洗い流す働きがあります。唾液はマウスピースの中にも入り込みますので、積極的に水分補給をして唾液の分泌を促し、お口の中が乾燥しないような環境に整えましょう。

水分補給には水を摂取するのが一番です。糖分が入っていなくてもお茶やブラックコーヒーはアライナーや歯への色素沈着の原因となります。

4. キシリトール入りのガムを噛む

キシリトールの効果
  1. 酸を作らず歯垢の中の酸を中和促進する
  2. ミュータンス菌の代謝を阻害する
  3. 口内の細菌を減らす 唾液を出して再石灰化作用を行う

まとめ

インビザラインでの矯正は夜間もマウスピースをつけ続けなければなりません。そのため口腔内が乾燥しやすくなって虫歯のリスクが高まります。矯正治療中に虫歯になると全体の計画に影響を与える場合がありますので、普段のケアを気を付けて行うようにしましょう。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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