歯科矯正全般

大人の矯正治療で後悔するケースと成功させるためのポイント

大人の矯正治療で後悔するケースと成功させるためのポイント

近年、成人の方々が歯列矯正に関心を持つケースが増えています。しかし、治療後に期待通りの結果にならずに後悔することは避けねばなりません。大人の矯正治療で後悔しないためのポイントと、成功させるために大切なポイントについてご説明します。

大人の矯正治療で後悔する主なケース

成人の矯正治療において、治療後に後悔を感じるケースは主に以下のような点です。

1. 治療期間の長期化

矯正治療は、平均的に2~3年程度の期間がかかるとされていますが、治療計画や個々の症例によってはこれがさらに長引くことがあります。例えば、顎の成長が終了している大人の場合、歯の移動速度が遅くなるため、計画よりも治療が延びることがあります。

また、途中でトラブルが発生したり、患者さん自身が装置の使用方法を守らない場合にも、治療期間が予想以上に延びる可能性があります。治療期間が長引くことで、仕事やプライベートの計画に影響を与え、「もっと早く終わると思っていたのに」という後悔につながることがあります。

2. 費用の予想外の増加

矯正治療は費用が高額になることが一般的であり、治療開始前に見積もりを提示されますが、追加費用が発生するケースもあります。例えば、装置が破損した場合の修理費用や、予定外の治療が必要になった場合の追加料金などが挙げられます。

また、保定装置の費用や定期的な健診にかかる費用も計画に含めていないと、治療が進むにつれて費用がかさみ、「こんなにお金がかかるとは思わなかった」という後悔を招く可能性があります。

3. 見た目の変化への不満

矯正治療によって歯並びや咬み合わせが改善されると、顔貌にも変化が生じることがあります。しかし、その変化が患者さんの期待にそぐわない場合、後悔の原因となることがあります。例えば、治療によって歯並びが整ったものの、顎の位置や口元の見え方が以前と大きく変わり、「自分の顔が別人のようになった」と感じることがあります。このような場合、治療開始前にシミュレーションや事前説明を十分に受けていなかったことが問題になることが多いです。

4. 歯の後戻り

矯正治療後に保定装置の使用を怠ると、歯が元の位置に戻る「後戻り」が発生することがあります。後戻りは、矯正治療の努力を無駄にするだけでなく、新たな治療が必要になる場合もあり、経済的・時間的な負担が増えます。特に、大人の場合は仕事や家庭の事情で保定装置の使用が難しいと感じることがあり、これが後悔の原因になることが多いです。

5. 治療中の生活における制限

矯正装置を装着することで、日常生活にさまざまな制限が生じる場合があります。例えば、食事の際に硬いものや粘着性のあるものを避けなければならない、歯磨きに時間がかかる、発音がしづらくなるなどの問題があります。また、ワイヤー矯正の場合、見た目が気になるという心理的な負担も大きいです。これらの制約により、治療期間中に「思っていたよりも不便だった」と感じる患者さんも少なくありません。

以上のようなケースは、事前の説明不足や治療計画の不備が原因であることが多いです。治療開始前にリスクをしっかり理解し、自分の生活スタイルや期待に合った選択をすることが、後悔を防ぐための第一歩となります。

矯正治療を成功させるためのポイント

矯正治療で満足な結果を得るためには、以下の点に注意が必要です。

1. 治療開始前の十分なカウンセリング

大人の矯正治療を成功させる第一歩は、治療開始前の十分なカウンセリングです。以下のような点を確認し、治療の目的や期待を明確にしましょう。

  • 現在の歯並びの状態や問題点の確認
  • 矯正治療によって得られる効果の説明
  • 治療期間の目安や費用についての相談
  • ライフスタイルに合った矯正装置の選択

矯正治療にはさまざまな選択肢があり、表側矯正、裏側矯正、マウスピース型矯正(インビザラインなど)があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、カウンセリングで自身の希望をしっかりと伝えることが重要です。

