
ワイヤー矯正ではどのように歯を動かして歯並びを整えていくのか、疑問に思われる方もおられると思います。ワイヤー矯正で歯を動かしていく仕組みについてご説明します。
ワイヤー矯正って、どんな矯正?
矯正でワイヤーを使用するのは、歯の表面にブラケットという装置をつける方法で歯を動かす「ワイヤー矯正」と、歯の裏側にブランケットをつける「裏側矯正」です。
ワイヤーとブラケットは目立つ?いいえ、目立たない白いものがあります

ワイヤーとブラケットを使った矯正は最も一般的な方法です。歯の矯正というと、マウスピース型の装置も人気がありますが、一般的に、経験を積んだ歯科医師が得意とするのはワイヤーを使った治療です。
ワイヤー矯正は殆どの不正咬合に対応可能で、抜歯を伴う矯正にも適しています。当院で使われているブラケットはセラミックで出来ており、歯に馴染む白い色をしています。そしてワイヤーも銀色のものとは別に、ホワイトワイヤーと呼ばれる白い素材を選ぶことも出来ます。(※ホワイトワイヤーは別料金になります。)
ブラケットを歯に貼り付けてワイヤーを通す
ワイヤー矯正はワイヤーの持つ弾性を利用して歯を動かしていきます。力を歯に伝えるための装置がブラケットと呼ばれる四角のボタンのような形の装置です。
ブラケットは接着剤で歯に直接接着されます。接着することををボンディングといいます。歯並びがきれいになって治療が終わった後は、装置はすべて歯から外します。

当院では歯の色に近いセラミックのブラケットを用いています。エンドの部分にはメタル製の装置を接着します。
ブラケットにはワイヤーを通すためのへこみや穴があり、その部分にワイヤーを通して一つひとつゴムや細い針金で留めます。
他人から見えにくい裏側矯正

