歯科矯正全般

大人の歯科矯正にはどんな種類があるの?

大人の歯科矯正にはどんな種類があるの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

「大人になってから矯正を始めるのは遅い?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、大人になってからでも歯科矯正は十分可能ですし、最近では目立ちにくい装置も増えてきています。そこで今回は、大人向けの歯科矯正装置についてご説明します。

大人の歯科矯正装置とは?

大人の矯正治療の特徴

子供の矯正治療と比べて、大人の矯正にはいくつかの特徴があります。

  • 顎の成長が完了しているため、歯の移動に時間がかかる
  • 歯周病のリスクを考慮しながら治療を進める必要がある
  • 目立ちにくい矯正装置を選ぶ方が多い

最近では、仕事や人前で話す機会が多い方でも安心して矯正できるよう、見た目に配慮した装置が増えてきています。

矯正装置は大きく分けて5種類ある

大人の矯正5種類

当院で行っている大人の歯科矯正の方法は、5種類あります。

  1. ワイヤー矯正
  2. 裏側矯正
  3. マウスピース矯正
  4. セラミック矯正(被せ物)
  5. 外科手術(セットバック)

それぞれについて以下でご説明します。

大人向けの主な矯正装置

大人の方が選ぶ矯正装置には、主に以下の種類があります。

1.ワイヤー矯正

ワイヤー矯正

一般的な矯正で、歯の表側にブラケットとワイヤー等の装置をつけて歯を動かしていきます。歯全体を動かす場合は2年程度の治療期間がかかります。様々な不正咬合のタイプの治療に対応出来、熟練した歯科医のもとでは歯の移動を細かく調整できます。

ワイヤー矯正はブラケットやワイヤーが目立つことがデメリットですが、当院では白いセラミック製を使用しますので、従来の金属素材のブラケットを用いた場合に比べるとかなり目立ちにくくなりました。ワイヤーもホワイトワイヤー(オプション)を使用すると目立ちません。

特徴

  • 歯の表側にブラケットを装着し、ワイヤーを通して歯を動かす方法
  • 矯正力が強く、さまざまな歯並びに対応可能

メリット

  • 歯をしっかりと動かせるので、幅広い症例に対応できる
  • 治療の精度が高く、細かい調整が可能

デメリット

  • 金属の装置が目立ちやすい(ただし、透明や白いブラケットも選べる)
  • 金属アレルギーの方には向かない場合も
金属と白のブラケットとワイヤー

ブラケットとワイヤーには食べ物がひっかかりやすく、毎日の歯のお手入れにはやや時間がかかります。ワイヤー装着中はフロスを通すことが出来ないので、矯正治療中に歯と歯の間が虫歯になってしまう方もおられます。

※虫歯や歯周病予防のために、ワイヤー交換の際に歯のクリーニングを行います。

2.裏側矯正

裏側矯正

歯の裏側にブラケットとワイヤーを取り付ける方法で、目立ちにくいという大きなメリットがあります。目立たない装置をご希望の患者さんは、この裏側矯正と以下に記載するマウスピース矯正のどちらかを選択する方が殆どです。

特徴

  • 歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーを装着する方法
  • 外からほとんど見えないので、見た目を気にする方に人気

メリット

  • 周囲に矯正していることがほぼバレない
  • 舌が常に歯に触れるため、後戻りしにくい傾向がある

デメリット

  • 舌に当たるため、話しづらさを感じることがある
  • 表側矯正に比べて費用が高め

歯の裏側に装置をつけますので、装置をつけた直後はお口の中のスペースが狭くなったことで圧迫感や違和感を感じる方もおられますが、殆どの方はすぐに慣れてしまわれます。

装置が舌に当たり、やや発音がしにくくなる方もおられます。歯の表側に装置をつけるワイヤー矯正と比べると費用が高くなり、期間も少し長くなる場合があります。

食べ物がブラケットやワイヤーにひっかかりやすいため、毎日の歯のケアには時間がかかり、虫歯のリスクが高まります。

3.マウスピース矯正

インビザライン模型

透明なマウスピース型の装置で歯を動かし、歯並びを改善していく方法です。当院ではインビザラインという名前の装置を使用しています。装置をつけていても他人から気づかれにくいため人気があります。

