インビザライン

インビザラインでの治療が難しいケースはあるの?

インビザラインでの治療が難しいケースはあるの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

マウスピース矯正はワイヤー矯正とは全く異なった治療方法なので、治療の階梯やゴールについては、先生方の間でも様々な意見があります。

マウスピース型矯正装置のインビザラインはどんな不正咬合でも治療出来るのかどうかについてご説明します。

インビザラインで治療が難しいケースとは?

インビザラインでの治療が難しいのは以下のような場合です。

1. 重度の歯のねじれ(捻転)

歯が大きくねじれている場合、インビザラインのマウスピースだけでは十分に回転させるのが難しいことがあります。特に90度以上の捻転がある場合は、他の矯正装置が必要になることがあります。

2. 噛み合わせに大きな問題がある場合

顎が左右にずれていたり、開咬(前歯が閉じない)、過蓋咬合(上の前歯が下の前歯を覆い過ぎる)、深い噛み合わせなどで、重度の噛み合わせの問題がある場合、インビザラインだけでは十分に噛み合わせを改善することが出来ず、ワイヤー矯正を併用して治療が行われることがあります。

3. 歯の一部が骨に埋まっている場合

一部の歯が骨に埋まっている場合、歯を引っ張って骨から出さねばなりません。しかしインビザラインの力だけでは歯を引き出すことが難しいケースもあります。この場合、ワイヤー矯正に加えてゴムかけを行うことがあります。

4. 重度の歯の前突(出っ歯)

上の前歯が大きく前に出ている場合、インビザラインでは矯正が難しいことがあります。重度の出っ歯を引っ込めるためには、歯を大きく動かす必要があり、インビザラインで治療を行うと治療期間がかなり長くかかってしまうことがあります。また、骨格へのアプローチが必要な場合は、外科矯正が推奨されます。

5. 複雑な不正咬合

歯列全体にわたる複雑な問題(例:多くの歯が大きく重なり合っている、全体的な歯列のアーチが大きくずれている場合)では、インビザラインだけでは改善が不十分な場合があります。

6. 骨格性の問題

骨格的な要因(例:上下顎のサイズや位置の大きな不均衡)が原因で歯列不正が生じている場合、インビザラインだけでは矯正できないことがあります。このような場合は、外科的な矯正手術と組み合わせる必要があります。

7. 不適切な歯のサイズや形状

矮小歯があるなど、歯のサイズや形が不規則な場合、マウスピースが歯に正確にフィットしないことがあります。マウスピース矯正ではマウスピースが歯にフィットすることが絶対条件になりますので、インビザラインでの矯正治療が困難になることがあります。

8. インプラント、骨性癒着歯の場合

インプラントや骨性癒着歯(歯根が顎骨と癒着している)の場合は、歯の周りを保護する歯根膜がなくなっているため、インビザラインに限らず、矯正治療で歯を動かすことが出来ません。その場合は、動かない歯以外の歯を動かすことで、全体的な歯列のバランスをとることになります。

インビザラインは多くの歯列矯正ケースで効果的ですが、重度の歯列不正や骨格的な問題などの複雑なケースでは限界があります。こうしたケースでは、矯正担当医と相談し、最適な治療方法を選択することが重要です。他の矯正装置や外科的処置が必要になることも多いです。

インビザラインの治療計画と限界

インビザライン

インビザラインの治療計画

インビザラインの治療計画は、クリンチェックと呼ばれるソフトウェア上で設計します。クリンチェックでは患者さんの口腔内データをソフトに読み込ませ、治療終了までの歯の動きをアニメーションで表示させながら、担当医が変更を加えていき、最終的な治療計画が完成します。

リンチェックの限界

クリンチェックでは、理論上は全ての症例の治療が可能です。しかし、コンピューター上で歯を動かした理論上の治療計画と、患者さんの実際の歯の動きが一致しない例は多くあります。それは、実際にはすべての歯が同じスピードで動くわけではないからで、動きやすい歯と動きにくい歯が存在します。

インビザラインでの治療が難しいケースに関するQ&A

インビザラインの治療計画はどのように立てられますか?

インビザラインの治療計画は、クリンチェックというソフトウェアを使用して設計されます。このソフトウェアでは、患者の口腔内データを読み込み、歯の動きをアニメーションで表示しながら治療計画を立てます。しかし、理論上の計画と実際の歯の動きが一致しない場合が多々あります。特に、外科矯正が必要な骨格性の不正咬合の場合や、重度の不正咬合で抜歯を伴うケースでは、インビザラインだけでの治療が難しいとされます。

インビザラインで治療が困難な症例にはどのようなものがありますか?

インビザラインで治療が困難な症例には、前歯の咬み合わせが深い過蓋咬合、前歯が内側に倒れている舌側傾斜、重度の出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)などがあります。これらの症例では、骨格の問題や、大きな歯の移動が必要となるため、インビザラインのみでの治療が難しくなることがあります。

インビザラインファーストでの小児矯正が難しいケースとはどのような場合ですか?

インビザラインファーストは小児矯正専用の治療法ですが、歯が大きく捻じれている、埋伏歯がある、骨格を大きくする必要がある、大臼歯を大きく移動させる必要があるケースなどでは治療が難しいです。また、マウスピースを規定時間装着できない場合も治療が困難になります。

まとめ

インビザライン

インビザラインは一般的に、歯を大きく水平移動させたり、歯を上下方向に動かしたり、歯のねじれを治したりするのが苦手です。装置の種類を患者さんの不正咬合に合わせて選ぶことが、スムーズな矯正治療に繋がります。

インビザラインでの治療が難しいケースには、以下のようなものがあります。

1. 重度の不正咬合や深刻な混雑
Giancottiらの2006年の研究によると、重度の不正咬合や混雑を伴う症例では、インビザラインのみでの治療が困難で、固定装置の使用が必要になることがあります。特に、上顎第一前臼歯を抜歯する場合、スペース閉鎖の段階で適切な根の傾斜を得るために固定装置が必要になることが示されています[Giancotti, Greco, & Mampieri, 2006]

2. 技術の進化に伴う可能性の拡大
Kenji (2017)によると、初期のインビザライン治療では、重度の混雑や複雑な抜歯症例、開咬症例、下顎臼歯の遠心移動症例などが治療が難しいとされていました。しかし、アライナー素材、アタッチメント、新しい力のシステムの導入により、これらの症例に対する治療可能性が広がっています[Kenji, 2017]

これらの研究によると、インビザラインは初期には複雑な症例の治療には限界がありましたが、技術の進歩により、より難しい症例にも対応可能になってきています。それでもなお、重度の不正咬合や混雑の症例では、固定装置との併用が必要になることもあります。

 
この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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