ワイヤー矯正に使う装置の代表的なものはブラケットとワイヤーですが、他にも細々とした装置を使用しますので、ご説明します。装置について知ることで、お口の中でどんなふうに歯を動かそうとしているのかについての理解が深まります。
目次
ワイヤー矯正の装置の構成
ワイヤー矯正のための装置はどのような部品で構成されているのでしょうか? 代表的な装置についてご説明します。
バンド
主に奥歯にはめる銀色の輪。大きな歯に確実にフィットさせて固定するためにチューブがついています。ぴったりしたバンドを合わせるため、いくつかのサイズがあります。
チューブ
バンドや奥歯に付ける金属製の筒。この筒にワイヤーを通して歯を動かしていきます。
セメント
バンドを歯に固定する接着剤です。粉と液を混ぜるタイプや光で硬化させるタイプなどがあります。
ブラケット
歯を動かすための小さな装置で歯1本1本にに接着します。金属のものやセラミック、樹脂(プラスチック)製のものがあり、ワイヤー矯正ではとても大切な装置です。
固いものをかんだりするとはずれることがあります。ブラケットが外れてしまうと、その歯を動かすことが出来ませんので、早めに歯科医院に行って再度接着する必要があります。
接着剤
ブラケットを歯につけるための接着剤で、さまざまな種類があります。
結紮(けっさつ)線
ブラケットとアーチワイヤーを固定する細い針金。結紮線としてワイヤーを使う代わりにゴムのリングを使う場合もあります。
アーチワイヤー
歯を動かすためのワイヤーです。歯のラインに沿って曲げて使います。太さは様々あり、細いワイヤーの方が痛みが少ないため、最初にワイヤーをつける時には細めのワイヤーを使用します。
ワイヤーは2ヶ月に1度くらいの頻度で交換して調整を行う必要があります。その際には来院して頂き、歯が効果的に動くように調整します。
材質も形状記憶合金のものステンレススティールやニッケルチタン合金など、いくつかの種類があります。銀色の金属が目立って嫌だという方のために、白い樹脂をワイヤーに巻き付けたホワイトワイヤーも使用できます。※当院ではホワイトワイヤーは別途料金がかかります。
エラスティック
結紮線の代わりに用いたり、歯を動かす動かす目的で上下の装置にかける小さな輪ゴムのこと。です。
ゴムの収縮性を利用して上下の歯を動かして、しっかりとした噛み合わせや歯並びを作ります。
フック
歯を動かすためのエラスティック(ゴム)などをひっかけるためのもの。
コイル
歯を動かすために用いるバネ。アーチワイヤーに通して歯と歯の間にはさみこんでバネの弾力で歯を引っ張って動かします。
以上が一般的に用いる材料です。
ワイヤー矯正とは?
ワイヤー矯正とは、ブラケットと呼ばれる小さなボタンのような装置を歯の表側に貼りつけ、ブラケットの溝にアーチワイヤーを通して歯を移動させてきれいに配列し、かみ合わせを良くしていく治療方法のことをいいます。
ブラケットが歯に接着出来たらワイヤーを装着して、1歯ずつ結紮用の細いワイヤーで結んでいきます。細い針金で1歯ずつしっかりと締めていくことで、それぞれの歯に的確に力を加えることができます。
歯は弱い力をかけ続けることで動いていきます。歯を支えている骨は新陳代謝によって少しずつ新しい骨と古い骨が置き換わり、歯が動いた状態で安定していきます。
ワイヤー矯正が終了したら、リテーナー(保定装置)を一定期間装着して歯列の後戻りを防ぎます。
金属のブラケットとセラミックのブラケット
昔は歯列矯正といえばワイヤー矯正のことを指し、マルチブラケット装置とも呼ばれます。患者さんがニコッと笑うと、歯につけた銀色の金属製のブラケットとワイヤーがとても目立つというのが、一般的な矯正に対する印象ではないでしょうか?
