
部分矯正は主に前歯を動かして歯並びの一部のみを整える治療で、短期間で治療が終了するのが特徴です。前歯の部分的な治療で短期間で歯を動かせることについてご説明します。
目次
部分矯正の基本知識
部分矯正は、歯列全体ではなく、前歯など特定の歯並びを整えるための矯正治療です。特に、
- 前歯の軽度な歯並びの乱れ
- 軽いすきっ歯
- 軽度のねじれや傾き
などを改善するのに適しています。
一般的な全体矯正と比べて、治療範囲が限られているため、治療期間が短く、費用も抑えられるのが特徴です。
部分矯正の対象になるケース
部分矯正は、特に前歯の軽い歯並びの乱れを持つ方や、前歯の一部の歯並びだけを限定的に改善したい方に適しています。
- 前歯のわずかな重なり
- 既に矯正を受けたが、一部の歯が再び動いてしまった
- 特定の歯のみを速やかに治療したい
部分矯正の方法と種類
部分矯正には、主に以下の3つの方法があります。
1. マウスピース矯正
透明なプラスチック製のマウスピースを使用して、目立たずに矯正が可能です。取り外し可能なため、食事や歯磨きの際の不便がありません。歯をほんの少しずつ動かすため、他の装置と比べて痛みが少ない傾向があります。(※当院では主にインビザラインという装置を使用します)
2. ワイヤー矯正
ブラケットという小さな装置を歯に接着し、ワイヤーでつなぐことによって矯正力をかけて歯を動かします。金属製のブラケットは目立ちますが、セラミック製のブラケットなら、目立ちません。ホワイトワイヤーを選ぶことも出来ます。(※当院ではホワイトワイヤーは別途費用が必要)
3. 裏側矯正
ブラケットを歯の裏側に接着してワイヤーでつなぎます。(※当院では主にインコグニトという名前のオーダーメイドの装置を使用します)
部分矯正で前歯はどのくらいの期間で動くの?
「短期間で済む」と聞くと、数週間で終わると思われるかもしれません。しかし、実際には、
- 3か月〜6か月程度が目安
- ケースによっては1年以内で完了することも
というのが一般的です。
部分矯正は全体矯正に比べて比較的短期間で終わるものの、歯を動かすスピードには限界があります。急激に動かしすぎると、歯根のダメージや歯茎への負担が大きくなってしまうため、慎重に調整しながら進める必要があるのです。
矯正期間とその短縮の理由
部分矯正の魅力の一つは、期間の短さです。実際に治療で動かして行く歯の数が少ないため、歯全体を動かす場合に比べて期間を大幅に短縮できます。多くの場合、数ヶ月から1年程度で治療が完了し、保定期間に入ることが出来ます。
前歯は奥歯よりも早く動くの?
前歯と奥歯では歯の形が全く違っており、歯の根の数も違います。前歯の歯根は1本だけですが、奥歯の歯根は2~4本あります。歯根の数の違いが、歯の動きやすさの違いに関係しています。
前歯の方が奥歯と比べて動きやすいので、主に前歯を動かす部分矯正の治療期間は、奥歯を動かす場合と比べて短期間になります。
前歯だけの部分矯正の治療期間は?
主に前歯の気になる部分だけを動かして歯並びを改善する場合は歯を大きく動かすことがないため、歯全体を動かす場合と比べると治療期間が短くなります。
早い方で3ヶ月程度、長い方でも1年程度で治療が可能です。
部分矯正の中でも期間が違う理由は、元々の歯並びが比較的整っているかどうかによります。僅かなすきっ歯など、ほんのすこし歯を動かすだけの場合は、治療期間が短くなりますが、歯の重なりがある場合は、少し期間が長くなります。
部分矯正が向いているケースとは?
部分矯正が適しているのは、以下のようなケースです。
- 前歯の軽度な歯並びの乱れ:わずかなズレやガタつきなら、部分矯正で対応可能
- すきっ歯:歯と歯の間に小さな隙間がある場合
- 軽い傾きやねじれ:歯が少し傾いている程度なら短期間で調整できる
- 過去に矯正治療を受けたが、後戻りしてしまったケース
逆に、
- かみ合わせの問題がある
- 重度の歯列不正がある
- 抜歯が必要なケース
といった場合は、部分矯正ではなく全体矯正が必要になることが多いです。
部分矯正で思ったほど前歯が動かない場合も?
「部分矯正を始めたのに、思ったより歯が動かない…」
そんなふうに感じる方もいらっしゃるかもしれません。これは、
- 歯の移動には個人差がある(骨の硬さや歯根の状態によって動きやすさが異なる)
- 矯正装置の装着時間やメンテナンスが重要(装置をしっかり装着しないと、計画通りに動かないことも)
- 歯並びの状態によっては予想より時間がかかることがある
といった理由が関係しています。
もし治療が計画通り進んでいないと感じたら、歯科医に相談してみましょう。微調整や治療方法の変更で改善できることもあります。
【動画】お手軽にできる部分矯正とは?
歯はどのくらいの力で動くの?
