八重歯や出っ歯は、見た目や機能面が気になる方が多くおられます。手軽な部分矯正という方法がありますが、八重歯や出っ歯を部分的な治療で治すことはできるのでしょうか。メリットやデメリット、八重歯や出っ歯に対する効果についてご説明します。
目次
部分矯正で治療できる不正咬合
- すきっ歯
- 軽度のガタガタ
- 軽度の出っ歯
- 軽度の八重歯
部分矯正で治せるのは、ごく軽度の不正咬合のみで、主に前歯のみを動かします。歯を大きく動かさなければならない重度の不正咬合の場合や、噛み合わせが悪い場合は、全体的に歯を動かして治します。
八重歯は前歯だけの治療で治る?
八重歯は主に3番の歯が歯列から歯が飛び出た状態のことをいいます。飛び出ている1本だけの位置を修正すれば治ると思われるかもしれませんが、八重歯の場合は部分矯正では治らないケースが多くあります。
上の写真は典型的な前歯の症例で、歯列におさまりきれなかった犬歯が歯列から外側に大きく飛び出しています。同時に、左右の2番の歯は後ろに引っ込んでいます。これらの歯をきれいに一列に並べるためには、歯を動かすためのスペースが必要になります。
大きなスペースを作るためには、上下左右の小臼歯を抜歯しなければなりません。しかし抜歯をした場合は一般的には歯列全体を動かす治療となり、部分的な治療のみで改善させることが出来ません。
八重歯の程度にもよりますが、一般的に八重歯は部分矯正で治療出来ない場合が多いです。
八重歯の治療は歯列から大きく飛び出ている犬歯を抜歯すると思っておられる方がおられますが、八重歯を抜歯することはありません。抜歯が必要が場合は、前から4番目の小臼歯を抜歯する場合が多いです。
出っ歯は程度によって部分矯正で治る
出っ歯の治療も、軽度の場合には部分矯正で対応できることがあります。例えば、前歯が少しだけ前に出ている場合や、上下の歯のバランスが比較的整っている場合です。このような場合、部分的な治療で前歯を後方に移動させることが可能です。
しかし、中~重度の出っ歯の場合や、噛み合わせの問題が大きい場合は、歯列全体を動かす治療が必要です。また、顎の骨格に問題がある場合も、部分的な治療では対応できません。
軽度~中程度の出っ歯の場合で、抜歯をする程ではないケースでは、IPR(スライス、ディスキング)と呼ばれる「前歯の両端を僅かに削る処置」を行って、歯を動かすためのスペースを作ります。この場合は部分矯正で治療が可能です。
つまり、部分的な治療が適応かどうかは、主に歯をどの程度動かさねばならないかによって決まります。歯を大きく動かす必要がある場合は全体矯正となります。また、受け口や奥歯の噛み合わせの治療が必要な方も、全ての歯を動かさなければなりません。
上顎の骨格が大きく前に出ていることによって出っ歯になっている場合は、歯並びを整えても口元が前に出ている状態はあまり改善されません。骨格性の出っ歯の場合は、外科手術が必要になります。
部分矯正が可能な歯並びとは?
気になる前歯の歯並びなどの部分的な治療は、全ての歯を動かして歯並びと噛み合わせを整える全体矯正とは異なります。部分矯正が適用される主なケースは以下のようなものです。
1. 軽度の不正咬合
- 小さな隙間がある場合やわずかに歯が重なっている場合など、軽度の歯並びや咬み合わせの問題がある時。
- 特に前歯の微調整が必要な場合に適しています。
2. 一度矯正をしたが後戻りした
- 治療後、何年か経過した後に、歯が元の位置に少し戻ってしまった場合の微調整に、部分矯正が使用されることがあります。
3. 特定の歯の位置の調整
- 特定の歯だけが問題を引き起こしている場合。例えば、1本または少数の歯が捻じれていたり、引っ込んでいる場合。
部分矯正での治療が適用されるかどうかは、患者さんのお口の状態、期待される結果、治療のリスクやメリットを総合的に評価した上で決定されます。
部分矯正では治らない例
部分矯正での治療が難しい不正咬合の代表的な例は、下の図のような4種類の不正咬合です。
重度の不正咬合は部分矯正では治りませんので、歯列全体を動かす矯正か、重度の出っ歯・受け口の場合は外科手術も視野に入れる必要があります。
部分矯正とは?
