
先天的に永久歯が生えてこない先天性欠如歯の場合、乳歯が抜けた後は隙間があいたままになります。そのため矯正治療をしてそのスペースを埋める方法がありますので、ご説明します。
目次
先天性欠如歯とは
先天性欠如歯とは、乳歯の下にある永久歯の歯の種がなく、全く生えてこない状態をいいます。永久歯ではなく、乳歯に起こる場合もあります。
ここ数年では先天性欠如歯のある子どもは増える傾向があり、日本小児歯科学会が行った調査によると、永久歯の数が足りない子供は10人に1人の割合でいるとのことです。先天性欠如歯のはっきりとした原因はわかっておらず、予測することも困難です。レントゲン撮影で見つかった時に対処するというのが一般的です。
本来、生えてくるはずの永久歯が先天的に欠如しており、乳歯が抜けた後にそのまま歯が生えてこないことが特徴です。特に、前歯や第二小臼歯(前から数えて4番目・5番目の歯)が欠如するケースが多いとされています。
先天性欠如歯の主な原因
- 遺伝的な要因(家族内で欠如歯が見られることがある)
- 発育過程での異常(歯の形成時に何らかの影響があった可能性)
- 進化的要因(現代人の顎の小型化に伴う変化)
このような先天性欠如歯がある場合、放置すると歯並びや噛み合わせに影響を及ぼす可能性があるため、適切な治療が必要になります。
先天性欠如歯があるとどんな影響があるの?
歯が足りないと、周囲の歯がその隙間を埋めようと移動するため、次のような問題が起こることがあります。
- 歯列の乱れ → 隣接する歯が傾いたり、スペースが狭くなったりする。
- 噛み合わせの不調 → 歯が足りないことで正しい咬合ができず、顎関節症のリスクが高まる。
- 見た目への影響 → 特に前歯の欠如は、審美的な問題を引き起こす。
- 発音への影響 → 歯の隙間が大きいと、発音が不明瞭になることがある。
こうした問題を解決するために、部分矯正を用いた治療が行われることがあります。
先天性欠如歯がある場合の部分矯正
先天性欠如歯があることが早めにわかっていれば、その後どのように治療していくかの方針を早めに立てることが出来ます。乳歯が抜けてしまった後に歯が生えてこない場合は、その部分に隙間が出来てしまいますので、矯正治療でそのスペースを埋めるように歯を動かします。
場合によっては、乳歯が自然に抜けるのを待たずに抜歯して、矯正を行うこともあります。乳歯のスペースに歯を移動させる治療は、部分矯正で行うことが出来る場合が多いです。
部分矯正では前歯の3~6歯を動かしてきれいに並べることが多く、期間が短く、費用も少なく抑えられるのがメリットです。先天性欠如歯があるために出来たスペースを使って矯正治療を行う場合の適切な年齢は12~18歳頃です。
主な矯正方法
歯を移動させて隙間を閉じる
- 欠如している歯の隙間を周囲の歯で埋める方法。
- 軽度の欠如で適応されることが多い。
- 見た目が自然になりやすい。
欠如部分のスペースを維持し、人工歯を入れる準備をする
- 被せ物(クラウン)や詰め物(インレー)、ブリッジ、インプラントを入れるためのスペースを確保する。
- 奥歯など、噛み合わせの機能を維持したい場合に選ばれる。
乳歯をできるだけ維持しながら矯正する
- 乳歯が残っている場合、それをできる限り温存しつつ歯並びを整える。
- 乳歯が抜けるタイミングを見ながら治療計画を立てる。
いずれの方法も、患者さんの歯並びや咬合の状態に応じて適切な治療法が選ばれます。
部分矯正のメリットとデメリット
部分矯正を選択する場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 治療期間が短い → 全体矯正に比べて数か月~1年程度で完了することが多い。
- 費用が抑えられる → 全顎矯正よりも比較的低コスト。
- 負担が少ない → 装置の装着範囲が狭いため、違和感が軽減される。
デメリット
- 対応できる症例が限られる → 重度の不正咬合がある場合は適応できない。
- 後戻りのリスク → 歯の移動が少ない分、保定装置(リテーナー)をしっかり使用しないと元に戻る可能性がある。
そのため、部分矯正が適しているかどうかは、矯正歯科での相談が必要です。
先天性欠如歯の部分矯正はどのように進める?
部分矯正の治療の流れを簡単にご紹介します。
カウンセリング・精密検査
レントゲン撮影、歯型の採取、咬合チェックを行い、治療計画を立てる。
矯正装置の装着
部分矯正のためのワイヤー矯正やマウスピース矯正を装着。
定期的な調整
月に1回程度の通院で、装置の調整を行う。
矯正治療完了・保定期間
目的の歯の位置に移動したら、リテーナーで歯を固定。
このように、患者さんごとの状態に合わせて、適切な治療計画が立てられます。
先天性欠如歯は乳歯にも起こる
乳歯の先天性欠如歯は永久歯が生えてくるまでそのまま様子を見ることが多いです。しかし乳歯だけでなく、永久歯にもある場合は、治療が必要になることがあります。
レントゲンで永久歯の先天性欠如歯がわかっている場合は、乳歯を出来るだけ長く残すようにします。しかし乳歯は永久歯に生え変わるのが前提で歯根が短いため、大切に残したとしても20歳前後になると自然に抜けてしまうことが多いです。
また、乳歯は永久歯と比べるとエナメル質が薄くやわらかいため、虫歯になりやすいという問題もあり、長く残すのは困難です。
乳歯が抜けてしまい、その下に永久歯が生えてこない場合は、ブリッジ、入れ歯、インプラントのどれかで補うことになります。
インプラントは18~20歳になっていないと治療を受けることが出来ませんので、それまでは仮歯をつけたり、周囲の歯を矯正で動かして欠損歯の部分のスペースを埋めるなどの処置が必要になります。
先天性欠如歯があるが歯並びが気にならない場合
先天性欠如歯があっても歯並びが気にならない場合は、矯正治療は行いません。
まず、出来るだけ乳歯を虫歯や歯周病から守って長くもたせるようにしたうえで、それでも乳歯が抜けてしまった場合に、インプラントやブリッジで歯が欠損した部分をおぎないます。
乳歯をどれだけ長くもたせられるかが重要になります。
まとめ

生まれつき歯が生えてこない状態を先天性欠如歯といいます。そのまま放置すると、歯のないスペースが生じるため、場所によってはとても目立つことになります。
そのため、スペースを閉じるために歯を動かす矯正治療や、欠損歯をおぎなうブリッジ、インプラント等の補綴治療が必要になります。
矯正治療の場合は部分矯正が適用になれば期間、費用共に低コストで行うことが可能です。どの治療が適切か、担当医と良くご相談の上で決定しましょう。
先天性欠如歯がある場合、部分矯正を活用することで歯並びや噛み合わせを整え、美しい口元を実現することが可能です。
- 欠如歯があると、歯並びや咬合に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 部分矯正を用いて、歯を移動させるか、スペースを確保して人工歯を入れるかを選択できる。
- 治療期間が短く、費用も抑えられるが、適応できるケースには限りがある。
先天性欠如歯でお悩みの方は、矯正歯科での相談をおすすめします。 ご自身に合った治療法を見つけ、より良い口元を目指してみませんか?