矯正治療で歯を強く引っ張るためにアンカースクリュー(ミニインプラント)という小さなネジを顎骨に埋め込んで固定源にする治療法があります。アンカースクリューとはどんなものか、痛くないのかご説明します。
目次
アンカースクリューとは?
アンカースクリューとは、歯列矯正の治療で用いられる金属製の小さなネジのことを指し、直径は僅か1.5mm程度で、長さも6mm~8mm程度と、ごく小さなものです。
主にチタン合金で作られており、その生体適合性の高さからアレルギー反応のリスクが非常に低いです。歯列矯正においては、これらのスクリューを歯茎の骨に埋め込み、ワイヤーで歯とスクリューを繋いで歯を動かす際の固定点として活用します。
アンカースクリューは痛いの?
埋め込み自体は、局所麻酔を行うため、ほとんど痛みを感じません。処置は通常数分で完了し、患者さんは快適に過ごせます。しかし、痛みの経験には個人差があり、以下のような段階で痛みを感じる可能性があります。
1. 麻酔注射時
- 針を刺す際に一瞬の痛みを感じることがあります。
- 麻酔液が広がる際に、軽い圧迫感や違和感を覚える方もいます。
2. 処置直後
- 麻酔が切れ始めると、軽度から中程度の痛みや不快感を感じることがあります。
- この痛みは通常、歯茎の傷によるもので、骨自体には痛覚がありません。
- 多くの場合、市販の鎮痛剤で対処可能です。
3. 処置後数日間
- 埋め込み部位に軽い腫れや痛みが続くことがあります。
- 通常3〜5日程度で徐々に軽減していきます。
- 痛みの程度は個人差が大きく、ほとんど痛みを感じない方もいれば、1週間程度違和感が続く方もいます。
4. 矯正力をかけ始めたとき
- アンカースクリューを使って実際に歯を動かし始めると、軽度の痛みや圧迫感を感じることがあります。
- この痛みは通常、歯の移動に伴うもので、数日で慣れてきます。
5. 日常生活での注意点
- アンカースクリューの周辺の歯茎を強く刺激すると、一時的に痛みを感じることがあります。
- 硬い食べ物を噛んだり、舌で触ったりすると不快感を覚える可能性があります。
6. スクリュー除去時
- 矯正治療終了後のスクリュー除去も、通常は局所麻酔下で行われるため、ほとんど痛みはありません。
- 抜いた後は歯茎に小さな穴が残りますが、その穴は数日で塞がります。
- 除去後は軽度の不快感が残ることがありますが、すぐに回復します。
アンカースクリュー(ミニインプラント)が痛む場合の対策
アンカースクリューは普通はそれほど痛むものではありませんが、万が一痛む場合は以下を参考にしてください。
1. 口腔内の清潔を保つ
痛みの原因が感染によるものである場合、お口の中の清潔を保つことが重要です。正しい方法での歯磨きとデンタルフロスの使用、そして必要に応じてマウスウォッシュなども使用してください。
2. 市販の鎮痛薬を使用する
痛みが軽度であれば、市販の鎮痛薬を一時的に使用することができます。ただし、長期間の使用は避け、使用前には必ず医師または歯科医に相談してください。
3. 冷たいものを口に含む
痛みや腫れを和らげるために、冷たい水や氷を口に含むことも効果的です。冷却することで炎症を抑えることができます。
4. 柔らかい食べ物を選ぶ
硬い食べ物や粘着性のある食べ物は避け、柔らかい食べ物を摂取することで、アンカースクリューへの負担を減らすことができます。
5. 歯科医に相談する
痛みが続く場合や、痛みが激しい場合は、速やかに歯科医に相談してください。歯科医はスクリューの位置や状態を確認し、必要に応じて調整や治療を行います。
アンカースクリューが必要な症例とは?
アンカースクリューを用いるのは主に出っ歯、ガミースマイル、奥歯の移動が必要な場合です。
1. 重度の出っ歯
奥歯を動かさずに前歯だけを後方に動かすことができますので、抜歯矯正の場合は抜歯で出来たスペースの殆どを、出っ歯を後ろに動かすために使えます。そのため重度の出っ歯でも治療が可能になります。
2. ガミースマイル
ガミースマイルを治療するには、上の前歯を歯茎の方向に引き上げ(圧下)なければなりませんが、従来の矯正治療では上方向に力を加えるのが大変難しく、ガミースマイルは通常の矯正治療ではなく外科手術の適用となっていました。
しかしアンカースクリューを使用することで、歯に上下左右全ての方向への力を加えることが可能になり、矯正でガミースマイルを治療出来るようになりました。
3. 奥歯の移動
アンカースクリューを使用することで、奥歯を後方に移動させることが可能になります。
奥歯を後方に移動させるとその分スペースが出来ますので、そのスペースを利用して出っ歯や受け口を後ろに下げることが出来ます。従来の方法では小臼歯を抜歯してスペースを作っていましたが、アンカースクリューを使用することで小臼歯の抜歯が必要なくなるというメリットがあります。
アンカースクリューにトラブルが起こったときは?
トラブル | 対策 |
---|---|
スクリューの緩み | すぐに歯科医に相談し、再調整または交換を行う。 |
痛みや腫れ | 痛み止めを使用し、数日続く場合は歯科医に連絡する。 |
感染の兆候 | 抗菌マウスウォッシュを使用し、即座に歯科医に相談する。 |
歯列矯正のアンカースクリューの痛みに関するQ&A
アンカースクリューは、ミニインプラントとも呼ばれる歯列矯正に使用される小さな金属製のネジです。主にチタン合金で作られ、歯茎の骨に埋め込まれます。
埋め込み時は局所麻酔を使用し、ほとんど痛みは感じません。術後の軽度の痛みや不快感は痛み止めで対処可能です。
主なメリットは、周囲の歯への影響が少ないこと、抜歯なしでの治療可能性、歯の動かしやすさ、治療期間の短縮、外科手術なしでの矯正可能性です。
まとめ
アンカースクリューは、従来の矯正治療では困難だった症例にも対応可能で効果的に歯を動かすための治療法です。
治療の期間の短縮、抜歯を回避できる可能性、周囲の歯への影響の少なさなどのメリットを考慮してアンカースクリューを使用した矯正を検討している方は、まず専門の歯科医師との十分な相談を行い、最適な治療計画を立てましょう。
1. Mommaertsらによる2014年の研究では、歯列矯正のための骨アンカー(OBA)が絶対的な矯正アンカーとして信頼できることが分かりました。OBAの即時負荷が遅延負荷よりも失敗を増やすことはありませんでした。また、持続する痛みなどの要因のために、OBAの早期除去が考慮されました。(Mommaerts et al., 2014)
2. Feldmannらによる2007年の研究では、異なる矯正アンカーユニットの配置と小臼歯抜歯後の痛みの強さと不快感を比較しました。彼らは、onplantの外科的配置後の痛みの強さが、小臼歯抜歯後に経験した痛みと同程度であることを発見しました。これは、手順に関連する痛みがあるものの、他の一般的な歯科手術と比べて著しく多いわけではないことを示しています。(Feldmann et al., 2007)