
裏側矯正は歯の裏側にワイヤーとブラケット等の装置をつける方法です。裏側矯正の治療中には、どんな悩みがあるのでしょうか? 代表的なものは①発音・滑舌が悪くなる、②食べ物が装置にひっかかる、③装置が当たって舌が痛い、というものです。それぞれについてご説明します。
裏側矯正の治療中の悩み
1. 発音・滑舌が悪くなる
見た目に関してはメリットの多い裏側矯正ですが、喋りづらくなったり、発音や滑舌に影響が出ることがあります。
言葉を発する時には舌が重要な働きをします。装置を歯の裏側につけるということは、舌を置くスペースが狭くなってしまい、発音や滑舌に影響を与えます。
しかし、実際に装置が発音の邪魔になるというよりは、無意識のうちに舌が装置を避けるような動きをして、発音がしにくくなるということが多いです。
発音や滑舌に関しては、装置がついた状態に舌が慣れることで自然に改善していきます。慣れるまでには個人差がありますが、早くて1週間、遅い方でも2~3週間で慣れてしまいます。
発音練習
毎日数分間、声に出して本を読む、早口言葉を練習するなど、意識的に発音練習を行うことで、舌の動きが装置に慣れ、滑舌の改善が期待できます。
ゆっくり話す
話す速度を意識的に遅くすることで、正確な発音がしやすくなります。焦らずゆっくりと話すことで、聞き手にも理解しやすくなります。
鏡を使った練習
鏡の前で話すことで、舌の動きや口の形を視覚的に確認し、修正することができます。これにより、効果的な発音練習が可能です。
専門家の指導
言語聴覚士などの専門家に相談し、適切な指導を受けることで、効率的に滑舌の問題を改善できます。
これらの方法を継続的に行うことで、徐々に話しやすさが向上します。
2.食事中の不便さと解決方法
裏側矯正装置は食事中に食べ物が引っかかりやすく、食べにくさを感じることがあります。これを軽減するための工夫を以下にまとめました。
食材の選択
粘着性の高い食べ物や硬い食材は避け、柔らかくて噛みやすいものを選びましょう。例えば、パンよりもご飯、ステーキよりも煮魚などがおすすめです。
一口のサイズを小さく
食べ物を小さく切ってから口に入れることで、装置に引っかかるリスクを減らせます。
水分と一緒に摂取
食べ物が装置に絡まりにくくなるよう、水やお茶などの飲み物と一緒に食べると良いでしょう。
食後の口すすぎ
食事後にすぐ口をすすぐことで、装置に残った食べかすを取り除きやすくなります。
これらの対策を実践することで、食事中の不便さを軽減し、ストレスを減らすことができます。特に食後の口腔ケアを習慣化することで、清潔な口内環境を維持することが可能になります。
3.歯磨きの難しさと効果的な口腔ケア
装置に絡まりやすいなどの理由で食べにくい食べ物があります。特に絡まりやすいのは、細めの麺類や繊維質の細長いえのき、もやし、菜っぱ類などです。
これらの食品を食べる際には、普段よりも小さめにカットしたり、太めの麺類や短いパスタを選ぶと良いでしょう。
ワイヤーも歯の裏側に装着しますので、食べ物が絡まるのも歯の裏側で、他人からは見えません。そのため人目を気にすることなく食事が出来ます。
食後は早めに歯ブラシで食べカスを取らなければなりませんが、食事中は人の目を気にする必要がないというメリットがあります。
矯正専用歯ブラシの使用
毛先が細く、装置の隙間に入りやすい矯正専用の歯ブラシを活用しましょう。
タフトブラシの併用
通常の歯ブラシでは届きにくい部分を磨くために、先が小さいタフトブラシを使用すると効果的です。
デンタルフロスや歯間ブラシの活用
装置の周囲に溜まりやすい歯垢を除去するため、フロスや歯間ブラシを使いましょう。
フッ素入りの歯磨き粉を使用
フッ素には虫歯予防効果があるため、矯正治療中は特に意識して使用するのがおすすめです。
定期的な健診を受ける
歯科医院でのクリーニングやチェックを受けることで、清潔な状態を保ちやすくなります。
正しいケアを継続することで、矯正中でも健康な歯と歯茎を維持できます。毎日の口腔ケアを丁寧に行いましょう。
4. 痛みや違和感への対処法
裏側矯正を開始した直後、多くの患者さんが痛みや違和感を感じます。これは装置が舌や口内の柔らかい組織に接触するためです。通常、数日から数週間で慣れることが多いですが、痛みが続く場合や強い場合には以下の対処法を検討してください。
鎮痛剤の服用
市販の鎮痛剤を使用することで、一時的に痛みを和らげることができます。服用前には必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
矯正用ワックスの使用
装置の突起部分にワックスを適用することで、舌や口内の擦れを軽減できます。ワックスは歯科医院や薬局で入手可能です。
口腔内のリンス
生理食塩水や抗菌性のマウスウォッシュで口をすすぐことで、炎症や痛みを軽減できます。特に食後に行うと効果的です。
柔らかい食事の摂取
硬い食べ物は避け、柔らかい食事を選ぶことで、痛みを感じにくくなります。スープやヨーグルト、煮物などがおすすめです。