「矯正したいけれど、装置が目立つのはちょっと…」と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか? 実は、裏側矯正(舌側矯正)なら、他人からほとんど見えずに歯並びを整えることが可能です。そこで今回は、裏側矯正の特徴やメリットについてご説明します。
裏側矯正とは?
裏側矯正(舌側矯正)は、歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーを装着する矯正方法です。
通常のワイヤー矯正は歯の表側に装置をつけるため、どうしても目立ってしまいますが、裏側矯正なら外からはほとんど見えません。
こんな方におすすめ!
- 矯正装置を周囲に気づかれたくない
- 接客業や人前で話す仕事をしている
- 矯正中でも見た目にこだわりたい
見た目を気にせずに歯並びを改善できるのが、裏側矯正の大きな魅力です。
裏側矯正のメリット
「本当に見えないの?」と疑問に思われるかもしれませんね。裏側矯正には、以下のようなメリットがあります。
1. 外から見えないので、矯正を気づかれにくい
最大のメリットは、人と話しているときや笑ったときに矯正装置が見えないことです。
通常のワイヤー矯正は笑うと装置が見えてしまいますが、裏側矯正ならその心配がありません。
2. 矯正中でも口元の印象を変えずに過ごせる
特に接客業や営業職の方、モデルやアナウンサーなど、仕事柄、見た目を気にする方に選ばれることが多い矯正方法です。
3. 舌の動きによって後戻りしにくい
歯の裏側に装置があることで、舌が自然と歯を正しい位置に押す形になり、矯正後の後戻りが少ないという利点もあります。
4. 金属アレルギーの方でも対応可能
近年では、金属を使わずにセラミック製のブラケットを使用することもできるため、金属アレルギーが気になる方にも適しています。
裏側矯正のデメリット
もちろん、裏側矯正にも気をつけるべきポイントがあります。
→ 矯正開始後の数週間で慣れることがほとんどですが、最初は「舌が装置に当たって話しづらい」と感じる方も。
→ 精密な技術が必要なため、表側矯正よりも費用が高くなる傾向があります。
→ 歯の裏側に装置がつくため、歯磨きの際は専用の歯ブラシやフロスを活用するとよいでしょう。
ワイヤー矯正が向いている人
ワイヤーを使用した矯正は、以下のような方におすすめです。
1. ガタガタの歯並び(叢生)をしっかり治したい人
「歯が重なり合っている」「前歯がデコボコしている」などのケースでは、ワイヤー矯正が最も適しています。ワイヤー矯正なら、複雑な歯の移動もスムーズに行えるため、キレイな歯並びに整えることが可能です。
2. 出っ歯や受け口を改善したい人
- 上の前歯が前に出ている(上顎前突・出っ歯)
- 下の前歯が前に出ている(下顎前突・受け口)
こうした歯並びの問題は、ワイヤー矯正ならしっかりコントロール可能です。
また、抜歯が必要なケースにも対応しやすく、歯全体のバランスを整えることができます。
3. 咬み合わせを改善したい人
「前歯が噛み合わない」「奥歯の咬み合わせがズレている」など、咬み合わせの問題がある方にも、ワイヤー矯正がおすすめです。ワイヤー矯正は、歯をしっかり動かして咬み合わせを調整できるため、矯正後にしっかり噛めるようになります。
4. マウスピース矯正では対応できない症例の人
最近人気のマウスピース矯正(インビザラインなど)は、軽度の症例向きです。
ワイヤー矯正のほうが向いているケース
- 歯を大きく移動させる必要がある
- 抜歯が必要な矯正
- 顎のズレを伴う矯正
「マウスピース矯正に興味があるけれど、適応外かもしれない…」という方は、一度歯科医に相談してみるとよいですね。
5. 確実に矯正を進めたい人
ワイヤー矯正は、装置が歯に固定されているため、24時間しっかりと矯正力がかかるのが特徴です。
一方で、マウスピース矯正は1日20時間以上の装着が必要ですが、装着時間を守らないと効果が出にくいことも。
そのため、
- 「確実に歯を動かしたい!」
- 「装置の着脱を気にせず矯正を進めたい!」
という方には、ワイヤー矯正が向いています。
歯が動く仕組み
歯茎には歯を支えるための歯槽骨(顎の骨)があります。歯槽骨と歯の間には歯根膜と呼ばれる弾力のある薄い組織があり、噛む力がかかったときにクッションの役割をしています。
歯に矯正装置をつけて力を加えると、歯が動く方向側の歯根膜は縮みます。逆に反対側の歯根膜は引っ張られて伸びた状態になります。歯根膜は、常に一定の厚さを保つ性質があるため、力がかかって縮んだ歯根膜は元の厚さに戻ろうとするため、歯の周囲の骨に力が加わり、その結果骨が溶けます。
逆に反対側の伸びた状態の歯根膜は、縮んで元の厚さに戻ろうとしますので、さっきとは逆に歯槽骨を新しく作ります。
この歯根膜が一定の厚さに戻ろうとする力を利用して、一方では歯槽骨を溶かし、また一方では歯槽骨を新しく作る作用がおこり、それを繰り返すことで歯が動いていきます。
一ヶ月で歯はどのくらい動くの?
強い力をかけて歯をどんどん早く動かすということはしません。力をかけすぎると、歯槽骨の吸収ばかりが起こり、新しい骨を作る作用が追いつかないのです。そうなると歯はグラグラになってしまい、歯が早く動く代わりに後戻りもしやすくなり、歯を正しい位置に固定することが出来ません。
そのため歯を動かす際には一ヶ月で約0.5~1ミリ程度動かします。そうすると無理のない安全な状態で歯を動かすことが出来ます。そして月に一度くらいの間隔で通院していただき、ワイヤーの交換と調整を行います。
ワイヤー矯正はマウスピース矯正と比べると、歯の位置の細かい調整が可能で、移動速度が速いことや殆どの酒類の不正咬合に適用出来ることがメリットです。
まとめ

歯並びをきれいにしたいけれど、歯にワイヤーとブラケットをつけるのは気が進まないという方もおられるでしょう。しかし治療後の仕上がりという点では、ワイヤー矯正は歯の微調整が可能なので、かなり精度の高い治療結果が得られます。