部分矯正

前歯の部分矯正が向いている人の歯並びとは?

前歯の部分矯正が向いている人の歯並びは?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

前歯だけ矯正できる人ってどんな人?

「前歯だけ、ちょこっと直したいだけなんだけど…」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?

実は、“部分矯正”という前歯だけを整える矯正法が存在します。
でも気になるのは、「自分の歯並びが部分矯正で本当に治るのか?」という点。

  • 全体矯正と比べて期間もコストも抑えられるって聞いたけど、本当にそれで済む?
  • なんとなく気になるすきっ歯や、ちょっとだけズレた前歯も対象になる?

この記事では、部分矯正が向いている人の特徴や、できる症例・できない症例を具体的に紹介します。
自分が当てはまるかどうか、チェックしながら読んでみてくださいね!

まず知っておきたい!部分矯正の特徴とは?

部分矯正とは、主に前歯(2~8本程度)だけを動かして整える矯正治療。
全体の噛み合わせや奥歯の移動を必要としない症例に向いています。
部分矯正の代表的なメリット

 期間が短い(約3〜12か月)

 費用が比較的安い

 目立ちにくい装置(マウスピース矯正など)でも対応しやすい

 ライフスタイルを大きく変えずに取り入れやすい

部分矯正が向いている人とは?

軽度の不正咬合で、前歯の見た目だけを整えたい人が対象です。

向いている人の特徴はこんな感じ!

前歯のちょっとしたガタつきが気になる

すきっ歯や軽い出っ歯を直したい

昔矯正したけど、少し後戻りしてきた

奥歯の噛み合わせは問題ない

矯正期間や費用をコンパクトにしたい

逆に、重度の歯並びのズレや骨格的な問題があると、部分矯正では対応が難しくなります。

向いている人の特徴

条件 詳細
歯並びのズレが軽度 前歯にわずかなすき間やねじれがある程度
奥歯のかみ合わせに問題がない 前歯だけの調整で済む症例
治療の目的が「見た目の改善」 機能面の大きな問題がない
スペースが確保できる 歯を動かす余地がある or IPRで対応可
治療期間・費用を抑えたい 短期間・低コスト重視の人にぴったり

部分矯正できるケース

以下のようなケースでは、前歯の一部を軽く動かすだけでキレイな歯並びが実現できることが多いです◎

軽い出っ歯

上顎前突(出っ歯)出っ歯=全部ダメ、じゃない!
出っ歯にも色んなタイプがあり、前歯の角度だけの問題であれば、部分矯正で改善できることもあります。

 部分矯正で治るパターン

  • 上の前歯が少し前傾している
  • 骨格に異常がない(口元の突出がない)
  • 歯の大きさや顎のバランスが整っている

 難しいパターン

  • 骨格性の出っ歯(口ゴボ)
  • 上下の顎のバランスが崩れている

ポイント:

  • 前歯の傾きだけで見た目が出っ歯っぽくなっている場合は、歯の向きを整えることで改善可能。
  • ただし、口元全体が前に出ている「口ゴボ」タイプは部分矯正では難しいので注意!

軽度の叢生(前歯のガタガタ)

叢生(八重歯)前歯がほんの少し重なっている程度なら、IPR(ディスキング)でスペースを作って歯を並べることが可能です。

 部分矯正で治るパターン

  • 重なりが1〜2mm程度
  • 歯の形や大きさが極端でない
  • 奥歯の噛み合わせが良好

 難しいパターン

  • 八重歯が大きく飛び出ている
  • 歯の移動に十分なスペースがない
  • ガタつきが3mm以上

ポイント:

  • 前歯同士が少し重なっている程度の軽い叢生なら、部分矯正で対応できます。
  • がっつり八重歯になってるときは全体矯正が必要になることも。

すきっ歯(空隙歯列)

空隙歯列(すきっ歯)

前歯にすき間がある場合は、部分矯正で見た目の改善がしやすい症例のひとつです。
すきっ歯の原因には以下のようなものがあります。

  • 歯の本数が少ない(先天性欠如)
  • 歯のサイズが小さい
  • 舌癖や咀嚼習慣などによる影響

部分矯正だけで改善が難しい場合は、レジン充填やセラミックによる補綴的アプローチを併用することもあります。

ポイント:

