
結婚式までに歯並びを整えたいけれど、あまり時間がないという方には、部分矯正がおすすめです。全体の歯を動かすと2年半~3年程度の期間がかかってしまうことが多いのですが、部分的に歯列を治すだけなら3~6ヶ月程度で歯並びがきれいになります。
目次
結婚式までに部分矯正は可能?

結婚が決まったタイミングで、歯並びをきれいにしたいと考える方は多くおられます。歯全体を動かす場合は2~3年の期間が必要ですが、前歯だけを動かすなら2~6ヶ月できれいに歯並びを治すことが可能です。
部分矯正は主に前歯だけの歯並びをきれいにする方法で、2~8本程度の歯に装置をつけて歯を動かします。
部分矯正が間に合うか判断するためのポイント

結婚式までに歯列を整えることが可能かどうかについて考慮すべきポイントをいくつかあげてみます。ただし、具体的な期間や結果については歯科医師との相談が必要です。
1. 矯正が必要な歯の状態かどうかの判断
動かす必要がある歯の数や状態によって期間が異なります。軽度の歯並びの問題であれば、短期間で治療が終わることもあります。
2. 治療方法の選択
従来のワイヤー矯正、透明なマウスピース矯正(例えばインビザライン)、裏側矯正(歯の裏側に装着するタイプ)など、方法によっても期間が異なります。
3. 治療開始のタイミング
歯を動かして歯列を整えるにはある程度の期間が必要で、すぐに結果が出るものではありません。結婚式の日程と開始のタイミングを考慮し、余裕を持って計画を立てることが重要です。
5. 継続的なケアと調整
治療中は定期的な調整が必要です。患者さんの来院予定についても結婚式の準備との兼ね合いを考慮する必要があります。
6. 期待値と現実
結婚式までにあまり日数がない場合、完璧な結果を期待するのではなく、結婚式までに達成可能なリアルな目標を設定することが大切です。
結婚式までの日数や患者さんの歯の状態によっては、完全にきれいな歯列にすることが間に合わない場合もあります。そのため、早めに歯科医師に相談し、実現可能なプランを立てることが重要です。
結婚式直前には装置を一旦外します

結婚式までに治療が終わっておられない方は、式の前に一度来院して頂き、装置を外します。マウスピース矯正の患者さんは、ご自身でマウスピースを付け外しするタイミングを決めることが出来ます。
装置を外してすぐは、歯並びが安定していませんので、せっかく整ってきた歯並びが後戻りを起こす可能性があります。後戻りさせないために、結婚式直前に装置を外した方にはリテーナー(保定装置)をお渡ししますので、治療を再開するまではリテーナーをご使用下さい。
結婚式後は治療または保定を再開します

結婚式当日に、一時的に装置を外された方は、式後に治療を再開します。
結婚式までに治療が完了している方は、リテーナー(保定装置)を歯に付けて頂きます。
装置を外す際の注意点
ワイヤー矯正の場合

結婚式当日までに治療が終わらなかった場合は、お式の数日前に歯からブラケットやワイヤーを一旦外します。結婚式が終わってからご都合の良い日に来院して頂き、ブラケット、ワイヤーを再度お口につけて治療を再開します。
但し、装置を外してからあまり日を開けない方が、歯列の後戻りが少なくなります。装置を外してから日数がかなり経ってしまって歯列の後戻りが大きい場合は、治療期間が少し伸びることになります。
※特別な日のためにワイヤー、ブラケットを一旦外す場合は、別途費用がかかります。
マウスピース矯正の場合

マウスピース矯正では、患者さん自身で装置の付け外しが出来ますが、あまり長く外していると歯列が後戻りを起こし、治療を再開する際に歯にはまらなくなってしまうというケースが実際にあります。
そのため、結婚式の期間中にマウスピースをどの位の時間外すか、事前に担当医と相談して決めておき、必ず守るようにしましょう。
部分矯正でどんな歯並びが治るの?
部分矯正は主に前歯2~8本だけを動かします。部分的な治療で可能なのは、軽い出っ歯や受け口、軽いガタガタ、すきっ歯などです。
重度の出っ歯や受け口、歯の重なりの大きい方は、歯全体を動かす方法になり、2~3年の期間がかかります。

