
歯列矯正を検討する際、装置の見た目はとても気になると思います。歯の裏側に装置を装着する「裏側矯正」は、見た目を気にせず治療を進められる方法として注目を集めています。裏側矯正の特徴やメリット・デメリット、そして人気の理由についてご説明します。
裏側矯正とは
裏側矯正(リンガル矯正)とは、歯の裏側(舌側)にブラケットやワイヤーなどの矯正装置を装着し、歯並びを整える矯正方法です。従来の表側矯正とは異なり、装置が外から見えないため、審美性を重視する方に適しています。
裏側矯正のメリット
矯正装置が目立たない
装置が歯の裏側に装着されるため、口を開けても矯正装置が外からほとんど見えません。仕事や日常生活で人と接する機会が多い方にとって、見た目の影響を最小限に抑えることができます。
虫歯や歯周病のリスクが低減
歯の裏側は唾液の流れが豊富であり、唾液には自浄作用があるため、歯垢が溜まりにくく、虫歯や歯周病のリスクが低くなります。そのため、矯正治療中の口腔内環境を良好に保ちやすいのが特徴です。
出っ歯の改善に効果的
裏側矯正は、歯を内側に引っ張る力が強く働くため、前歯が突出している出っ歯(上顎前突)の改善に効果的です。特に前歯を後方へ移動させる動きが得意な矯正方法であり、出っ歯を治したい方に適しています。
舌癖の改善
舌で歯を押す癖(舌癖)があると、歯並びの悪化につながります。裏側矯正では、装置が舌に触れることで無意識の舌癖を防ぎ、結果的に歯並びの安定化に貢献します。
矯正中のホワイトニングが可能
装置が歯の裏側にあるため、表側の歯面が自由にケアできます。そのため、矯正中でもホワイトニングを行うことができ、美しい歯を維持しやすくなります。
裏側矯正は、見た目を気にせず治療を進められるだけでなく、虫歯や歯周病のリスクを抑えたり、舌癖の改善が期待できるなど、多くのメリットがあります。
裏側矯正のデメリット
発音への影響
装置が舌に触れることで、特に「サ行」や「タ行」などの発音がしづらくなることがあります。多くの場合、数週間で慣れますが、個人差があります。
歯磨きの難しさ
歯の裏側に装置があるため、歯磨きが難しく感じることがあります。特に装置周りの清掃には注意が必要で、タフトブラシなどの専用器具を使用することが推奨されます。
費用が高い
裏側矯正は、表側矯正に比べて費用が高くなる傾向があります。これは、装置の製作や装着に高度な技術と時間が必要なためです。
治療期間の延長
症例によっては、表側矯正よりも治療期間が長くなることがあります。これは、装置の調整や歯の動きに時間がかかるためです。
裏側矯正には、発音の違和感や歯磨きの難しさ、費用の高さなどのデメリットもあります。そのため、メリットとデメリットをよく理解した上で選択することが重要です。
裏側矯正が選ばれる理由とは?
