裏側矯正

裏側矯正で滑舌を良くするには?

裏側矯正はしゃべりづらい?裏側矯正と滑舌について

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

裏側矯正治療の際には歯の裏側に装置を付けます。装置があるために舌が動きにくくなり、慣れるまでには滑舌に影響が出てしまうこともあります。裏側矯正と滑舌についてご説明します。

裏側矯正中に滑舌が悪くなる原因

裏側矯正では、歯の裏側に装置を装着するため、舌の動きに直接的な影響があります。特に、舌が装置に触れることで動かしにくくなり、一時的に滑舌が悪くなることがあります。この影響は、装置装着後1週間から1ヶ月程度で慣れてくる方が多いですが、個人差があります。

滑舌に影響を受けやすい音とその理由

特に「サ行」「タ行」「ナ行」「ラ行」の音は、舌が歯の裏側や歯茎に接触させて発音します。そのため、普段の発音の仕方では、歯の裏側につけたブラケットやワイヤーが発音の邪魔になります。これらの音を発音する際、舌の動きが制限されることで、発音が不明瞭になることがあります。

裏側矯正は滑舌にどんな影響があるの?

裏側矯正インコグニト

裏側矯正はしゃべりにくいということが良く言われますが、確かに滑舌に影響します。

母音を発音する時の舌や口の動き

あいうえお、の母音を発音する時には、以下の2つの条件が組み合わさって発音されます。

  1. 舌と口の天井の距離・・口の中が広いか狭いか
  2. 舌が動く位置・・舌の前方か後方か

子音を発音する時の舌や口の動き

子音の発音は、母音よりも複雑で、舌のどの部分(舌の先端、前方、後方)がどの方向に動くかが組み合わさり、舌がどのように戻るかによって、音が変わります。

発音する時は、無意識に唇や舌を動かしますので、全てを意識して発音するのは、逆に難しいといえます。

これらの発音する場所が正しい位置でない場合は、音が変わってしまいます。

http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ykawa/art/2018_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%AE%E9%9F%B3%E5%A3%B0.pdf

裏側矯正でしゃべりにくくなる理由

裏側矯正は歯の裏側にブラケットとワイヤーをつけて、ワイヤーに力を加えることで歯を少しずつ動かしていきます。

装置が歯の裏側にあるため、表側からは殆ど見えないのが、裏側矯正のメリットですが、お口の中が装置によって狭くなり、舌を動かしにくくなります。

この「舌が動きにくくなる」ことが、滑舌が悪くなる原因のひとつになります。

特に発音しにくい音は?

裏側矯正では、舌が動かしにくくなりますので、「サ行」「ザ行」「タ行」「ダ行」「ナ行」「ラ行」の発音がむずかしくなります。

これらの音は、①前歯の裏に舌を接触させる動き②前歯の裏に舌を接近させる動き、の2つの動きが必要になりますので、矯正装置が邪魔になって正しい発音が難しくなります。

滑舌を良くするトレーニング方法

発音練習

滑舌が悪くなったと感じた場合は、スムーズに発音するための練習が必要になります。練習によって音を出すことに慣れると、自由に発音ができ、滑舌が元の状態に戻ることもあります。

トレーニング1.舌を思い切り出す

舌を滑らかに動かすために、思い切り舌を出して、舌の筋肉を鍛えましょう。やり方は、「上を向いた状態で天井に向けて舌を思い切り突き出す」だけです。その後、舌を戻して正面を向きます。

これを繰り返すと、舌の筋肉が鍛えられ、滑らかに舌を動かすことが期待できます。

トレーニング2.母音の発音をする

母音

日本語の発音の基礎となるのが「あいうえお」の母音です。これらの母音がうまく発音できないと、聞き取りにくい発音になってしまうことがあります。

言葉を全て母音だけ発音するトレーニングをすると、はっきりとした発音が出来るようになります。例えば、「おはよう」は「おあおう」となります。

劇団員の方などもこの方法で練習されるそうです。

トレーニング3.短音の発音練習

裏側矯正では、特に「サ行」の発音がしにくくなります。そこで、練習として、子音の[s]を上の前歯や歯茎の裏に舌先を近づけ、その隙間から空気を押し出すイメージで発音します。

次に、「サー」「スー」「セー」「ソー」と「シー」を練習します。これを繰り返すことで、舌の動きがスムーズになります

トレーニング4.早口言葉

早口言葉

早口言葉をいくつか言ってみて、言いにくい言葉があれば、繰り返し練習します。速さにはこだわらず、口や舌をしっかりと動かして発音することを心がけましょう。

トレーニング5.音読、朗読

好きな本やブログや記事を声に出して読んでみましょう。様々な言葉を発生することになるため、舌や口の運動になります。自分の声を録音して聞き返すことで、発音の癖や改善点を確認できます。

日常生活での滑舌を改善するための工夫

滑舌

日常生活でも、以下の工夫をすることで滑舌の改善が期待できます。

  • ゆっくりと話す・・急いで話すと舌が装置に引っかかりやすくなるため、意識的にペースを落として話すことが重要です。
  • 鏡を見ながら話す・・口の動きを確認しながら発音することで、正確な発音ができるようになります。
  • 舌や口周りを動かすトレーニング・・舌を上下左右に動かす練習や、舌を前に出して保持する練習を行うことで、舌の筋力が向上し、発音がしやすくなります。

歯並びの改善は滑舌に影響ある?

