
新型コロナウィルスの流行後、風邪やインフルエンザの予防のために引き続きマスクを着用しておられる方もおられます。マスクをつけていても奇異に思われないことが日常的になり、マスクで口元が隠れるため、歯科矯正の治療をしていても目立たないので開始しやすいとも言えます。
今後も外を歩くときにはマスクをつけるという方が一定数おられるとしたら、どのような装置をつけるにしても、マスクで口元を覆って隠すことが出来ます。そのような事情を踏まえて、矯正治療についてご説明します。
マスクで口元を隠していれば矯正治療がやりやすい

コロナ禍のときは、外出時のマスクは必須アイテムでした。小さなお子さんでも公園で遊ぶ際にマスクをして遊んでいる姿も見かけましたし、学生の方は授業や塾や習い事、大人の方でも勤務先のミーティングや商談の際には必ずマスクをつけておられたと思います。
最近では外出中にマスクを着けている方も減ってきてはいますが、それでも一定数の方は駅や電車の中、地下街やビルの中などの人が多い密閉された場所ではマスクをしておられます。
そんな時こそ、不正咬合(出っ歯・叢生・受け口・開咬・過蓋咬合・ガミースマイルなど)による歯並びを気にされている方にとって、歯列矯正を相談したり、治療を開始しやすい時期といえます。
「笑った時に『矯正している』と周囲の人に見られるのが嫌」と思う方でも、昨今ではマスクで口元を隠しているのが不自然でない為、治療を始めることへの心理的な抵抗が少ないと思います。

日常的にマスクをしていれば、歯にブラケットとワイヤーをつけるワイヤー治療を行っていても、気づかれません。ワイヤー矯正は、インビザラインなどのマウスピース矯正や裏側矯正より、費用が安い事がメリットです。ワイヤーの付いた歯を見せる相手も、家族等の限られた相手か、カウンセリングや検査、調整などの診療の際の歯科医師やスタッフのみという事になります。
コロナ収束後もマスクをすると答えた方が多数

コロナ禍での調査では、コロナの問題が収束したあともマスクを着用しようと思うと答えた方が63.4%もおられました。
今後もマスクを使用する方が多いなら、2~3年程度かかる全顎矯正治療中にマスクをしていても目立たず、周囲の人の目を気にせずに治療が続けられそうです。
矯正治療3つの方法
歯科医院ではどのような治療を取り入れているのでしょうか。矯正治療は自由診療の為、取り扱っている装置や治療方法はクリニックにより様々です。治し方を3つに分けてご説明します。
ワイヤー矯正

従来から主流である矯正装置は、歯の表側にブラケットと呼ばれる小さな装置を貼り付け、それらにワイヤーを通して力をかけて歯を動かす「ワイヤー矯正」と呼ばれるものです。
ブラケットは目立ちにくいセラミックのものか、歯科医師によっては金属のブラケットを使用する場合もあります。ワイヤーも銀色のものと、白い樹脂をまいた白いワイヤーがあります。※白いワイヤーは別料金
- 最も一般的な方法で、歯の表側にブラケットとワイヤーを装着する。
- メタルブラケット(銀色の金属製)と、目立ちにくいセラミックブラケット(白や透明)がある。
- 比較的安価で、治療効果が高い。
メリット
- 幅広い症例に対応可能・・不正咬合の種類を問わず、さまざまなケースで対応できる。
- 効果が高い・・細かい歯の動きをコントロールしやすく、正確な矯正ができる。
- 自己管理の負担が少ない・・マウスピース矯正と違い、装置を取り外す必要がないため、自己管理が苦手な人でも続けやすい。
デメリット
- 見た目が気になる・・表側矯正の場合、装置が目立ちやすい。
- 口腔ケアが難しくなる・・ブラケットやワイヤーに歯垢がたまりやすく、虫歯や歯肉炎のリスクが上がる。
- 痛みや違和感がある・・ワイヤーの調整後は数日間、歯が締め付けられるような痛みが生じることがある。
裏側矯正

周囲の人から治療中であることを知られたくない方には、裏側矯正(舌側矯正)と呼ばれる方法があります。これは、歯の裏側、つまり舌側にブラケットを装着し、そのブラケットにワイヤーを通すものです。
裏側矯正(リンガル矯正)は、歯の裏側に矯正装置を装着する方法なので、矯正中でも見た目を気にせずに治療を受けられるのが特徴です。最近では、見た目を重視する方に人気の矯正方法の一つとなっています。
メリット
- 矯正装置が見えない・・最大のメリットは、装置が外から見えないことです。特に人前に出る仕事や接客業の方にとって、大きな魅力となります。
- 虫歯になりにくい・・歯の裏側は唾液の流れが多く、自然な自浄作用が働くため、虫歯になりにくいとされています。表側矯正に比べ、虫歯リスクが抑えられるのは大きなメリットです。
- 出っ歯の矯正に適している・・裏側矯正は、歯を内側へ引っ込める力がかかりやすいため、出っ歯の矯正に効果的です。特に、前歯の突出が気になる方には向いている矯正方法といえます。
- 吹奏楽の楽器の演奏やスポーツに制限がない・・表側矯正では、ワイヤーが唇や頬に当たりやすく、スポーツや管楽器の演奏に支障が出ることもあります。裏側矯正なら、その心配が少ないため、スポーツ選手や楽器演奏者にも人気があります。
デメリット
- 費用が高い・・裏側矯正は装置の設計が複雑で、歯科医師の技術も必要なため、一般的な表側矯正より費用が高くなる傾向にあります。費用の目安は100万〜150万円程度が一般的です。
- 違和感や発音への影響・・歯の裏側に装置が付くため、舌の動きが制限され、発音がしにくくなることがあります。特に、「サ行」や「タ行」の発音がしづらくなることがあり、慣れるまで時間がかかるかもしれません。
- 歯磨きが難しい・・装置が裏側にあるため、歯磨きが難しく、歯垢(プラーク)がたまりやすい点もデメリットです。専用の歯ブラシやフロスを使ってしっかりケアする必要があります。
- 治療期間が長くなることがある・・歯の裏側に装置をつけるため、力のかかり方が異なり、歯が動くスピードが遅くなることがあります。その結果、表側矯正よりも治療期間が長くなる場合があります。
マウスピース矯正

見えにくい矯正として、利用が増えているのがインビザラインです。ご自身で取り外しが可能な透明のマウスピースを歯に装着して、歯を動かしていく矯正方法です。来院した際に、担当医がチェックを行い、1~2週間毎に新たなマウスピースを装着していくというものです。
メリットは、ワイヤー矯正と違い、透明なので見えにくいという点、そして装置の取り外しが気軽にできるため食事を楽しめるという点です。デメリットを挙げるならば、担当歯科医の指示通りの装着時間を守らなければ、治療期間が延びてしまうという点です。
まとめ

いずれの治療法においても、外出する時にお口をマスクで隠す場合は、装置が目立つことを心配しなくてよいので、治療を始めやすいと言えます。
不正咬合を放置していると、噛み合わせが悪いため顎関節に痛みが出るケースや、歯のデコボコによって歯磨きが不十分になり口腔内を衛生的に保てず、その結果虫歯や歯周病になってしまう。遂には抜歯を選択しなければならなくなるケースもあります。歯や歯茎を健康に保つためにも、マスク生活の今、クリニックで矯正治療を行う事は悪くないと思います。
感染症対策以外に、マスクが役立つ機会と言える今。綺麗な歯並びにし、咀嚼機能の改善や、お口の悩みの解決を試みてみませんか。