裏側矯正

裏側矯正のメリットとデメリット、特徴などを教えて

裏側矯正のメリットとデメリット、特徴などを教えて

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

歯の裏側に装置を付ける裏側矯正という治療方法があります。メリット、デメリット、特徴などについてご説明します。

裏側矯正のメリット

裏側矯正には様々なメリットがあり、目立たない装置をご希望の患者さんに好評です。

  1. 人から見えないので気づかれにくい
  2. 歯の裏側は唾液による洗浄作用が働くので虫歯になりにくい
  3. ワイヤー矯正と比べるとスポーツ時の粘膜の外傷が少ない
  4. 吹奏楽の楽器が吹ける
  5. 表面には何もつけないで良い

1. 人から見えないので気づかれにくい

最大のメリットは、装置が歯の裏側に取り付けられるため、外見上ほとんど見えないことです。これは特に次のような方々にとって大きな利点です。

  • 職業上の理由による必要性・・仕事での見た目を気にする必要がある方(例:営業職や接客業)。
  • プライベートでの理由・・日常生活や特別なイベントで装置を目立たせたくない方。

2. 歯の裏側は唾液による洗浄作用が働くので虫歯になりにくい

唾液は口腔内の洗浄と保護に重要な役割を果たします。以下のような効果があります。

  • 洗浄作用・・唾液は自然な洗浄剤として働き、食べ物の残りカスやプラークを洗い流す効果があります。これにより、裏側に装置がある場合、虫歯リスクが低減します。
  • pHバランス・・唾液は口腔内のpHバランスを保ち、酸の中和を助けます。食後にお口の中が酸性の環境になることが虫歯の原因となるため、唾液の中和作用は虫歯予防に有効です。

3. ワイヤー矯正と比べるとスポーツ時の粘膜の外傷が少ない

スポーツをする際に表側矯正の場合、装置が口腔内の粘膜に触れて外傷を引き起こすことがありますが、裏側矯正ではこのリスクが軽減されます。

  • スポーツ中の安全性・・裏側に装置があるため、スポーツ中の接触や衝撃で頬や唇の内側を傷つけるリスクが減少します。
  • スポーツ中の快適さ・・アクティブに動く際の不快感が少なく、スポーツに集中しやすくなります。

4. 吹奏楽の楽器が吹ける

吹奏楽の楽器を演奏する際、特に金管楽器や木管楽器では口の形や唇の動きが重要です。裏側矯正はこの点で以下のメリットがあります。

  • 自然な口の形を維持・・装置が裏側にあるため、口をすぼめる動きや唇の位置に影響が少なく、楽器演奏時の自然な口の形を保ちやすいです。
  • 音の質の維持・・表側の装置がないことで、唇や舌の動きがスムーズになり、音の品質や演奏の精度に良い影響を与えます。

5. 歯の表面には何もつけないで良い

裏側矯正では、装置が裏側に取り付けられるため、表面には何も装着しません。これには以下の利点があります。

  • 歯の健康保持・・表面に装置がないため、エナメル質が傷ついたり変色するリスクが減少します。
  • 自然な見た目・・笑ったり話したりしても装置が見えないため、自然な見た目をキープできます。
  • 簡単な歯磨き・・表面に装置がないことで、歯磨きがしやすく、プラークや食べ物の残りカスを効果的に取り除けます。

裏側矯正のデメリット

裏側矯正にはデメリットもあります。

  1. サ行、タ行が発音しにくい
  2. 上の前歯の装置が下の歯に当たるので奥歯でものが噛みづらいことがある
  3. 装置が見えないので歯みがきがしにくい
  4. 装置で舌に口内炎などの傷が出来ることがある
  5. 費用が高い

1. サ行、タ行が発音しにくい

装置が舌に近い位置に取り付けられるため、特定の音の発音に影響が出ることがあります。

  • 発音の難しさ・・「サ行」や「タ行」の音を発音する際、舌が装置に触れることで、音が不明瞭になったり、舌足らずな発音になることがあります。

適応期間

多くの場合、2~3週間程度で舌が装置に慣れ、発音の問題が改善されます。舌の筋肉が装置の位置に適応し、自然な発音が戻るための時間が必要です。

2. 上の前歯の装置が下の前歯に当たるので奥歯でものが噛みづらいことがある

上の前歯に装置が付いている場合、下の前歯との接触が問題になることがあります。

  • 咬合の影響・・装置が下の前歯に当たることで、噛み合わせが変わり、奥歯でものを噛むのが難しくなることがあります。これにより、食事中の不快感や噛む力の低下が起こることがあります。

