八重歯と犬歯はともに糸切り歯のことを指す場合が多いですが、同じ意味なのでしょうか?
八重歯とはどのような状態?
八重歯とは、歯列が整わずに特定の歯が他の歯よりも外側または内側に飛び出している状態を指します。主に上顎の犬歯で見られることが多く、日本では昔から「可愛らしい」とされることもあります。
八重歯の特徴
- 歯の一部が他の歯と重なって歯列から飛び出ている状態や、ガタガタの歯並びを指します。
- 犬歯に限らず、どの歯でも歯列から飛び出た状態になる可能性があります。
- 歯みがきの磨き残しが起こりやすく、むし歯や歯周病のリスクが上がります。
この状態が続くと、噛み合わせや歯磨きに影響を及ぼす場合があります。
犬歯とは?その役割と特徴
犬歯とは、上顎と下顎の中央から3番目に位置する歯で、尖った形状をしているのが特徴です。この歯は食べ物を引き裂く役割を持ち、歯列全体の安定に寄与します。
犬歯の特徴
- 前歯の中心から3番目の先が尖った歯で、糸切り歯とも呼ばれます。
- 食べ物にがぶっと噛みついて、噛み切るのが犬歯の役割です。
- 他の歯よりも根が長く、非常に頑丈。
- 力を受け止め、他の歯への負担を減らす役割があります。
- 一般的に他の歯より後に生えてきて、八重歯になりやすい特徴があります。
犬歯は人間の咀嚼機能において欠かせない存在であり、その位置や形状が歯列の見た目にも大きく影響を与えます。
八重歯と犬歯の違い
八重歯は犬歯が歯列から前に飛び出しているイメージがありますが、犬歯に限らず、歯列から大きくはみ出している歯の状態を八重歯と呼びます。つまり、犬歯とは歯の名前をいい、八重歯は歯並びの不正咬合の状態を表しています。
歯が1本だけ大きく外側に外れた位置に生えてしまうと、どうしてそんな歯並びになってしまうのか不思議に思われるかもしれません。犬歯は永久歯への生え変わりの際に順番的に最後の方に生えてくるため、顎が小さくて歯が全てきれいに並ぶだけのスペースが足りない場合は、前に飛び出してしまうことが多いのです。
犬歯は物を噛み切るときに力のかかる歯ですので、犬歯の位置が正常でないと他の歯に負担がかかってしまいます。
八重歯が犬歯に多く見られる理由
八重歯が犬歯に多く見られるのは、犬歯が歯列の中で最後に生えるためです。乳歯から永久歯への生え変わりがスムーズに行われなかったり、顎の発育が不十分だった場合、犬歯が生えるスペースが確保できず、八重歯になることがあります。
要因
- 遺伝的な要素
- 顎の成長不足
- 乳歯の早期脱落や長期残存
その結果、犬歯が正常な位置に収まらず、八重歯となるケースが多くなります。
八重歯はチャームポイント?
欧米では左右対称なものが美しいとされていますが、日本では、足りないものや不揃いなもの、アンバランスなものに美を見出すという文化があります。盆栽の微妙な形や角度を想像していただけると、わかりやすいかもしれません。
八重歯があると幼く見えるため、八重歯=かわいいという印象を持つ方が多いようです。しかし、欧米においてはあまり良い印象ではなく、吸血鬼の歯などと呼ばれて嫌われています。
また、美しい歯並びは社会的なステータスという文化もあり、八重歯やガタガタの歯は子供時代に家が貧しく矯正治療をしてもらえなかったなどと思われがちです。
八重歯のメリットとデメリット
八重歯には以下のようなメリットとデメリットが存在します。
八重歯のメリット
1. 審美的・個性的な魅力
八重歯は、歯並びの一部が飛び出しているため、他の歯と違った「個性的な印象」を与えることがあります。特に日本では、「かわいらしさ」や「幼さ」を象徴する特徴として認識されることが多く、若い女性を中心に八重歯が「チャームポイント」とされる場合があります。
2. 親しみやすさや自然な美しさ
整った歯並びは確かに健康的で美しいとされますが、一方で「完璧すぎる歯列」は人工的に感じられることもあります。八重歯は適度な不完全さを持つため、自然な美しさや親しみやすさを感じさせる特徴として注目されることがあります。
心理的な影響
八重歯を持つ人が「無邪気さ」や「人懐っこさ」をイメージさせることがあり、これが相手に好印象を与えることがあります。
3. 文化的な背景
八重歯の評価は文化によって大きく異なりますが、日本をはじめとしたアジア圏では、歴史的・文化的な背景から「魅力的」とされることがあり、ポジティブな評価を受けやすいです。
4. 他者との差別化
現代では、矯正治療の普及により、多くの人が整った歯並びを持つようになっています。その中で、八重歯は他者と差別化される特徴となり、特に第一印象で強く印象に残りやすいというメリットがあります。
八重歯のデメリット
八重歯にはデメリットもありますのでご説明します。
1. 口内炎を起こすことがある
犬歯は尖っていますので、位置や向きによっては、お口の中の粘膜や唇が飛び出た歯の先端に当たって口内炎を起こすことがあります。転んだりぶつかったり事故にあったときにも、歯の先端で口を切ってしまうこともあります。
2. 口呼吸になりやすい
八重歯があると口が閉じにくく、自然に口呼吸になってしまうことがあります。口呼吸になると口内が乾燥しがちになり、細菌が繁殖しやすくなるので虫歯や歯周病のリスクがあがります。
3. 見た目のコンプレックス
笑うと八重歯がくっきり見えるのがコンプレックスになっている方もおられます。歯並びの悪さが恥ずかしく、人前で笑えなくなり、不自由な生活となります。
このように、八重歯は見た目だけでなく健康面でも影響を及ぼすことがあります。
八重歯の治療方法
子供の矯正では、将来八重歯やガタガタの歯並びにならないように、顎を大きく成長させる治療を行います。大人の矯正で既に八重歯になってしまっている場合は、小臼歯を抜歯して出来たスペースを利用して、歯列から飛び出た歯が歯列にきちんと収まるように整えていきます。
歯列から飛び出た歯を抜歯すると思っておられる方も多いのですが、犬歯が飛び出ている場合、犬歯には物を噛み切るという大切な機能的な役割がありますので、犬歯を抜歯することはありません。その代わりに犬歯の奥に生えている第1小臼歯か第2小臼歯を抜歯するケースがほとんどです。
装置はワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正が可能ですが、ワイヤー矯正で行うことが多いです。
八重歯に対する矯正治療の選択肢
八重歯を矯正治療で整える方法はいくつかあります。以下は代表的な選択肢です。
- ワイヤー矯正・・歯列全体を整えるための一般的な方法。
- インビザライン・・透明なマウスピースを使用し、目立たない形で矯正を進める。
- 部分矯正・・八重歯の位置だけを調整する治療法。
治療を開始するタイミングとしては、早期発見・早期治療が理想的です。特に成長期の子どもにおいては、顎の発育を利用した矯正が効果的です。
まとめ
八重歯は犬歯に多く見られる特徴的な歯列不正の一つです。その見た目や周囲の人の感じ方だけでなく、健康面での影響も考慮し、適切な対策やケアを行うことが重要です。
もし八重歯になる前に、小学生くらいの時期に矯正治療を始められたら、顎を発育させて歯が生えてくるスペースを確保することが出来ます。大人になってからの八重歯の治療では、歯をきれいに並べるために小臼歯の抜歯が必要になるケースが多いです。