表側矯正と裏側矯正は、ともに歯1本1本にブラケットという小さな装置を付けて、ブラケットにワイヤーを通して引っ張り、歯を動かしていきます。
装置を歯の表に付けるのが表側矯正、歯の裏側に付けるのが裏側矯正ですが、歯の表に付けるのと裏に付けるのでは、どのような違いがあるのかについて比較してご説明します。
表側矯正と裏側矯正の違い
様々な面で比較してご説明します。
- 見た目の違い
- 費用の違い
- 治療期間の違い
- 治療が可能な症例の違い
- 仕上がりの違い
- 治療中の痛みの違い
- 発音のしにくさの違い
- 食事のしにくさの違い
- 虫歯のなりやすさの違い
1. 見た目の違い
大きな違いとしては、歯を動かすためのブラケットという装置を、歯の表側につける(表側矯正)か裏側につける(裏側矯正)かの違いです。
治療中に他人から見えにくい装置をご希望の方におすすめなのが裏側矯正ですが、表側の場合でも、白いブラケットと白いワイヤーを使えば、それほど目立つことはありません。
- 表側矯正・・歯の表側に装置つけるワイヤー矯正のことをいいます。目立つことを心配される方が多いのですが、当院では目立ちにくい白いセラミックのブラケットと白い樹脂を巻いたホワイトワイヤーを使用することが出来ます。(ホワイトワイヤーは別途料金)
- 裏側矯正・・歯の裏側に装置を付けるので他人から見えにくく、目立たない装置です。近くで見ると、大きな口を開けた場合には見えますが、見た目を気にする程のものではありません。
2. 費用の違い
- 表側矯正・・当院のワイヤー矯正の費用は、裏側矯正やマウスピース矯正と比べるとお安い値段設定になっています。ホワイトワイヤーを使用すると追加の金額がかかりますが、それでも他の矯正装置の費用の総額よりはお安くなります。
- 裏側矯正・・当院ではオーダーメイドのインコグニトというドイツ製の装置を使用しますので、費用はやや高額になります。
3. 治療期間の違い
表側、裏側の装置によっての治療期間の大きな違いはなく、抜歯矯正を行った場合、1年半~2年半程度かかります。
不正咬合の状態によっては裏側矯正の方がやや早く終わる場合もあります。
4. 治療が可能な症例の違い
表側矯正、裏側矯正共に、殆ど全ての不正咬合に適用することが可能です。
5. 矯正後の仕上がりの違い
- 表側矯正・・歯の動き方の調整がしやすいため、経験と技術力のある歯科医師であれば、最終的にきれいな仕上がりにすることが可能です。
- 裏側矯正・・インコグニトのワイヤーはコンピューター制御でロボットが曲げたものが届きますので、治療計画通りのきれいな仕上がりにすることが可能です。最終的な調整のためには、表側と同様に歯科医師の経験や技術力が必要になりますが、表側よりも更に難易度の高い調整になります。
6.治療中の痛みの違い
ワイヤーとブラケットを使用する場合、治療を始めてからは歯が動く痛みを感じますが、一週間程度で慣れる方が殆どです。その後はワイヤーの交換や調整を行った時に1~3日程度痛みを感じることがあります。
7. 発音のしにくさの違い
- 表側矯正・・発音には殆ど影響がありません。
- 裏側矯正・・装置によって舌の動きが制限されるため、前歯の裏に舌を当てて発音する「サ行」、「タ行」、「ラ行」などの発音がしにくくなりますので、少し発音する為の練習が必要になります。そのため、アナウンサーや教師、セミナー講師、営業、コールセンター等の喋る必要がある仕事の方には適しません。
8. 食事のしやすさの違い
- 表側矯正・・初めて装置をつけてからは歯が動く痛みや違和感で硬いものが食べにくくなりますが、1ヶ月程度で慣れます。極端に硬いものは装置が壊れることがありますので、なるべく柔らかいものを食べましょう。
- 裏側矯正・・初めて装置をつけてからは歯が動く痛みや違和感で硬いものも柔らかいものも食べにくくなりますが、1ヶ月程度で慣れます。極端に硬いものは装置が壊れることがありますので、なるべく柔らかいものを食べましょう。
9. 虫歯のなりやすさの違い
- 表側矯正・・ブラケットとワイヤーに食べ物が挟まったり、歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れが落ちにくいことがあります。その場合、虫歯や歯周病になりやすくなります。
- 裏側矯正・・歯磨きの時に装置が見えにくい(上の歯の装置は殆ど見えない)ので、小さなデンタルミラーを使うなど、歯磨きに工夫と慣れが必要です。歯の裏側は唾液で常に現れていますので、虫歯のリスクはそれほど高くありません。
表側矯正と裏側矯正の違いに関するQ&A
表側矯正と裏側矯正の主要な違いは、装置(ブラケットとワイヤー)を歯の表側に付けるか裏側に付けるかです。表側矯正は歯の表に、裏側矯正は歯の裏側にブラケットとワイヤーを取り付けます。
表側矯正は一般的に裏側矯正よりも費用が安く、さらにホワイトワイヤーを使用することで目立たなくすることが出来ます。一方、裏側矯正は高額になりがちで、当院では主にオーダーメイドのインコグニト装置を使用します。
両方の矯正方法で治療中に痛みを感じることがありますが、通常は1週間程度で慣れます。裏側矯正の場合、発音に制限があるため、特定の音(サ行、タ行、ラ行など)の発音が難しいことがあります。食事に関して、初めは硬いものが食べにくくなりますが、慣れると柔らかいものを選ぶことがおすすめです。虫歯のリスクは、表側矯正の方が高くなることがありますが、裏側矯正の場合は歯磨きに工夫と慣れが必要です。
まとめ
表側矯正と裏側矯正の違いについてご説明しました。裏側矯正の場合、他人から見えにくいため見た目は気にならないのですが、喋りにくいというデメリットがありますので、ご注意ください。
不正咬合の種類によっては推奨されない装置もありますので、担当医と良く話し合ってお決めください。
表側矯正(ラビアルオーソドンティクス)と裏側矯正(リンガルオーソドンティクス)は、矯正装置の装着位置の違いにより、異なる特性を持ちます。
1. 裏側矯正の特徴 裏側矯正は、口腔内で装置が完全に見えないという利点があります。裏側矯正では、ミニインプラントによるアンカー制御、間接接着、およびバイオメカニクスがワイヤー矯正(ラビアル)とは全く異なります。裏側矯正のコンセプトは、審美的な要求に応えるための選択肢として人気があります。【Shetty, Shetty, & Sarje, 2020】
2. 表側矯正と裏側矯正の効果の比較 大人の矯正患者を対象に、表側矯正と裏側矯正の効果を比較した研究では、両者はPeer Assessment Rating(PAR)指数において類似した減少を示しました。つまり、治療後のPARスコアにおいて、表側矯正と裏側矯正の間に有意な差はありませんでした。【Ata-Ali et al., 2019】
これらの研究から、裏側矯正は目立たない治療法としての利点があり、表側矯正と比較しても治療の有効性には大きな違いはないことが分かります。ただし、裏側矯正はアンカーでの制御やバイオメカニクスの面で表側矯正とは異なるアプローチが必要です。