対策

担当医は、咬合のバランスを調整するために装置の位置や形を工夫することがあります。また、必要に応じて一時的に柔らかい食事を摂ることで、適応期間を乗り越えることができます。

3. 歯の裏側は見えないのでセルフケアがしにくい

装置が見えない場所に取り付けられるため、セルフケアが難しくなります。

  • 視認性の低下・・装置が裏側にあるため、鏡を見ながらの歯磨きが難しく、見えない部分を丁寧に磨く必要があります。
  • 清掃の困難さ・・歯ブラシが届きにくい場所が増えるため、プラークや食べ物の残りが残りやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

対策

デンタルミラーと呼ばれる小さな鏡をお口の中に差し込んで、それで装置を見ながら丁寧にブラッシングしましょう。また、装置に絡まった食べ物のカスや汚れを除去するためには、歯間ブラシやワンタフトブラシの使用が推奨されます。また、定期的に健診とクリーニングを受けることも重要です。

4. 装置で舌に口内炎などの傷が出来ることがある

装置が舌に触れることで、舌に傷ができやすくなります。

  • 物理的刺激・・装置が舌に直接当たるため、動きの多い舌が擦れやすく、口内炎や小さな傷ができやすくなります。
  • 不快感・・傷や口内炎ができると、食事や話す際に痛みを感じることがあります。特に最初の数週間は不快感が強くなることがあります。

対策

担当医は、お口の中に傷ができにくいように装置の位置や形を調整することができます。また、矯正用のワックスを使用して装置の表面を滑らかにすることで、舌への刺激を減らすことができます。

5. 費用が高い

裏側矯正は、表側矯正と比べて費用が高くなる傾向があります。

  • 技術と設備のコスト・・裏側矯正は、カスタムメイドの装置を使用するため、製作コストが高くなります。また、装置の取り付けには高度な技術と専門的な設備が必要です。
  • 治療時間と手間・・装置の取り付けや調整に時間がかかり、担当医の手間が増えるため、その分費用が高くなります。

対策

治療の総費用については事前に詳細な見積もりを出してもらい、費用対効果を考慮した上で治療を進めることが重要です。また、分割払いなどの支払いプランを利用することも検討できます。

これらのデメリットを理解した上で、裏側矯正がご自身に合っているかを判断することが大切です。担当医と十分に相談し、最適な方法を選びましょう。

ワイヤー矯正(表側)と裏側矯正(舌側)の比較表

  ワイヤー矯正(表側) 裏側矯正(舌側)
審美性・見た目 白いセラミックのブラケットと金属のワイヤー(またはホワイトワイヤー:別途料金)。ホワイトワイヤーを使えばそれほど目立たない。 歯の裏側に装置を付けるので殆ど見えない。人に気づかれない。
装着時の違和感 多少の違和感はあるがすぐに慣れる程度。 表側と比べると違和感がある。個人差があるが1~2程度で慣れる。

発音・発声

殆ど問題ない。 装置が舌に当たるので発音しにくい。サ行、タ行、ラ行が発音しづらいが2~3週間で慣れる。
虫歯のリスク 虫歯になりやすい。 唾液の自浄作用で虫歯にはなりにくいが、歯磨きが不十分だと歯肉炎になりやすい。
口内炎のリスク 頬の内側の粘膜を刺激して口内炎が出来る場合がある。 装置が舌に当たって口内炎が出来る場合がある。
費用 他の装置と比べると費用はやや抑えられる。 他の装置と比べると高額になる。
治療期間 表側と裏側で違いはない。 表側と裏側で違いはない。

 

裏側矯正には向いていない症例

  • 奥歯を多く失った方
  • 歯が擦り減って短くなっている方
  • 骨格に原因があって下顎が長くなっている方

動画で見る裏側矯正

まとめ

裏側矯正

裏側矯正は、歯の裏側にブラケット、ワイヤーなどの装置を取り付けて、きれいな歯並びに整えていく治療法です。歯のガタガタや出っ歯が気になっているけれど治療をしていることを周囲の人に知られたくない方は、裏側矯正をご検討ください。目立たない装置には、他にインビザライン(マウスピース型装置)があります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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