ワイヤー矯正

矯正中にブラケットが外れたら?

矯正中にブラケットが外れたら?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

ワイヤー矯正や裏側矯正の治療中にブラケットが外れてしまった時には、ご自分で付けなおすことは出来ません。歯並びの治療を行っている途中で装置が歯から外れてしまった場合の対処についてご説明します。

矯正中にブラケットが外れた時の対処方法

矯正中の女性

矯正治療中にもしブラケットが外れてしまったら、外れたことを歯医者に早めに連絡し、対応してもらうことが大切です。勝手に歯科用ではない接着剤を使ったり、そのまま放置すると、更にトラブルや痛みが生じる可能性があります。

応急処置としては、ブラケットが完全に歯から取れて落ちてしまった場合は、そのまま保存して歯科医院に持参しましょう。

ブラケットの種類について

また、一部外れかかっている、または外れてワイヤーで宙づりになっている場合は、装置が口内に当たって口内炎になるのを予防するためのワックスを使って、外れたブラケットをワイヤーに固定します。

どちらも一時的な処置ですので、早めに通院して歯に接着し直してもらいましょう。

矯正中に外れる原因

ワイヤー矯正でブラケットが外れるというトラブルは、一般的によくある話です。ブラケットが外れることを離脱と呼びますが、もともと治療期間中のみ歯に接着するものが矯正器具です。終了後には綺麗に外れることが重要です。また、ワイヤーだけが外れてしまう場合もあります。

原因その1・歯の表面の防湿不足

接着剤は水分に弱いデメリットがあります。そのため、ブラケットを接着する際には、エナメル質に唾液が付かないように防湿を行わなければなりません。ただし、分泌量が多い方や、子供の場合は唾液が多いので、外れやすいという傾向にあります。

原因その2・被せ物がある歯

装置を歯に貼り付けるために使用する接着剤は、天然歯のエナメル質と接着するという前提で作られています。つまり、銀歯やセラミックなどに接着させるような成分ではないために、ブラケットが外れる原因になります。何度も取れてしまう場合は、被せ物を一時的に歯科用プラスチックの仮歯に置き換えて治療を行うこともあります。

原因その3・フッ素塗布

急に何個もブラケットが外れた場合は、フッ素が理由と考えられます。フッ素はエナメル質と歯質を強くしますが、矯正を行う際には、エッチングという処置が必要になります。

エッチングとは

歯の表面の歯垢や汚れを除去し、クリーニングをします。その後、エッチング剤を歯の表面に塗布し、一時的に歯の表面を微妙にデコボコとさせます。歯の表面にエッチングを行うと、接着力の強化が見込めるという点が特徴です。

原因その4・下顎のブラケットに上の歯が当たる

噛み合わせが深い過蓋咬合の場合、このトラブルによりブラケットが離脱することがあります。歯がブラケットに当たってしまうという状態を避けるためには、いくつかの対処法があります。

  • ブラケットの位置を歯が接触しない部分まで下げる
  • ブラケットの表面を少し削る

原因その5・ブラケットの上で食べ物を噛んだ

治療開始時は、ワイヤーやブラケットを歯に付けることに慣れていません。ついつい固い食べ物を噛んでしまい、離脱というトラブルが生じます。装置を装着した状態に慣れていないため、慣れるまで仕方ないことだと思います。

 

外れやすい方の特徴

ブラケットは先程述べたような理由で外れますが、一定数外れやすいという方がおられます。

  1. 噛む力が強い方
  2. 噛み合わせが深い方
  3. 歯の面積が少ない方
  4. 唾液の量が多い方
  5. ブラケットやワイヤーを舌や歯でついつい触る方

このような方が特に外れやすくなります。小児矯正では歯茎から歯が出きっていないなどの原因が考えられます。

また、噛み合わせが深い方は歯の先端が器具に当たってしまいます。ブラケットやワイヤーを触る癖があると、舌の力がより多くかかることで、外れるリスクが高まります。

ブラケットとワイヤーを使った治療法

装置の種類

ブラケットとワイヤーで矯正治療を行うにあたって、歯に付ける装置は3種類の中から選びます。

  • ワイヤー矯正・・歯の表側に装置をつける
  • ホワイトワイヤー矯正・・ワイヤー矯正のワイヤーを白いワイヤーに変えて目立ちにくくする
  • 裏側矯正(舌側矯正)・・歯の裏側に装置をつけ、周囲の人に治療中と気付かれない

ワイヤー矯正の治療の流れ

ワイヤー矯正の場合の治療の流れについてご説明します。

  1. 来院後、不正咬合の程度を視診やレントゲンによって確認する。同時に虫歯や歯周病がないかもチェックする
  2. 検査の結果、治療が可能な場合は、担当医が治療計画をたてて患者さんに説明する
  3. 歯の表面にブラケットという小さな装置を歯科用接着剤で接着する
  4. ブラケットにワイヤーを通して歯を動かすための力をかける
  5. 少しずつ歯が動いていく
  6. 1ヶ月に1回程度、ワイヤーを取り替える調整のために通院する
  7. 歯が正しい位置に並べば装置を外して、保定期間に入る。保定期間はリテーナーと呼ばれる保定装置を装着して、歯の位置が動かないように固定させる
  8. しっかりとリテーナーを装着して保定期間を過ごした後、歯列矯正が終了する

ワイヤー矯正中にブラケットが外れた場合に関するQ&A

Q

ブラケットが外れた場合、自分で直すことはできますか?

A

ブラケットが外れた場合、自分で修復することはおすすめされません。歯科医院に連絡し、専門家の指導を仰ぐべきです。自分で直そうとすると、さらなるトラブルや痛みを招く可能性があります。

Q

ブラケットが外れやすい人の特徴は何ですか?

A

ブラケットが外れやすい人には、唾液の量が多い人、噛む力が強い人、噛み合わせが深い人、歯の面積が少ない人、ブラケットやワイヤーを触る癖がある人が含まれます。特に、小児矯正の場合、歯茎から歯が完全に出ていないことが原因として考えられます。

Q

ブラケットが外れたらどのように応急処置をすべきですか?

A

ブラケットが歯から取れた場合、きれいに洗って保管し、早めに歯科医院に持参しましょう。担当医に再度接着し直してもらわなければ、その歯は動きません。

まとめ

歯のキャラクター

矯正治療を始める場合は時間を作って予約制の無料カウンセリングを活用し、複数の歯医者さんへ相談しましょう。ブラケットやワイヤーが外れたら口腔内の粘膜や歯茎を傷つけるリスクがあります。医院への通院を面倒くさがってしまうと、歯の動きにも影響を及ぼすので注意しましょう。また、矯正中の歯磨きの方法は大変ですが、むし歯や歯周病とならないようにしっかり磨きましょう。

参考情報:University of Toronto

矯正中にブラケットが外れた場合、患者と治療者にとっていくつかの影響があります。ブラケットの早期脱離は、主に患者固有の要因によって引き起こされることがあります。例えば、若年患者は高齢患者よりもブラケットが外れやすい傾向があります。また、口腔衛生の状態や治療の協力度も脱離に影響を及ぼす可能性があるとされています。【Pierre Dingreville et al., 2021

一方で、固定式矯正装置の使用中にブラケットが外れることは一般的であり、その頻度は様々な要因によって異なりますが、多くの場合、有意な臨床的影響は見られません。【Hasnain Sakrani et al., 2021

矯正治療中に外れた場合は、迅速に矯正歯科医に連絡し、適切な対応を取ることが重要です。再装着や修正が必要になる場合がありますが、適切な処置によって治療の遅延や患者の不便を最小限に抑えることができます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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