矯正治療では、歯に力をかけることで位置を動かしていきますが、強い力をかければ早く動くというものではありません。歯が動く時には、歯を支えている骨が溶けたり、新しい骨が出来たりといったことが起こっていますので、大きな力をかけ過ぎてはいけません。
前歯を動かすためには、100g~150g程度の力をかけます。そして、奥歯の場合は、200g~300gの力をかけるのが歯の移動のためには良いとされ、最適矯正力と呼ばれます。
歯が動きやすい人と動きにくい人ってあるの?
「矯正治療を始めたけれど、思ったより歯が動かない…」そんなふうに感じたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、歯の動きやすさには個人差があり、「スムーズに動く人」と「なかなか動かない人」がいるのです。
歯が動く仕組みとは?
矯正治療では、ワイヤーやマウスピースなどを使って歯に力をかけます。この力によって、
- 歯の周囲の骨(歯槽骨)が吸収される
- 歯が移動するスペースができる
- 移動後のスペースに新しい骨が作られる(骨の再生)
というプロセスを繰り返しながら歯を動かしていきます。
つまり、歯が動くためには「骨の吸収と再生」がスムーズに進むことが重要なのです。
歯が動きやすい人の特徴
「歯が動きやすい人」には、次のような特徴があります。
- 若い人(特に10代)・・成長期で骨の代謝が活発なため、歯が移動しやすい
- 歯槽骨が柔らかい人・・骨の密度が低いと、歯の移動がスムーズになる
- 歯根が適度に短めな人・・長すぎる歯根は動きにくいことがある
- 歯の周りの歯肉や組織が健康な人・・歯周病がなく、歯茎の状態が良好だとスムーズに動く
- 適切な力がかかっている人・・矯正装置をしっかり使い、計画通りに力がかかることで効果が出やすい
歯が動きにくい人の特徴
反対に、歯がなかなか動かない人の特徴もあります。
- 大人(特に30代以降)・・骨の代謝が落ち、歯の移動が遅くなる
- 歯槽骨が硬い人・・骨の密度が高いと、歯が動きにくくなる
- 歯根が長い人・・歯がしっかりと固定されており、動きにくい
- 歯茎が炎症を起こしている人・・歯周病があると、炎症で骨の吸収がうまくいかず、歯が動きにくい
- 矯正装置の使用時間が短い人(マウスピース矯正の場合)・・インビザラインなどのマウスピース矯正は、1日22時間以上装着しないと計画通りに歯が動かない
もっとも歯が動きやすいのは、成長期の子供です。歯の周囲の組織が柔らかいため、少し力をかけるだけで歯が動いてしまいます。
子供の時期に指しゃぶりや舌で歯を押す癖があると、出っ歯になりやすくなります。子供の歯は動きやすいため、ちょっとした癖で悪くなってしまう代わりに、矯正すれば治るのも早いです。
大人の場合でも、健康で新陳代謝が活発な方は、骨が吸収されたり新しく出来たりするサイクルが早くなり、歯が動きやすいといえます。
歯が動きにくい人でもスムーズに矯正するには?
「自分は歯が動きにくいかも…」と不安に思われた方も、ご安心くださいね。工夫次第でスムーズに矯正を進めることができます。
1. 矯正開始前に歯茎の健康を整える
- 歯周病がある場合は、まず治療してから矯正を始める
- 歯茎が健康な状態でないと、矯正の効果が十分に出にくい
2. 矯正装置を正しく使用する
- ワイヤー矯正の場合は、指示された通りにゴムかけをする
- マウスピース矯正なら、1日22時間以上の装着を守る
3. 骨の代謝を促す
- 適度な運動やバランスの取れた食事を心がける
- ビタミンDやカルシウムを摂取することで、骨の代謝をサポート
4. 歯科医院でのチェックを欠かさない
-
定期的に診てもらい、必要なら矯正計画の微調整をしてもらう
まとめ

部分矯正は、軽度な前歯の歯並びの乱れを短期間で改善できる治療法です。一般的な治療期間は3か月〜6か月程度で、場合によっては1年以内に完了することもあります。
ただし、
- すべての症例に適用できるわけではない
- かみ合わせや歯の状態によっては全体矯正が必要なことも
- 矯正装置の管理や個人の歯の状態によって、動き方に個人差がある
といった点には注意が必要です。
「部分矯正で前歯を整えたい」とお考えの方は、まず歯科医院でご自身の歯の状態を診てもらうことをおすすめします。
「短期間で前歯をきれいにしたい」と思われる方は、一度ご相談されてみてはいかがでしょうか?
歯全体を動かす場合は2~3年程度かかるのに対して、部分的に動かす場合は3ヶ月~1年程度で治療を終えることが出来ます。これは、部分矯正では主に前歯を動かし、前歯は奥歯よりも動きやすいということと、そもそも部分的な治療では軽度の不正咬合しか治せないという理由によります。
部分的な治療で可能かどうかは、歯科医院で矯正カウンセリングを受けて担当医に診断してもらいましょう。