裏側矯正が人気を集める背景には、以下のようなさまざまな理由があります。
審美性の高さ
矯正装置が歯の裏側にあるため、矯正中であっても他人に気づかれにくいのが最大の魅力です。特に人と接する機会の多い職業や、見た目を気にする年齢層において人気が高まっています。
職業やライフスタイルに適応しやすい
接客業、営業職、芸能関係の方々にとって、口元の美しさは大切な要素です。裏側矯正ならば、矯正中であることを周囲に知られることなく歯並びを整えられます。
心理的な負担の軽減
表側矯正では、矯正装置が目立つことでコンプレックスを感じる人も少なくありません。裏側矯正ならば、矯正していることがわかりにくいため、自信を持って人前に出ることができます。
成人矯正の需要の増加
近年では、成人になってから矯正を始める人が増えています。大人になってから矯正を考える場合、装置の目立たない方法を求める傾向が強く、裏側矯正の人気が高まっています。
技術の進歩による快適性の向上
昔に比べて裏側矯正の技術は進歩しており、違和感の少ない装置や、より短期間で治療が可能な方法が登場しています。これにより、以前よりも選びやすい治療法となっています。
若年層からの支持
最近では、若年層を中心に矯正治療の関心が高まっており、特に審美性を重視する傾向が強いです。SNSやメディアでの情報共有が進む中で、矯正中でも目立たない裏側矯正が選ばれやすくなっています。
結婚やイベントを控えた人のニーズ
結婚式や成人式など、特別なイベントを控えている方にとって、矯正装置が目立たないことは大きなメリットです。そのため、裏側矯正を選ぶ人が増えています。
このように、裏側矯正は審美性、職業適応性、心理的負担の軽減、成人矯正の需要増加、技術の進歩、若年層からの支持、特別なイベントを控えた人のニーズなど、さまざまな要素が絡み合って人気を集めています。歯並びを整えながらも日常生活の影響を最小限に抑えられることが、多くの人に選ばれる大きな理由となっています。
裏側矯正の費用が高い理由
専門性の高さ
歯の裏側は形状が複雑で視認性も低いため、装置の装着や調整には高度な技術と経験が求められる。
オーダーメイドの装置
患者さん一人ひとりの歯の形状に合わせて特別に設計された装置を使用するため、コストがかかる。
裏側矯正の費用が高いのは、専門的な技術が必要であり、装置がオーダーメイドで作られるためです。そのため、治療を検討する際には費用面も十分に考慮する必要があります。
裏側矯正が得意としている不正咬合は
裏側矯正は、特に以下のような不正咬合の治療に適しています。
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出っ歯(上顎前突)・・上の前歯が前に突出している状態で、裏側矯正では前歯を後方へ動かしやすいため、効果的に治療できます。
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すきっ歯(空隙歯列)・・歯と歯の間に隙間がある状態で、ワイヤーの調整によって隙間を閉じることが可能です。
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開咬(オープンバイト)・・前歯が噛み合わずに開いた状態で、裏側矯正では奥歯を調整しながら前歯を正しい位置へ誘導できます。
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過蓋咬合(ディープバイト)・・上の前歯が下の前歯を深く覆ってしまう状態で、裏側矯正では前歯の移動をコントロールしながらバランスを整えられます。
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交叉咬合(クロスバイト)・・上下の歯が交差して噛み合う状態で、裏側矯正で適切な咬合へ導くことが可能です。
裏側矯正は、特に出っ歯やすきっ歯、開咬、過蓋咬合、交叉咬合の治療に効果的です。歯を後方へ移動させる力が強いため、前歯の改善に適しており、見た目を気にせず矯正治療を進めることができます。
歯の矯正をする際に気になることは「価格」と「見た目」
歯の矯正をしようと思った時に気になる点は、「価格」と「見た目」とおっしゃる方が多いです。もちろん費用は安いに越したことはありませんし、矯正装置の違いによる「見た目」は気になるところだと思います。
近年では目立たない矯正装置として、裏側矯正やマウスピース矯正が人気です。価格の面ではワイヤー矯正が一番リーズナブルです。
裏側矯正は他の装置と比べると価格は高いのですが、歯の裏側に装置をつけるので正面からは殆ど見えず、他の人に矯正治療をしていることを知られずにこっそりと治療出来ます。
マウスピース矯正も同様に、他人からはわかりづらいですが、マウスピースをつけたままで食事をすることが出来ないため、外食時には食事の前後で付け外しを行う必要があり、外食する機会の多い方には不便です。
まとめ

裏側矯正の人気の高さの理由は、他人に気づかれにくいことです。マウスピース矯正か裏側矯正かで迷っておられる方もおられると思います。どちらの装置がより患者さんにふさわしいかを、矯正担当医と十分に話し合って選びましょう。