
歯並びの治療の中でも、部分矯正は特定の歯や場所の歯並びの治療に特化した治療法です。部分的な治療を検討している方にとって、装置はワイヤー、ブラケットとマウスピースのどちらが適しているかは重要なポイントです。それぞれの特徴を比較してご説明します。
前歯の部分矯正の装置はワイヤー?マウスピース?

前歯の歯並びの治療は、下記のような装置を歯に付けて行います。
ワイヤー矯正での部分矯正
ワイヤー矯正は、ブラケットという小さな装置を歯の表面に装着し、ワイヤーを通して歯を動かす方法です。
部分矯正でもよく採用される方法で、特に「歯の移動量が大きい場合」や「細かい調整が必要なケース」には適しています。
ワイヤー矯正のメリット
- 適用範囲が広い → 比較的難しい歯の動きにも対応しやすい。
- 治療期間が短く済むことが多い → 効率的に歯を動かせるため、部分矯正でも早く終わるケースがある。
- 細かい調整が可能 → 医師の手によってワイヤーを調整できるので、より正確な位置へと誘導しやすい。
ワイヤー矯正のデメリット
- 目立ちやすい → 表側矯正の場合、金属のワイヤーやブラケットが見えてしまう。
- 違和感があることも → 口の中にワイヤーが入ることで、最初は痛みや違和感を感じる場合がある。
- 食事や歯磨きがしにくい → ワイヤーが邪魔になり、食べ物が詰まりやすいことがある。
歯の表側にブラケットという小さな装置を貼り付け、ワイヤーを通します。ワイヤーをギュッと絞ることで歯に力をかけて歯を動かしていきます。八重歯や重度のガタガタなど、歯を大きく動かさなければならない場合に効率よく歯を動かせます。
部分矯正の場合は2~8本の歯を動かしますので、基本的に動かす歯にだけブラケットとワイヤーを付けます。
歯の裏側にブラケットとワイヤーをつける場合は、裏側矯正と呼ばれます。
マウスピース型装置(インビザライン)での部分矯正

マウスピース矯正は、透明なマウスピースを装着して歯を少しずつ動かしていく方法です。
特に、見た目を気にされる患者さんや、取り外しできる利便性を重視する方に人気があります。
マウスピース矯正のメリット
- 目立ちにくい → 透明なマウスピースなので、装着していても気付かれにくい。
- 取り外し可能 → 食事や歯磨きの際に外せるので、衛生的で日常生活に馴染みやすい。
- 痛みが少ない → ワイヤー矯正と比べて、歯にかかる力が穏やかなので、痛みを感じにくいことが多い。
マウスピース矯正のデメリット
- 適用範囲が限られる → 大きな歯の移動やねじれの改善には不向きな場合も。
- 自己管理が必要 → 1日20時間以上装着しなければならず、自己管理が苦手な方には難しいことも。
- 治療期間が長くなることもある → ワイヤー矯正に比べると、動かせる力が弱いため時間がかかることがある。
インビザラインは透明なマウスピースを使用し、ご自身で取り外して食事や歯磨きが出来るのがメリットです。
部分矯正の場合は主に前歯だけを動かしますが、マウスピースは全部の歯を覆う形になります。ただ、奥歯は動かないように設計してあります。
装置の比較
項目 | ワイヤー矯正 | マウスピース矯正 |
見た目 | 目立ちやすい | 目立ちにくい |
取り外し | 取り外し不可 | 取り外し可能 |
治療期間 | 一般的に長い | 比較的短い |
快適さ | 不快感がある場合が多い | 比較的快適 |
メンテナンス | 定期的な調整が必要 | 定期的な交換が必要 |
費用 | 比較的高い | やや高い |
適用範囲 | 広範囲の不正咬合に対応 | 軽度から中等度の不正咬合に対応 |
食事制限 | 食事制限あり | 食事制限なし |
口腔衛生 | 口腔衛生が難しい | 口腔衛生が保ちやすい |
部分矯正ではどちらを選ぶべき?
部分矯正では、患者さんの歯並びの状態やライフスタイルによって最適な方法が変わります。
ワイヤー矯正が向いているケース
- 歯の移動量が大きい場合
- 細かい調整が必要な場合
- 短期間で終えたい場合
マウスピース矯正が向いているケース
- 目立たない矯正を希望する場合
- 取り外しできる方が良い場合
- 比較的軽度な歯並びの改善をしたい場合
どちらを選ぶか迷った場合は、歯科医師と相談し、ご自身の生活スタイルや希望に合った方法を選ぶのが良いでしょう。
部分矯正とは?

