小児矯正

小児矯正の急速拡大装置のメリット・デメリットとは?

小児矯正の急速拡大装置のメリット・デメリットとは?

急速拡大装置は、上顎の横幅を拡大するための固定式の矯正装置で、主に子供に用いられます。短期間で顎の横幅を拡げるのが特徴なので名前に急速という言葉が付いています。

急速拡大装置とは

急速拡大装置(Rapid Palatal Expander, RPE)は、上顎を広げるために使用される矯正装置です。小児期の骨の成長を利用し、上顎の骨を左右に広げることで、歯がきれいに並ぶスペースを確保します。

この装置が用いられる主なケース

  • 上顎が狭く、歯が並ぶスペースが足りない場合
  • 噛み合わせにズレがあり、下顎が前方に出てしまっている場合
  • 鼻の通りを改善し、呼吸をしやすくする目的

実は、この装置はお子さんの成長期にしか効果を発揮しません。そのため、適切な時期に使用することがとても大切なのです。

急速拡大装置主に上顎の骨を広げるためのもので、上顎全体の幅を広げることができます。

急速拡大装置

第1大臼歯と第1小臼歯にバンドで装着し、中央にある拡張ネジにピンを指して回すことで装置の横幅が広がります。

急速拡大装置

 

急速拡大装置

上顎は左右の骨が合わさって形成されており、中央には正中口蓋縫合と呼ばれる接合部があります。この部分を拡張することで上顎の骨を分離し、上顎全体の幅を広げることが可能です。

上顎が狭い方や交叉咬合を持つ方に特に有効で、患者さんの歯列の状況に応じて使用されます。

使用前後の比較

項目 使用前 使用後
上顎の幅 狭い 拡大
歯列のスペース 不足 十分
鼻呼吸のしやすさ 難しい 改善
顔の横幅 狭い 若干広くなる

対象年齢

これ上顎の正中口蓋縫合の部分を拡大することで上顎の横幅を拡げます。上顎の正中口蓋縫合が閉じる時期がおおよそ10歳前後、顎の成長が完了するのが15歳前後とされています。

そのため、上顎の横幅を拡げるのに適した年齢は、10歳から15歳の間に治療を行うと成長期に合わせて自然に上顎を拡張することができ、理想的な結果を得ることができます。

大人に対してはあまり使われることはありませんが、症例によっては使用する場合もあります。

メリット

上顎拡大後は歯の後戻りが少ない

顎を拡げてから歯を動かしますので、後戻りが起こる心配はほとんどありません。

抜歯矯正の必要がない

大人の矯正では抜歯矯正を行うことが多いのですが、急速拡大装置で上顎を拡げて歯が並ぶための十分なスペースを既に作っていますので、抜歯が必要になる程の不正咬合になることはありません。

上顎を拡げることで鼻腔が拡がり鼻通りが良くなる

上顎を拡げると同時に鼻腔も拡がるので、鼻呼吸しやすくなり、その結果呼吸が楽になります。

また、口呼吸から鼻呼吸へ改善できると、空気が鼻のフィルターを通ってから体内に入るため、風邪やアレルギーを起こしにくくなります。

デメリット

装置によって痛みや違和感がある

上顎の骨を拡げる際に痛みが起こります。装置をつけてから3~4日は痛みや違和感が出やすくなりますが、次第に慣れます。

装置によって発音がしづらくなる

装置自体がかなり大きいため、違和感によって発音がしづらくなることがあります。次第に慣れますが、早く慣れるために歌を歌ったり声を出して本を読んだりしましょう。

顔の形が変わる場合がある

上顎を拡げることで顔の横幅が僅かに広くなり、目や鼻の周辺の見た目が少し変化します。

メンテナンス方法

メンテナンス方法 説明
毎日の清掃 装置を優しくブラッシングして清潔を保つ
定期的な歯科健診 装置の状態を確認し、必要な調整を行う。顎が拡大するスピードが速いため、来院の頻度は歯科医師の指示に従う。
装置の緩み確認 緩みがないか日々チェックし、異常があれば早めに歯科医に相談

どのくらいの期間使用するの?