2. 矯正治療中の日常生活への配慮

大人の矯正治療では、日常生活との両立が重要です。以下のような配慮を行うことで、治療をスムーズに進められます。

食事の際の注意

  • 矯正装置が付いている場合、硬いものや粘着性のある食品を避ける必要があります。
  • 矯正装置がない場合でも、歯垢がたまりやすい食品を控えましょう。

装置の取り扱い

  • マウスピース型矯正の場合、適切な時間装着し、必要に応じて洗浄を行いましょう。
  • 固定式装置の場合、装置の破損を防ぐため、丁寧に取り扱いましょう。

職場や社交場での対応

  • 見た目を気にする場合は、目立ちにくい装置を選ぶことができます。
  • 痛みや不快感がある場合は、定期的に歯科医師に相談しましょう。

3. 適切な口腔ケア

  • 矯正治療中の口腔ケアは特に重要です。矯正装置があると歯垢がたまりやすくなるため、以下のケアを徹底しましょう。

歯磨きの強化

  • 矯正専用の歯ブラシや歯間ブラシを活用しましょう。
  • フッ素入り歯磨き粉を使用することで、虫歯予防に効果的です。

歯科医院での定期健診

  • 矯正治療中は歯垢や歯石がたまりやすいため、定期的なクリーニングを受けましょう。
  • 歯科医師に適切な歯磨き方法を教えてもらうのも良いです。

洗口液の使用

  • 歯垢を減らすために、抗菌性のある洗口液を併用するのがおすすめです。

4. 痛みや不快感への対処

矯正治療中に装置が調整されると、一時的な痛みや不快感を感じることがあります。これらを軽減する方法を知っておきましょう。

痛みがある場合

  • 市販の鎮痛薬を使用することで、痛みを和らげることができます。
  • 温かいタオルを顎に当てることで、不快感を軽減する効果も期待できます。

装置による口内の傷

  • 矯正ワックスを使用して、装置の角が口内に当たらないようにしましょう。
  • 痛みや傷がひどい場合は、すぐに歯科医師に相談してください。

5. モチベーションの維持

矯正治療は通常1年以上の時間がかかるため、モチベーションを維持することが成功の鍵です。

治療中の目標を設定

  • 美しい歯並びを想像しながら、目標を明確にしましょう。

進捗状況の記録

  • 治療前後の写真を記録することで、治療の進み具合を実感できます。

周囲のサポートを得る

  • 家族や友人に治療をサポートしてもらうと、気持ちが楽になります。

矯正治療中の口腔ケアの重要性

矯正装置装着中は、歯垢が溜まりやすくなります。以下の点を心掛けましょう。

  1. 丁寧な歯磨き・・装置の周りもしっかりと磨くことが大切です。
  2. フロスや歯間ブラシの活用・・歯と歯の間の清掃を怠らないようにしましょう。
  3. 定期的なプロフェッショナルクリーニング・・歯科医院でのクリーニングを定期的に受けることで、口腔内を清潔に保てます。

矯正治療の選択肢とその特徴

成人の矯正治療には、以下のような方法があります。

  • ワイヤー矯正・・従来の方法で、幅広い症例に対応可能です。
  • マウスピース矯正(インビザライン)・・透明な装置で、目立ちにくく取り外しが可能です。
  • 部分矯正・・特定の歯のみを動かす治療で、期間や費用を抑えられる場合があります。

矯正治療を始める前の心構え

治療を開始する前に、以下の点を考慮しましょう。

  1. 治療目的の明確化・・美観の改善か、機能の改善か、目的をはっきりさせましょう。
  2. 生活習慣の見直し・・喫煙や食生活など、治療に影響を与える習慣を改善することが求められます。
  3. 家族や職場の理解・・治療期間中のサポートを得るため、周囲の理解を得ておくことが大切です。

矯正治療後の注意点

治療が完了しても、以下の点に注意が必要です。

  1. 保定装置の継続使用・・指示された期間、保定装置を使用し続けましょう。
  2. 定期的な健診・・治療後も定期的に歯科医院でのチェックを受けることが重要です。
  3. 口腔ケアの徹底・・引き続き、丁寧な歯磨きと適切なケアを心掛けましょう。

まとめ

大人の矯正治療は、不正咬合を改善し、機能的・審美的な向上をもたらすことに大きなメリットがあります。しかし、治療期間の長期化や費用の増加、見た目の変化、後戻りといったリスクも存在します。

これらのリスクを理解し、信頼できる矯正医を選び、事前に治療計画や生活への影響をしっかり確認することが重要です。また、治療後も保定装置の使用や口腔ケアを継続することで、矯正治療を成功させることが出来ます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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