歯科矯正全般

出っ歯の治療方法 骨格が原因で重度の場合

出っ歯の治療方法 骨格が原因で重度の場合

重度の出っ歯の方で、上顎の骨格が前に出ている方の治療法についてご説明します。重度の出っ歯の方は、上顎の骨格自体がかなり前に出ている方、骨格ごと出ている方、いわゆる口ゴボと呼ばれるケースがあります。

一般的な治療方法は抜歯して歯を動かすスペースを作るやり方です。しかし、その方法には問題点がありますので、解決方法と共にご説明します。

抜歯による矯正治療の問題点

出っ歯を後ろに下げるというその治療方法に関しては、中度の出っ歯も重度の出っ歯も同じです。歯を動かして並べるスペースを作るために、左右の4番の歯を抜歯しなければいけないということです。

出っ歯の治療で4番の歯を抜く説明

4番の歯を抜くと、左右の抜いたところに1本分のスペースが出来ますので、このスペースを利用して歯全体を後ろに下げていくと、出っ歯が治ります。

しかし、この時点で2つの問題点があります。

1つ目の問題は、4番の歯1本分のスペースでは、前歯全体を下げていくには少ないということです。

2つ目の問題は、歯の構造上、4番の歯を抜いて出来たスペースのうちの7割は前歯を下げることに使えますが、残りの3割分は奥歯が前に動いてしまうということです。

つまり、抜歯して出来たスペース全てを前歯を下げることに使えるわけではないということです。もう少し詳しくご説明していきます。

歯を抜くと抜いた分だけスペースができて、4番の歯はおおよそ6mmですので、6mmのスペースが作れます。

ところが、6mmのスペースを作ったから6mm前歯が下がるかといえば、下がりません。何故下がらないかというと、歯を後ろに下げる原理に理由があります。

歯は中心線から1、2、3番と番号が振られています。4番は抜歯済みですので、続いて5、6、7番の歯があります。右の1番から6番まで、そして左も1番から6番まであり、そのうちの4番は左右共に抜歯したのでありません。

左右に4mmずつのスペースが出来たからといって、かってに出っ歯が後ろに下がるわけではなく、歯の矯正は物理学の原理に基づいています。

抜歯して出来たスペースを利用して出っ歯を下げる具体的な矯正治療方法

左右の1~3番の6本の歯、そして5~7の6本の歯にワイヤー矯正と呼ばれている針金の装置を使用します。

ワイヤー矯正では、歯にブラケットというボタンのようなものをつけて、全ての歯のブラケットにワイヤーを通します。その際には左右の5、6、7番を固定源にして、3番と5番にはフックのような形のものをつけます。

そしてフックにゴムとかバネを引っ掛けて、綱引きみたいにして引き合うことで前歯を下げていきます。6mmのスペースのうち、70%は前歯が下がります。でも、30%は奥歯が前に動いてしまいます。

前歯と奥歯の綱引きになりますので、6mmのスペースが出来ても、実際には70%しか下がりませんから、4.2mmしか前歯は下がりません。重度の出っ歯の方に対しては、4.2mmしか下がらないということになると、あまり下がったことになりません。

出っ歯の治療で4.2ミリしか前歯が下がらない説明

そこで、奥歯が前に行かないようにする方法として、5番の歯のあたりに、ミニインプラントと呼ばれる、細いネジのようなものを埋め込む方法があります。ミニインプラントのことを、医院によってはアンカースクリューと呼ぶこともあります。

 アンカースクリュー(ミニインプラント)

 

インプラントとは骨に埋め込む人工の歯のことですがミニインプラントは矯正治療のための固定源として、5番の歯の上の歯茎に埋め込まれます。

インプラントは骨の中で動きませんが、天然の歯は動きます。歯は骨の中を移動することが出来、ワイヤー矯正等の矯正装置を使って歯を動かしたい方向へと力をかけることで、骨を溶かし、歯が動いたところにまた骨ができるので、少しずつ歯が動いていくというメカニズムです。

片やインプラントは、絶対に動きませんので、ミニインプラントにバネをつけて引っ張ることで5、6番は動くことなく前歯だけが後ろに下がることになります。

ミニインプラントを利用すれば、抜歯をして6mmのスペースができた場合、そのスペース丸々、6mmは前歯を下げることが出来ます。

出っ歯の場合の抜歯矯正の図

 

矯正治療と外科的矯正(外科矯正)の併用

重度の出っ歯が骨格によるものである場合、単純な矯正治療では十分に改善できないケースが多いです。そのため、外科的矯正(手術)を併用することが一般的です。

顎変形症(がくへんけいしょう)と診断される場合、上下の顎のバランスを整えるために外科的手術が行われ、顎の骨を適切な位置に移動させる手術を行います。具体的な手術としては、上下顎前後移動術やルフォーI型骨切り術が代表的です。当院では大阪梅田のカトレア歯科にて、日帰りのセットバック手術を行っています。

骨格性の出っ歯を治すセットバック手術

手術の場合は矯正装置を使う場合とは違って、4番の歯を抜いた後、抜歯で出来た6mm分のスペースの骨を切り取ってしまいます。6mm分の骨が切除されて物理的になくなりますので、その分顎が後ろに引っ込むことになります。

セットバック整形をすると完全に出っ歯が骨ごと下がる

つまり、前歯の1,2,3番を骨ごと後ろに下げる形になります。そして、3番と5番の骨を合わせて、動かないようにピンで止めます。そうすると、完全に骨ごと下がりますので、口元全体が前に出ていた方も、横顔がすっきりします。

この手術のことをセットバックをいい、麻酔科医の立会いのもとで全身麻酔で行います。全身麻酔ではありますが、当院では日帰り手術で行っています。

重度の出っ歯の方で、骨格そのものが前に出ている方は、セットバック手術を受けることで口元の輪郭がきれいになります。重度の出っ歯で骨格が原因の方には、セットバック手術がおすすめの治療法になります。

【動画】出っ歯の治療方法~骨格が原因で重度の場合~

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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