急速拡大装置は2~3週間程度で上顎がかなり広がりますが、その後骨がしっかりと固まってその状態を維持できるようになるまで装置をつけ続けます。使用期間としては通常は6ヶ月~1年程度となります。

使用の際の注意点

際に急速拡大装置を使用する際に、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

1. 装置の調整は慎重に

急速拡大装置は、親御さんがネジを回して拡大するタイプが一般的です。しかし、適切なペースを守らないと、以下のような問題が起こるかもしれません。

  • 急激に広げすぎると痛みが強くなる
  • 顎の骨や歯に過剰な負担がかかる
  • 上顎に隙間(正中離開)ができる

担当の矯正医の指示に従い、決められた回数・間隔で調整することが重要です。

2. 痛みが出ることもある

急速拡大装置を装着すると、歯が押される感覚があり、お子さんによっては「痛い」「違和感がある」と感じることがあります。特に、ネジを回した直後や装着初期には違和感が強くなることも。

対策として

  • 固い食べ物を避け、柔らかい食事を心がける
  • 初めてネジを回すタイミングを夜にして、寝ている間に痛みを感じにくくする
  • どうしても痛みが強い場合は、矯正医に相談する

痛みは一時的なもので、多くの場合、数日で慣れますのでご安心くださいね。

3. 食べかすが詰まりやすい

急速拡大装置は、上顎の中央部分に金属製のパーツがあるため、食べ物が引っかかりやすい特徴があります。そのため、しっかりとしたお口のケアが必要になります。

ケアのポイント

  • 歯磨きは丁寧に(特に装置の周りを意識する)
  • 洗口液を使うと効果的
  • 水でよくうがいをして食べかすを取り除く

特に、歯垢がたまりやすくなるので、虫歯や歯肉炎を防ぐためにも、親御さんがしっかりチェックしてあげることが大切です。

4. 発音に対する影響

急速拡大装置を装着すると、お子さんの話し方が少し変わることがあります。特に「サ行」「タ行」の発音がしにくくなり、舌足らずな話し方になることもあります。

しかし、これは一時的なもので、多くの場合、数週間で慣れていきます。慣れるためには、声に出して本を読む練習をするのもおすすめです。

親御さんがサポートできること

お子さんが矯正治療をスムーズに進めるためには、親御さんのサポートがとても大切です。
次のような点に気をつけながら、サポートしていきましょう。

  • 毎日のネジの調整を忘れずに・・適切な回数で調整することで、効果的に顎を広げることができます。
  • 食事に配慮する・・硬いものを避け、食事の工夫をしてあげると、お子さんの負担が軽減できます。
  • しっかりと歯磨きをサポート・・装置の周りに食べかすが残らないように、仕上げ磨きをするのも良いですね。
  • 発音の変化を温かく見守る・・慣れるまでの間、お子さんが話しづらさを感じても焦らず、励ましてあげましょう。

まとめ

歯のキャラクター

急速拡大装置は、上顎の成長を利用して歯列を広げるため、お子さんの将来の歯並びや噛み合わせを整えるのにとても効果的な装置です。
しかし、適切な調整やケアが必要で、間違った使い方をすると痛みや不快感が出ることもあります。

急速拡大装置を使用する際の注意点

  • 装置の調整は慎重に(急激に広げない)
  • 初期の痛みには対策を(食事やタイミングを工夫)
  • 食べかすが詰まりやすいのでしっかり歯磨き
  • 発音の変化は時間とともに改善
  • 親御さんのサポートが大切

お子さんが安心して矯正治療を続けられるよう、無理のないペースで進めていきましょう。
「これで本当に大丈夫かな?」と心配な時は、いつでも矯正歯科の先生に相談してみてくださいね。

急速拡大装置は、特に10歳から15歳の子供たちの小児矯正で、上顎の横幅を短期間で拡張し、不正咬合になる原因である「顎が小さい」という問題を改善することができます。

メリットとしては、上顎拡大後の歯の後戻りのリスクが少なく、抜歯矯正の必要がないこと、また鼻腔の拡大による呼吸の改善などがあげられます。

一方で、痛みや違和感、発音の困難、顔の形の変化などのデメリットも存在します。しかし、これらは一時的なもので、長期的な健康と美しい歯並びを実現するための一過程と考えられます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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