マルチブラケット装置による矯正歯科治療は19世紀に始まりました。1970年頃のワイヤー矯正装置は、全ての歯にバンドと呼ばれる金属の帯を巻いていたため、とても目立つものでした。
現在ではバンドは主に奥歯にだけ使われるようになり、他の歯には小さなブラケットを歯に直接接着するようになりました。更に、ブラケットの材質も従来の銀色の金属のものの他に、セラミックやプラスチック製の、歯の色に馴染むものが開発され、昔の装置に比べると目立ちにくいものになりました。
審美性の高い白いブラケットや透明なブラケット
最近では、白いセラミックのブラケットや透明なプラスチックのブラケットが登場し、従来からある銀色のブラケットと比べると格段に目立ちにくくなりました。そのため、一時期は目立ちやすいイメージがあるためあまり人気がなかったのですが、今ではワイヤー矯正を選ぶ方が増えてきています。
しかし白や透明のブラケットは、銀色の金属のブラケットに比べると、一般的に大きさがひと回りくらい大きくなっています。そのため歯みがきが難しかったり、装着後の違和感が増すこともあります。
また、金属に比べて歯の動きが遅いため、担当医によっては歯が動きやすくなるよう金属のブラケットをおすすめするケースもあります。
使われているワイヤーなどは銀色のものがほとんどですが、白い樹脂でコーティングされた白いワイヤーも存在します。(※当院ではホワイトワイヤーは別途料金となります。)患者さんのご希望があれば使用可能ですので、使ってみてはいかがでしょうか。
ワイヤー矯正の痛みなどを軽減する材料の開発
ワイヤー矯正に用いる材料は大きく変わってきています。技術の進歩にともなって装置も小型化されており、また使用するワイヤーも柔らかいものが開発され、治療の痛みが大きく軽減されています。
ワイヤー矯正の装置に関するQ&A
ワイヤー矯正装置の主要な部品にはどのようなものがありますか?
ワイヤー矯正の装置には、バンド、チューブ、セメント、ブラケット、接着剤、結紮線、アーチワイヤー、エラスティック、フック、コイルなどが含まれます。これらの部品が歯を動かし、矯正治療を行うのに使用されます。
ブラケットとは何ですか?
ブラケットは小さな装置で、歯1本1本に接着され、ワイヤーを通して歯を動かすのに使用されます。ブラケットの種類には金属、セラミック、樹脂などがあり、歯を正確に動かす役割を果たします。ブラケットが外れると、ワイヤーの力がかからない歯が出来てしまうために治療効果が損なわれます。そのため、再度接着する必要があります。
ワイヤー矯正治療で使用されるアーチワイヤーの役割と特徴は何ですか?
アーチワイヤーは歯を動かすためのワイヤーで、歯のラインに沿って曲げて使用されます。細いワイヤーは初期の段階で使用され、痛みが少ないです。アーチワイヤーは2ヶ月に1度程度交換され、歯の調整が行われます。材質にはステンレススティールやニッケルチタン合金などがあります。太いワイヤー程大きな力をかけることが出来ます。
まとめ
ワイヤー矯正についてご説明しました。ワイヤー矯正はブラケットやワイヤーを目立たないものに替えることで、かなり目立たない状態に出来ます。
より目立たない装置をご希望の場合は、ブラケットとワイヤーを歯の裏側につける裏側矯正や、透明なマウスピースによって歯並びを整えていくインビザラインがあります。ただ、症例によってはマウスピース矯正では難しいケースもありますので、初診カウンセリングの際に担当医にご相談ください。
ワイヤー矯正装置は、不正な歯並びや咬合の矯正に広く使用されています。この装置には、主にブラケット、アーチワイヤー、およびリゲーションデバイス(ラバーバンドや金属のタイ)などのコンポーネントが含まれています。各コンポーネントは、特定の役割を果たし、矯正治療の効率と効果を高めます。
1. ブラケット
ブラケットは、個々の歯に接着され、アーチワイヤーを支える基本的な要素です。ブラケットは、金属、セラミック、またはプラスチック製のものがあります。ブラケットの設計と材質は、治療の審美性と効率に大きく影響を与えます。【Umarevathi Gopalakrishnan et al., 2022】
2. アーチワイヤー
アーチワイヤーは、ブラケットを通して伸び、歯に連続的な力を加えることで、歯を所望の位置に移動させます。アーチワイヤーには、ニッケルチタン(ニチノール)、ステンレススチール、ベータチタンなど、さまざまな材料が使用されます。それぞれの材料は、異なる柔軟性、強度、および力の特性を持ち、治療計画に応じて選択されます。【W. F. Tang et al., 2020】
これらのコンポーネントは相互に作用し、効果的な歯の移動と治療結果の達成を可能にします。患者のニーズと治療計画に応じて、これらのコンポーネントの選択と組み合わせが最適化されます。