特徴

  • 透明なマウスピースを装着し、定期的に交換しながら歯を動かす方法
  • 目立ちにくく、取り外しができるため、大人の方に人気

メリット

  • 透明で目立たないので、周囲に気づかれにくい
  • 食事や歯磨きのときに取り外せるので、衛生管理がしやすい

デメリット

  • 1日20時間以上の装着が必要(装着時間を守らないと効果が出にくい)
  • 適用できる症例が限られる(重度の不正咬合には向かないことも)

インビザラインのアライナー(マウスピース)は1日22時間の装着を推奨しています。装着時間がこの時間に満たないと、歯が治療計画通りに動かない可能性があり、治療の途中でアライナーが歯にはまらなくなると、治療計画を見直してアライナーを作り直さなければなりません。

治療期間は個人差がありますが、全体の歯並びを治す場合は2年程度かかる方が多いです。部分的に治す場合は3ヶ月程度で治る方もおられます。

マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて歯が動く時の痛みが少なく、装置をつけていることが他人から殆どわからないため審美性の面でも人気があります。食事や歯磨きの時にはマウスピースを外しても良いということも大きな特徴の一つです。

4.セラミック矯正

セラミック矯正のイメージ

セラミック矯正は、歯を動かして歯列を整えるわけではなく、セラミックの被せ物で歯の形を整えて表面的なデコボコをなくしたり、歯のラインをきれいにします。歯を動かす矯正のように大きく見た目を変えることは出来ませんが、歯の大きさや、ちょっとした歯列の乱れを改善することが出来ます。

セラミックで治すメリットは、治療期間が早いということです。歯を動かして歯列を整えるには数か月~2年程度かかりますが、セラミックの場合は数回の通院で、早ければ1ヶ月以内に治療が終わります。

歯周病にかかっている場合は、歯周病の治療を先に行い、歯茎の腫れがなくなってからセラミックの前歯を入れると、よりきれいに仕上がります。

5.外科手術(セットバック)

セットバック

重度の出っ歯や受け口の方の中には、骨格が原因のものがあり、骨格性の不正咬合は歯を移動させたり、歯の向きを変えたりしても、横顔のラインは思うようにきれいになりません。

「矯正治療を受けたけれど、出っ歯があまり引っ込まなかった」、「反対咬合を治したけれど、顎のしゃくれは治らなかった」とおっしゃる患者さんは、骨格性の不正咬合のケースです。

当院では、直接お顔の骨にアプローチして、外科的に骨を切除して治す治療法を行っています。当院で行っているのはセットバック手術と呼ばれる術式で、全身麻酔で日帰り手術を受けて頂くことが出来ます。輪郭形成、フェイスライン整形とも呼ばれています。

矯正装置の選び方

「どの装置を選べばいいの?」と迷われる方もいらっしゃるかもしれませんね。装置を選ぶ際には、ライフスタイルや矯正の目的を考えることが大切です。

見た目を気にせずに矯正したい! → 裏側矯正 / マウスピース矯正
しっかりと歯並びを整えたい! → ワイヤー矯正(表側)
前歯だけキレイにしたい! → 部分矯正

また、歯科医師と相談しながら、ご自身に合った方法を選ぶことが重要です。

歯並びはなぜ治した方がいいの?

女性

歯並びが悪いと、ものを噛みにくかったり、見た目が悪いだけではありません。不正咬合が顎関節症や顔のゆがみ、頭痛や肩こりなどの原因となることもあります。

何よりも、食べ物をよく噛まずに飲み込むと、胃腸などの消化器官への負担が大きくなります。身体の健康という観点だけでなく、近年ではお顔や歯に対する美意識が高まり、矯正治療を受ける方が増えています。

歯科矯正は自由診療(自費診療)になります

費用

見た目の美しさに関わる治療では殆どの治療が公的医療保険の対象外です。保険のきかない自由(自費)診療ですので、歯並びを整えるための治療費は患者さんの全額自己負担となります。

お支払方法には種類があり、ローンや分割払いが可能ですので、詳しくはスタッフにお尋ねください。

まとめ

歯のキャラクター

大人の歯科矯正の種類について、①ワイヤー矯正②裏側矯正③マウスピース矯正④セラミック矯正⑤外科手術(セットバック)の5種類があることをご説明しました。患者さんの歯列のお悩みに対してどの方法がベストかは、患者さんが優先されるのが見た目なのか、治療期間なのか、料金なのかで変わってきます。担当医と話し合いながら、ぴったりな治療法をお決めください。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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