部分矯正は気になる前歯6~8本のガタガタや出っ歯を解消してきれいに並べるために部分的に行う歯並びの治療です。主に前歯の歯列を整えるために行われます。
歯の重なりを解消して歯をきれいに並べるためには、歯を動かすためのスペースが必要です。全顎矯正では、小臼歯を抜歯してスペースを作るのが一般的な方法ですが、部分矯正でスペースを作るやり方としては、前歯の両側を削って隙間を作るIPR(ディスキング、スライス)という方法で行います。
その場合、前歯を一列にきれいに並べるために3ミリ以上のスペースが必要な場合、例えば八重歯や重度のガタガタは部分矯正では治らないということになります。
部分矯正のメリットとデメリット
歯の一部分だけを治す場合、どのようなメリットとデメリットがあるのかご説明します。
メリット
- 治療期間が短い
- 治療費が安い
- 歯を大きく動かさないので手軽に治療出来る
デメリット
- 歯を大きく動かす複雑な症例は適用外
- 噛み合わせは治せない
部分矯正の治療方法
部分矯正に使われる4つの治療方法についてご説明します。
- マウスピース矯正
- ワイヤー矯正
- 裏側矯正
- セラミック矯正
1. マウスピース矯正
マウスピース矯正では、まずiTeroという装置で歯列を光学スキャンし、歯型のデータを作成します。そのデータを元に歯をどのように動かしてきれいな歯列にするかの治療計画をソフト上で作成し、徐々に歯列が整って行くように順番に歯列が変化したマウスピースを製作します。
実際にマウスピースを歯に装着して頂くのは1日22時間以上です。食事と歯磨きの時はマウスピースを外すことが出来ます。
きちんと装着時間を守れるかどうかで、治療計画通りに治療が進むかどうかが決まります。当院ではインビザラインという名前のマウスピースを使用します。
2. ワイヤー矯正
歯にワイヤーとブラケットを装着して、ワイヤーで引っ張って歯を動かし、歯並びをきれいにしていきます。
大きく歯を動かすケースに適しているので、抜歯矯正に向いています。マウスピース矯正では難しいとされる複雑な不正咬合の治療にも使われます。
ワイヤー矯正はワイヤーとブラケットが目立つのがデメリットでしたが、当院ではセラミックの白いブラケットと、白い樹脂を巻いたホワイトワイヤー(別途料金となります)が使用出来ます。
3. 裏側矯正
ワイヤーとブラケットを歯の裏側に装着するのが裏側矯正です。より目立たない装置をご希望の方に適しています。当院ではインコグニトという名前の装置を使用しています。
4. セラミック矯正
歯を動かして歯列を整えるのではなく、前歯を削ってセラミックの被せ物を被せてきれいな歯列を作る審美歯科治療です。セラミックは隣の歯と殆ど同じ色調で作れますので、セラミックを被せた歯と天然の歯は殆ど見分けがつきません。
【動画】部分矯正で治る範囲、治らない範囲
八重歯や出っ歯の部分矯正での治療に関するQ&A
八重歯が部分矯正で治らない場合はありますか?
八重歯の場合、部分的な治療で治るためには歯列からの飛び出し幅が3ミリ未満である必要があります。3ミリ以上のスペースが必要な場合は抜歯を伴う全体矯正が必要です。
部分矯正で治療できる不正咬合の例は何ですか?
部分矯正で治療できる不正咬合の例には、軽度のすきっ歯、軽度のガタガタ、軽度の出っ歯、軽度の八重歯が含まれます。これらは歯を大きく動かさずに位置を修正できます。
骨格性の出っ歯は部分矯正で治せますか?どのような治療が必要ですか?
骨格性の出っ歯の場合、部分矯正では治療が難しく、歯を動かしただけでは口元の前に出た骨格をあまり改善できません。出っ歯の程度によっては外科手術が必要です。
まとめ
出っ歯や八重歯を部分矯正で治す場合は、軽度の出っ歯や軽度のガタガタの場合のみ、治療が可能です。重度の出っ歯や八重歯の場合は抜歯して歯全体を動かす治療になるパターンが多く、一部の歯を動かすだけでは治りません。