部分矯正のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・治療期間が短い 歯列全体を治す場合に比べて期間が短くなる傾向があります。特定の問題に焦点を当てるため、全体を治すよりも早く結果を得ることができます。 ・コストが低い 動かす歯が8本程度に限定されているため、歯列全体を治す場合に比べてコストが低くなることが多いです。 ・見た目の改善に効果的 特に前歯など、目立つ部分のみの矯正には非常に効果的であり、見た目の大幅な改善を期待できます。 ・治療がシンプル 歯列全体を治す場合に比べて治療計画がシンプルであり、患者にとっても理解しやすいです。 |
・限定された改善しかできない ある特定の歯の問題に対処するため、全体的な咬み合わせや顔のバランスの問題など、他の問題を改善することはできません。 ・将来的に全体矯正が必要になる可能性がある 治療完了後に全体の咬み合わせの問題が明らかになることがあり、結果的に追加の治療が必要になることがあります。 ・歯や歯茎の健康問題を引き起こすリスク 動かす歯と動かさない歯の間で圧力の不均衡が生じる可能性があり、これが原因で歯や歯茎に健康問題を引き起こすリスクがあります。 ・理想的な結果を得られない場合がある 部分的な問題に焦点を当てるため、患者が期待する理想的な結果を得られない場合があります。特に、全体的なバランスを求める場合には不十分な場合があります。 |
装置はどれを使うの?
部分的な治療で使用できる装置は、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正の3種類から選べます。
ワイヤー矯正

歯にワイヤーとブラケットを付けて歯を動かしていきます。当院ではブラケットは目立たない白いセラミック製で、ワイヤーも白い樹脂を巻いたホワイトワイヤー(別途料金)にするとあまり目立ちません。
裏側矯正

歯の裏側にワイヤーとブラケットをつけます。表側から見ても殆ど装置が見えませんので、治療中であることを他人に知られたくない場合にお勧めです。
マウスピース矯正

プラスチック製の透明なマウスピースを7~10日毎に交換していくことで、歯を移動させていきます。マウスピースは食事と歯磨きの際には外すことが出来ます。1日20時間~22時間以上の装着が推奨されます。
結婚式当日はマウスピースを外して過ごすことが出来ます。患者さんのご都合の良いタイミングでマウスピースを再装着して、治療を再開することが出来ます。
治療終了後は保定期間に入ります

結婚式までに治療が終わった場合は、装置を歯から外すと同時に、保定期間に入ります。保定期間はせっかくきれいに整えた歯列が動いたり後戻りを起こしたりしないよう、リテーナー(保定装置)を歯に付けて頂きます。
リテーナーには様々な形がありますが、良く使われているのは透明なプラスチック製のマウスピース型のものです。昼間もつける場合と、夜間のみつける場合があります。前歯の裏側にワイヤーをレジンで貼り付ける固定式のタイプもあります。
保定期間は、装置を付けていた期間の2倍程度が目安ですが、リテーナーをどのくらいの頻度で付けるのかは、担当医の指示に従って下さい。
結婚式までに部分矯正は可能かに関するQ&A
最短の期間は、軽度の不正咬合の場合でも通常3~6ヶ月程度です。治療の必要性や個人の歯の状態によって異なります。
部分矯正を検討する際、以下のポイントを考慮するべきです。 ・矯正の必要性の判断 ・軽度の不正咬合であるかどうか ・結婚式までに歯並びがどの程度改善できるか
装置を一時的に外した場合、歯並びが安定しない可能性があります。この後戻りを防ぐために、リテーナー(保定装置)を提供し、治療再開までリテーナーを使用することが重要です。
まとめ

結婚式を控えておられる方にお勧めなのが部分矯正です。治療期間が短いため、結婚式に間に合わせられる可能性が高く、費用も抑えられます。
部分矯正では軽度の不正咬合しか治せませんので、歯並びを治すために抜歯が必要な場合は、別の方法でしか治せません。その場合は、結婚式の前に一時的に装置を外すなどの措置を行う必要がありますので、お式を控えておられる方は、早めに担当医にご相談ください。
結婚式までの短期間での部分矯正の可能性に関して、以下の2つの論文を参考に回答します。
1. Anらの研究では、薄いNiTiワイヤーを使用したマイナーな歯列矯正治療が短期間での治療成果をもたらし、アンカレッジ(支持体)への負荷を軽減することが示されました。この治療は、患者の協力を必要とせず、すぐに適用できるため、臨床的に有用であるとされています。これにより、短期間で前歯、小臼歯、大臼歯などの口腔内のさまざまな部位の矯正が可能になります。【An et al., 2022】
2. Dibartらの研究では、Piezocisionと呼ばれる最小限侵襲的な歯列矯正治療手法が紹介されています。この手法は、成人患者の矯正治療期間を短縮するために開発されたもので、マイクロインシジョンと選択的トンネリング、および超音波切開を組み合わせたものです。これにより、重度のマロクルージョン(咬合異常)の迅速な訂正が可能となり、従来の切開手術に伴うトラウマのリスクを軽減します。【Dibart et al., 2009】
これらの研究に基づくと、結婚式までの短期間での部分矯正は可能であり、特に軽度の矯正ニーズに対しては効果的な治療方法が存在すると言えます。ただし、個々の症例に適した治療計画の策定と専門家の適切な評価が必要です。