出っ歯の原因は様々ですが、そのうちのいくつかは子供時代の癖でなってしまったということがあります。また、遺伝や顎の発育の仕方によって出っ歯になってしまうこともあります。どのような癖がある場合になりやすいのかについてご説明します。
出っ歯になりやすい子供の癖とは?
1. 指しゃぶりの癖
長時間指しゃぶりをする癖がある子供は、指を口で吸う力で上の前歯が前に押されて前突になってしまうことがあります。3歳以降も長時間指しゃぶりをしている場合は、出っ歯になりやすいです。
指しゃぶりの癖がある場合は、矯正治療で歯並びを治したとしても、出っ歯の原因である指しゃぶりの癖が治っていないため、また出っ歯になってしまう場合があります。
2. 舌で前歯の裏側を押す癖
舌で前歯の裏を押し続ける癖がある場合も、指しゃぶりと同じように出っ歯を引き起こす可能性があります。癖を治さない限り、矯正治療で歯並びを治したとしても、また前歯が前突してくる場合があります。
舌の正しい位置はスポットと呼ばれ、前歯の歯茎のやや内側で、舌は歯に触れません。無意識の状態でも舌が正しい位置にあるように、訓練しましょう。
3. 爪を噛む癖
指しゃぶりをやめた後、爪を噛むようになる子供がいます。子供だけでなく大人にも爪を噛む癖がある場合がありますが、出っ歯になる(受け口になる場合もある)、前歯の先端が擦り減るなどの悪影響があるため、癖をやめるようにしましょう。
4. 舌を前に突き出す癖
舌を前に突き出す癖がある場合は、出っ歯になりやすいと共に、奥歯を噛んだ時に前歯の上下が開いてしまう「開咬」や、噛み合わせがねじれている「交叉咬合」にもなりやすく、歯並びを乱す原因になります。
出っ歯になるその他の原因は?
出っ歯になる原因はいくつかありますが、子供時代の癖以外の原因を4つご説明します。
- 前歯が前に突き出している
- 上顎の過成長による
- 上の前歯が出ていて下顎が引っ込んでいる
- 親からの遺伝
1.前歯が前に突き出している
前歯の角度が前方に突き出しているように傾いているために出っ歯になっているものです。歯列矯正で歯の角度を変えることで改善します。
2.上顎の過成長による
上顎が下顎と比べて大きく成長しており、上顎の骨格から前に出ていて出っ歯になっているケースです。歯の向きを変えただけでは、口元の突出感がなくなりませんので、外科手術を行うことで口元を下げることが出来ます。
3.上の前歯が出ていて下顎が引っ込んでいる
日本人は下顎が十分に成長しておらず、上顎に比べて下顎が引っ込んでいる方が多く、相対的に前歯が前に出て出っ歯に見えるタイプの方がおられます。
大人の方の場合は、下顎を前に移動させる外科手術を行うことで、上顎と下顎のバランスを取って、出っ歯に見えないようにします。
4.親からの遺伝
親が出っ歯の場合は、子供に遺伝することがあります。両親のどちらかが前歯の前突の特徴がある場合は、子供が成長期のうちに矯正で出っ歯を治すことをお勧めします。小児矯正の場合は、成長を利用して矯正治療が行えるため、顎を縦横に拡大することが可能です。
出っ歯とは?
出っ歯は上の前歯が歯列から前に飛び出している状態のことをいい、上顎前突とも呼ばれます。
特徴としては、横から見た時に下の歯の先端が上の歯の裏側に当たっていない状態で、口が閉まりにくいために口呼吸になっている方もおられます。
また、上の歯が前に出ていなくても、下顎が発達していなくて引っ込んでいるために、相対的に前歯が出ているように見える方もおられます。
出っ歯の原因は子供の時の癖なのかに関するQ&A
子供の指しゃぶりは、長時間指を口で吸うことにより、上の前歯が前に押されて出っ歯になる原因となります。これは指しゃぶりによる力学的な圧力が歯にかかり、歯列が変形するためです。
爪を噛む癖は、歯並びに悪影響を与える可能性があります。これにより前歯の先端が擦り減り、歯列のバランスが崩れたり、受け口になる場合もあります。
舌を前に突き出す癖は、出っ歯の原因となる可能性があります。この癖があると、奥歯を噛む際に前歯の上下が開いて開咬になりやすく、歯の噛み合わせに問題が生じるリスクがあります。
まとめ
子供の時の癖が原因で出っ歯になる方が一定数おられますので、どのような癖が前突に繋がるかについてご説明しました。また、癖以外の出っ歯の原因も様々あります。出っ歯に気づいたら、出来るだけ小児矯正での早めの治療をおすすめします。
出っ歯(過蓋咬合)の原因が子供の時の癖にあるかどうかについて、以下の論文を参考に回答します。
1. Moimazらの研究では、母子ペア80組を妊娠初期から30ヶ月後まで追跡し、吸啜癖、夜間の口呼吸、これらの因子が不正咬合に与える影響について検討しました。この研究では、ほぼ70%の子供が何らかの形の不正咬合を持っており、吸啜癖(指吸い、おしゃぶり吸い)が過蓋咬合および開咬と関連していることが分かりました。また、夜間の口呼吸も後ろ歯交叉咬合と関連していることが明らかになりました。【Moimaz et al., 2014】
2. Nadaらの研究では、不正な口の癖と乳歯の永続化が、永久歯の前歯の位置異常やAngleクラスIタイプ1の不正咬合を引き起こす可能性について検討されました。この研究は、取り外し可能な矯正装置を使用して治療を行った結果を分析し、歯列弓幅、過蓋咬合距離、過蓋咬合の違いを示しました。治療前後での歯列弓幅、過蓋咬合距離、過蓋咬合の変化はわずかであり、複数の要因によるものとされています。【Nada et al., 2017】
これらの研究から、子供の時の癖、特に吸啜癖や夜間の口呼吸が出っ歯(過蓋咬合)の原因となる可能性が示唆されています。これらの癖は、歯列の位置異常や咬合の問題を引き起こす要因となり得るため、早期にこれらの癖を改善することが重要です。