
部分矯正では抜歯を行いませんので、歯を動かすスペースを作るために歯を僅かに削ることが多いです。これをディスキング(ストラッピング、スライス)と言います。部分矯正で歯を削ることについてご説明します。
目次
部分矯正で歯を削ることがあるケース
まず、部分矯正において歯を削る可能性があるケースを見ていきましょう。
スペース不足の解消
- 歯並びがガタガタになっている場合、歯を動かすスペースが足りないことがあります。
- そのため、わずかに歯の側面を削る「IPR(Interproximal Reduction)」という処置を行うことがあります。
- これは、健康な歯を削るのではなく、歯と歯の間を少しだけ削って隙間を作る方法です。
噛み合わせの調整
- 部分矯正は、全体の噛み合わせを大きく変えるわけではありませんが、上下の歯の噛み合わせがうまく合わない場合、わずかに歯を削って調整することがあります。
- 例えば、出っ歯を引っ込める際に、前歯の裏側を少し削ることがあるのです。
被せ物(クラウン)や詰め物(インレー)の影響
- 以前に被せ物や詰め物をしている歯がある場合、それが矯正の邪魔になることがあります。
- その場合、形を少し調整するために削ることもあります。
部分矯正で歯を削らないケース
もちろん、すべての部分矯正で歯を削るわけではありません。
もともとスペースがある場合
歯を動かすための十分なスペースがある場合は、削る必要がありません。
マウスピース矯正を用いる場合
マウスピース矯正(インビザラインなど)では、歯を少しずつ移動させるため、削る必要がないことも多いです。
軽度の歯並びの乱れを改善する場合
例えば、ほんのわずかに前歯が傾いている程度の問題であれば、歯を削らずに矯正できるケースが多いです。
矯正治療で歯を動かすスペースを作る方法
矯正治療で歯並びをきれいにするためには、歯を動かすスペースを作る必要があります。スペースを作るには主に4つの方法があります。
- 小臼歯の抜歯を行う(抜歯矯正)
- 歯を後方に移動させる
- 歯列弓を広げて大きくする
- 前歯のエナメル質を削る(IPR、ディスキング、スライス)
部分矯正では、主に前歯だけを動かしますので、スペースを確保するために、④の「エナメル質を削る」処置を行います。これをIPR(ディスキング、スライス)と呼びます。
https://www.osaka-kyousei.com/kyousei4.html
矯正治療でエナメル質を削るIPR
歯を動かすためのスペースを作るのに、前歯の両側のエナメル質の部分を僅かに削る処置をIPRと呼びます。部分矯正やマウスピース矯正では良く行われる方法です。
本来は歯を削らないに越したことはないのですが、部分矯正のディスキングで歯を削るのは、最大でも0.5ミリと、歯に影響を与えないように、ごく少ない量を削ります。削るのはエナメル質のみですので、痛みはなく、麻酔の必要もありません。
IPRで歯を削ることは、抜歯したり他の歯を動かしたりせずにスペースを作れるため、部分矯正では殆どのケースでIPRを行います。

IPRで歯を削るデメリット
歯のエナメル質を削ることについては、デメリットもあります。削った断面がザラザラしているので、そこから虫歯になりやすいです。虫歯にならないよう、ディスキングの後、削った歯面が滑らかになるように削ります。
エナメル質を削る量は最大でも0.5ミリですので、通常は知覚過敏になったり、歯の寿命が短くなるということはありません。しかし、元々エナメル層が薄くなっている方の場合は、IPRを行うことで知覚過敏の症状が出る場合があります。
IPR後に歯がしみる痛みを感じたら、担当医にご相談ください。
部分矯正で歯を削ることのメリット
IPRを行って歯を削ることで、抜歯せずに歯を動かすためのスペースが作れますので、抜歯せずに治療が出来る範囲が拡がりました。抜歯を行いませんので、抜歯矯正と比べると治療期間を短縮出来ます。
歯を削ることへの不安は?
「歯を削るのは怖い…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。部分矯正で行うIPR(歯の削除)は、ごくわずかで、エナメル質の範囲内で行われるため、歯の健康を損なうことはほとんどありません。
また、歯を削らない方法が適している場合もあるため、まずは歯科医に相談し、ご自身に合った治療計画を立てることが大切です。
部分矯正のどの段階で歯を削るのですか?
歯を削る必要がある場合、それは部分矯正のどのタイミングで行われるのでしょうか?
矯正装置の装着前
- 矯正の計画段階で、歯を動かすためのスペースが足りないと判断された場合、矯正装置を装着する前にIPRが行われます。
- この段階で削ることで、無理なく歯を動かすことができます。
矯正中の微調整
- 歯が動いていく過程で、予想以上にスペースが足りなくなった場合、途中で歯を削ることがあります。
- 例えば、治療が進む中で新たに歯の重なりが生じた場合などに対応するためです。
治療の仕上げ段階
- 矯正の終盤では、噛み合わせや見た目の微調整のためにわずかに削ることがあります。
- 例えば、前歯のエッジをそろえたり、歯の高さを調整したりすることがあります。
歯の重なりやガタガタが大きい場合は、治療の初めに歯を削ることがあります。重なりやガタガタが軽度の場合は、治療が少し進んでから歯を削ることが多いです。
歯を削る時は痛みがありますか?
部分矯正で歯を削るのは、エナメル質の部分だけです。しかもほんの少し削るだけですので、痛みが出ることはありません。
虫歯の治療で歯を削る時には、エナメル質の内側にある象牙質も削りますので、痛みが出る可能性があるために麻酔をします。
しかし、部分矯正のためのディスキングでは、麻酔の必要はありません。
歯を削った後の注意点について
虫歯予防のために、歯磨きの際にフッ素入りの歯磨き剤を使いましょう。歯ブラシでのブラッシングに加えて、デンタルフロスを使って歯と歯の間の歯垢を落とすことも大切です。
ワイヤー矯正や裏側矯正で固定式の矯正装置を付けている場合は、装置の周囲に歯垢や汚れがつきやすいため、丁寧にケアしましょう。
部分矯正は歯を削るのかに関するQ&A
部分矯正でスペースを作るために歯を削る際、どの程度歯を削るのですか?
部分矯正で歯を削る場合、通常はエナメル質の一部を削ります。このプロセスはディスキング(ストラッピング、スライス)と呼ばれ、歯を動かすスペースを作るために行われます。削る量は通常0.5ミリ以下で、歯にほとんど影響を与えません。
部分矯正で歯を削ることのデメリットは何ですか?
歯を削ることにはデメリットもあります。削った歯面がザラザラしており、虫歯が発生しやすくなる可能性があります。エナメル質を削る量は最大でも0.5ミリであり、知覚過敏や歯の寿命の短縮は通常は起こりませんが、元々エナメル質が薄い方の場合、知覚過敏が起こる可能性があります。
部分矯正のどの段階で歯を削るのですか?
部分矯正において、歯を削るタイミングは症状により異なります。歯の重なりや不正咬合が重度の場合、治療の初めに歯を削ることがあります。軽度の場合は、治療が進行した後に歯を削ることが一般的です。
まとめ

部分矯正では歯を削ってスペースを作って歯を動かしていくケースが多いです。IPRで歯を削る時は、エナメル質を最大で0.5ミリ削りますが、エナメル質の厚さは2.5ミリ程度ありますので、通常は歯を削ったことによる影響はありません。