  • 前歯のすき間が気になる方には、かなり効果的。
  • ただし、歯の本数が少ない先天性のケースなどは、見た目以上に治療の計画が必要なことも。

前歯が1本だけねじれている

1本だけ明らかに方向がズレている場合、「ちょっとそれだけ直したい」という方、意外と多いです。

歯のサイズが小さく、スペースに余裕がある
→◎部分矯正が有効

歯が大きくねじれている/傾斜角度が強い
→△ スペースの確保が必要・全体矯正に移行することも

ポイント:

  • 1本だけ向きがズレている場合は、スペースさえ確保できれば部分矯正でキレイに整います。
  • 角度が大きすぎる場合やスペースが足りないと、ちょっと難易度アップ。

過去の矯正治療からの後戻り

「昔やった矯正、今になってちょっと戻ってきたかも…」という場合も、部分矯正で整え直すことが可能なことが多いです!

よくある原因

  • リテーナーの装着をサボってしまった
  • 親知らずが歯列を押してきた
  • 舌癖や噛み癖が残っていた

※後戻りでも「噛み合わせ全体がズレてきた」などの場合は、再度全体矯正になることもあります。

→△ スペースの確保が必要・全体矯正に移行することも

ポイント:

  • 「昔、矯正したけどリテーナーをサボってたら…」なんてパターン、多いです。
    後戻りが軽度なら、部分矯正だけで再び美しい前歯に戻せることが多いです!

部分矯正では難しいケース

どんな症例でも部分矯正でOKというわけではありません。 以下のようなケースでは、全体矯正や外科的処置が必要になることがあります。

部分矯正では治らない例

骨格性の不正咬合(出っ歯・受け口)

  • 顎が前に出ている(下顎前突)
  • 顎のサイズや位置に明らかなズレがある
  • 顎の成長が影響している

→これらは歯の位置だけを動かしても根本的な解決にならないため、外科矯正や外科的処置と組み合わせた治療が検討されます。

ポイント:

  • 骨の成長や上下の顎のバランスに由来する場合は、歯の位置だけを動かしても限界があります。
  • 外科矯正など、別の治療が必要なことも。

重度の叢生や出っ歯

  • 歯が大きく重なっている
  • 歯列に対して顎のスペースが明らかに足りない
  • 八重歯や二列歯になっている

→抜歯や大きな歯の移動が必要になるため、部分矯正では対応が難しいです。

ポイント:

  • 歯の重なりが大きすぎたり、出っ歯の角度がきついときは、歯を並べるスペースが足りないため、抜歯を伴う全体矯正が必要になることがほとんど。

 奥歯のかみ合わせに問題がある

  • 奥歯のズレがある
  • 咬合平面が傾いている
  • 顎関節の異常や違和感がある

→噛み合わせ全体を整える必要があり、部分的な治療では限界があります。

ポイント:

  • 部分矯正は前歯しか動かせないので、奥歯のズレや咬み合わせの問題には対応できません。
  • 顎関節症や食いしばりといった噛み合わせの症状もある場合は、全体矯正で対応を。

部分矯正できるかどうかを見極めるポイント

以下の項目に多く当てはまる人は、部分矯正が向いているかも!

前歯のズレが軽度で、1~2本だけ気になる

奥歯のかみ合わせは問題ない

歯を動かすためのスペースがありそう(すきっ歯 or わずかなガタつき)

矯正期間は短くしたい(半年~1年くらい希望)

見た目を整えたいだけで、機能面には大きな不満がない

ただし…見た目だけじゃ判断がつきにくいのが矯正の世界。
最終的には歯科医師による診断が超重要です!

迷ったら、まずは診断を!

部分矯正は、費用や期間を抑えて前歯だけを整えられる、スマートな選択肢。
でも、できるかどうかは「歯並びの状態」「スペースの有無」「噛み合わせの安定性」など、いろんな条件によって決まります。

自分では「軽い出っ歯かも」と思っていても、実は骨格の影響が大きかった…なんてことも。

だからこそ、気になるならまずは矯正歯科で相談を!
「全体矯正しか無理かな…」と諦める前に、一度診てもらって可能性を探ってみてくださいね。

まとめ

歯のキャラクター

前歯の部分矯正に向いている歯並びについてご説明しました。部分矯正で治療可能な歯並びは、ごく軽度の不正咬合に限られます。それは、歯を動かすためのスペースを、抜歯ではなく前歯の側面を削ることで作るので、大きなスペースが得られないためです。治療期間が短く費用も安いというメリットがあるのですが、部分矯正で可能かどうかは担当医の判断になります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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