矯正治療は歯列全体を動かして歯の位置を変えることで、歯並びや咬み合わせを治します。そして、前歯の歯並びの気になる部分だけをきれいにするのが部分矯正(MTM)です。
部分矯正で歯を動かすのは前歯だけになりますので、治療期間が短く、費用も安く抑えることが可能です。しかし、部分的な治療だけでは噛み合わせを整えることは出来ません。
部分矯正で歯を動かせる範囲は、主に前歯の2本~8本程度となります。歯を少ししか動かしませんので、通常なら2年半くらいかかる治療期間を、2ヶ月~1年程度に短縮することが出来ます。
但し、部分矯正で治療が可能なのは、軽度の出っ歯や受け口、ガタガタで、重度の不正咬合には適応出来ないため、担当医の診断を受けてご相談下さい。
前歯の不正咬合ってどんな種類があるの?
前歯の気になる部分の歯並びだけを治すのが部分矯正ですが、前歯の見た目だけを治したくても、奥歯も動かさなければいけないケースもあります。
出っ歯(上顎前突)
日本人の不正咬合で多いのは、出っ歯です。前歯が前方に出っ張って口元がこんもりして見えるので、口ゴボと呼ばれる場合もあります。前歯が大きく出ていると、お口が閉じにくかったり、唾液が口から洩れやすかったりします。
お口が常に微かに開いている状態では、お口の中が乾燥しやすかったり、前歯でものを噛み切れないということもあります。
すきっ歯(正中離開)
上の前歯の真ん中に隙間があいているのがすきっ歯です。数か所に隙間がある場合は空隙歯列ともいいます。
前歯の中心に隙間があると、目立つことと、その隙間から息が漏れて発音に影響が出る、食べ物が詰まるなどの問題が起こります。2ミリ程度のすきっ歯は、部分矯正で比較的簡単に治ります。
受け口(下顎前突)
下の前歯が前に突出しているのが受け口です。滑舌が悪かったり、ものを前歯で噛み切れないなどの不具合が起こりがちです。
歯の向きだけが前に出ている場合は歯並びの治療だけでなおりますが、下顎自体が前に出ている、下顎が上顎に比べて大きい場合等は、外科手術の適用になります。
八重歯(叢生・乱ぐい歯)
いわゆるガタガタの歯並びです。その中でも八重歯と呼ばれるのは、犬歯が生えるスペースが足りないために、左右の犬歯が前に大きく飛び出して生えているケースです。
八重歯の治療のためには、小臼歯を抜歯して歯を大きく動かさなければなりませんので、
八重歯は可愛いイメージがありますが、歯並びとしては不正咬合に含まれますし、歯が重なっているために虫歯や歯周病になりやすい、実際に飛び出た歯は位置的に噛む機能がないなど、様々なデメリットがありますので、矯正治療という観点では、不正咬合に対しては治療をおすすめします。
まとめ

部分矯正のための治療法として、ワイヤー矯正、マウスピース矯正があります。部分的な治療では軽度の不正咬合しか治せませんので、ご希望の方は、まず部分矯正で可能かどうかの診断をお受けください。その後、歯並びの状態によって最適な装置がワイヤーかマウスピースか、担当医と患者さんが相談して決めていくことになります。