これらの対処法を組み合わせることで、痛みや違和感を効果的に軽減できます。しかし、痛みが長期間続く場合や、症状が悪化する場合は、早めに担当医に相談してください。
5. 口腔内の傷や口内炎の予防と対処
装置が当たって舌に痛みを感じることがあります。舌の周辺は敏感なので、ワイヤーや装置が少し触れただけでも痛むことがあります。最近開発された装置は、装置が舌に当たって痛むということは少なくなったものの、完全になくなったわけではありません。
ワイヤーが舌に刺さって痛みが生じる場合もあります。後方で余ったワイヤーが舌に刺さるために起こるのですが、患者さん自身では対処できないため、早めに歯科医院にご連絡頂き、ワイヤーの調整をすると痛みはなくなります。
矯正用ワックスの活用
装置の当たりが強い部分にワックスを塗ることで、舌や粘膜への刺激を軽減できます。
舌の保湿
口が乾燥すると傷が悪化しやすいため、こまめに水分を補給しましょう。
ビタミンB群の摂取
ビタミンB2やB6が不足すると口内炎ができやすくなるため、バランスの良い食事を心がけましょう。
口腔用ジェルやうがい薬の使用
傷ができた場合、炎症を抑えるジェルや殺菌作用のあるうがい薬を使用することで、治癒を早めることができます。
舌の動きを工夫し、装置に強く当たらないよう意識することも有効です。口内炎が頻繁に発生する場合は、歯科医師に相談し、装置の調整を検討してもらいましょう。
治療中の悩みの解決方法
裏側矯正(舌側矯正)の治療中には、さまざまな悩みや不便を感じることがあります。以下に、その解決方法をご説明します。
1. 話しづらさを解決
裏側矯正では、舌に近い位置にブラケットが装着されるため、話しづらくなることがあります。
解決方法
- 話す練習・・話すことに慣れるために、自宅で大声で読書をしたり、鏡の前で話す練習をします。
- スピーチセラピー・・どうしても話しにくい場合は、必要に応じてスピーチセラピストの助けを借りることも考えられます。
2. 舌の痛みや傷
矯正器具が舌に触れて痛みや傷ができることがあります。
解決方法
- ワックスの使用・・歯科医から提供される矯正ワックスを舌に当たっている装置の部分に塗り、当たりを柔らげます。
- 口腔ケア製品・・口内炎や傷を防ぐために、マウスウォッシュやデンタルリンスなどの専用の口腔ケア製品を使用します。
3. 食事の不便
裏側矯正中は食べ物が矯正器具に引っかかりやすくなり、食事が不便になることがあります。
解決方法
- 食事の工夫・・硬いものや粘着性の高い食べ物を避け、細かく切ったり、柔らかい食べ物を選びます。
- 食後の歯磨き・・食事後にすぐ歯を磨くことで、食べ物のカスが装置についたままになることを防ぎます。外出先でも歯磨きが行えるよう、携帯用の歯ブラシを持ち歩くと便利です。
4. 歯磨きの難しさ
裏側矯正は通常の矯正に比べて清掃が難しいため、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。
解決方法
- 専用の歯ブラシの使用・・裏側矯正用の専用歯ブラシを使用して、細部までしっかりと磨いて汚れを落とします。
- 定期的な歯科健診・・定期的に歯科医に診てもらい、プロフェッショナルなクリーニングを受けることが重要です。
5. 矯正器具の脱離
裏側矯正のブラケットやワイヤーが外れる(脱離する)ことがあります。
解決方法
- 速やかに歯科医院に連絡する・・ブラケットやワイヤーが外れた場合は、すぐに歯医者に連絡して付け直してもらいます。
- 外れやすい場合は注意が必要・・噛み合わせが強すぎる場合やスポーツをする場合は、特に注意します。
6. 異物感
最初の数週間は、矯正器具に対する異物感を感じることがあります。
解決方法
- 慣れるまでの期間・・時間と共に口腔内の感覚は慣れてきます。最初の数週間は忍耐強く過ごします。
- 正しい方法で歯磨きを行う・・口腔内を清潔に保ち、異物感を軽減するために口腔ケアを徹底します。歯の裏側の装置をきれいに清掃するにはコツがありますので、早くそれを会得しましょう。
これらの対策を実施することで、裏側矯正中の悩みを軽減し、快適な治療を続けることができます。矯正中に何か問題が発生した場合は、必ず担当の歯科医に相談することが大切です。
裏側矯正の仕組み
舌側矯正は歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーをつけますので、他人からは装置がほとんど見えず、人の目を気にすることなく矯正治療を受けることが出来ます。
ブラケットは小さなボタンのような装置で、各歯に貼り付けられます。ブラケットにワイヤーを絡ませることで歯に力が加わり、歯を動かしていきます。
まとめ

歯を動かす際には痛みが生じますが、それ以外に起こるお悩みとして、①発音・滑舌が悪くなる、②食べ物が装置にひっかかる、③装置が当たって舌が痛い、についてご説明しました。
慣れによって改善するものもあれば、歯科医院での処置が必要なものもあります。矯正治療中を出来るだけ快適に過ごすために、ぜひ参考になさってください。