滑舌

不正咬合が原因で滑舌や発音が悪くなっている場合、歯列矯正治療で歯並びを整えることで、発音や滑舌が改善することがあります。矯正治療が進み、歯並びが整っていくにつれ、舌の動きがスムーズになり、発音が明瞭になることが期待できます。

滑舌と歯並びの関係

滑舌(かつぜつ)は、舌や唇、歯の動きによって形成される音の明瞭さを指します。歯並びが悪いと、発音に影響が出ることがあります。特に、以下のような歯並びの問題が滑舌に関係します。

  • 出っ歯(上顎前突) → サ行・タ行・ラ行の発音が不明瞭になることがある
  • すきっ歯(空隙歯列) → 息が漏れやすく、スースーとした発音になりやすい
  • 受け口(下顎前突) → サ行・ザ行が発音しにくくなる
  • 開咬(前歯が噛み合わない) → 舌が正しく使えず、タ行・ダ行が発音しにくくなる

このように、歯並びの乱れがあると、特定の音が発音しづらくなることがあるのです。

矯正治療による滑舌への影響

矯正治療を行うことで滑舌が改善されることもありますが、治療の途中で一時的に話しづらくなることもあります。

1. 滑舌が良くなる場合

矯正治療によって歯並びが整うと、舌や唇の動きがスムーズになり、発音が明瞭になることがあります。例えば、以下のような改善が期待できます。

  • すきっ歯が治ることで、息漏れが減り、サ行がはっきり発音できる
  • 受け口が改善され、タ行・ラ行の発音がしやすくなる
  • 出っ歯が治ることで、唇の閉じ方が安定し、発音がクリアになる

これにより、話し方に自信が持てるようになる人もいます。

2. 一時的に滑舌が悪くなる場合

矯正装置を装着すると、最初のうちは異物感があり、舌の動きが制限されるため、一時的に話しにくくなることがあります。特に、以下のようなケースでは滑舌が悪化しやすいです。

  • マウスピース矯正(インビザライン) → 最初は舌が装置に当たり、サ行が発音しにくい
  • ワイヤー矯正 → ブラケットが舌や唇に当たり、タ行・ナ行が発音しづらい
  • 裏側矯正(舌側矯正) → 装置が舌の裏側にあるため、特に舌を使う音が発音しにくくなる

しかし、これらはほとんどの場合、数週間で慣れ、自然に話せるようになります。

矯正中に滑舌を改善するための対策

矯正装置による滑舌の違和感は時間とともに慣れますが、以下のような対策を取ることで早く適応できます。

  • ゆっくり話す → 最初は意識的にゆっくり話すことで、舌の動きを調整しやすくなる
  • 発音練習をする → 「さしすせそ」「たちつてと」などを繰り返し発音する
  • 舌のトレーニング → 舌をしっかり動かす発声練習をする(例:「ララララ」と繰り返す)
  • 口のストレッチ → 口を大きく開けたり閉じたりして、唇や舌の動きをスムーズにする

これらを継続することで、矯正中でも発音がスムーズになっていきます。

矯正が終わった後の変化

矯正が完了すると、発音がクリアになり、話しやすくなる方が多いです。また、見た目のコンプレックスが解消されることで、話すことに対する自信がつく場合もあります。

しかし、矯正後も滑舌が気になる場合は、歯科医師や言語聴覚士に相談すると、適切なアドバイスをもらうことができます。

 

歯並びは滑舌に影響を与える要素の一つであり、矯正治療によって発音が改善されることが多いです。ただし、矯正装置をつけた直後は一時的に話しにくくなることもあります。滑舌の違和感を早く解消するには、発音練習や舌のトレーニングを行うのが効果的です。

「矯正をしたら、話しやすくなるかも?」と考えている方は、ぜひ一度歯科医に相談してみてくださいね。

まとめ

歯のキャラクター

矯正治療中は装置を歯に付けたりお口に入れたりしますので、滑舌に影響が出ることがあります。特に裏側矯正では歯の裏側に装置があるために、舌の動きが悪くなり、子音の発音がしづらくなることがあり、慣れるまでに時間が必要になります。

営業職の方やセミナー講師、アナウンサーなどの喋る職業の方は、装置による滑舌への影響も考えて適切な装置を選びましょう。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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