マウスピース矯正で治らないケースについてご説明します。患者さんの顎や歯の状態に原因がある場合と、患者さんのマウスピースの使い方に原因がある場合があります。
目次
マウスピース矯正が向いていない・治らないケース
マウスピースでの矯正は他人から見えにくいため、とても人気があります。しかしマウスピース矯正が出来ない、または治らない患者さんがおられます。
一番多いのが、顎の骨に問題があり、歯並びだけを治してもEラインがきれいにならないというケースです。上顎の歯茎が大きく前に出ているタイプの出っ歯の方や、下顎の骨が大きく前に出ている受け口の方がこれにあてはまります。
また、インビザラインでは1枚ので歯を動かす距離が0.25ミリとなっています。抜歯を伴う矯正治療で、歯を大きく動かさなければならない場合は、それだけの枚数が必要で、矯正治療期間が長くかかります。その場合はワイヤー矯正で動かした方が早く歯が動き、治療期間も短く済むということになります。
骨格から治さないとEラインがきれいにならない患者さんのために、当院では輪郭整形(セットバック)などの外科手術を行っています。
断念して途中でワイヤー矯正に変更するケース
インビザラインでは、治療前にクリンチェックという治療計画の画面で、歯の動かし方を細かくシミュレーションすることが出来ます。治療のゴールがどのような歯列になるのかを決定することで、治療開始からゴールに至るまでの道筋をAIが設定していきます。
シミュレーション上では歯が動くはずなのに、実際に治療に入ってみれば、動きにくい歯が出てくるというのは、よくあることです。その場合、実際の歯とマウスピースが合わなくなってしまいますので、再度歯型データを取ってクリンチェックをやり直すことになります。
そんな時に、ワイヤー矯正の方が確実に歯を動かせる場合もあります。担当医がワイヤー矯正での経験が豊富な歯科医師である場合、途中でワイヤー矯正に変更ということもあり得ないことではありません。
どうしても20~22時間装着出来ず治らなかったケース
インビザラインでは1日に20~22時間の装着が必要です。食事と歯磨き以外はずっと装着しているというイメージです。(マウスピース矯正のシステムによって、装着推奨時間は異なります)
しかし、装着時間が足りない患者さんが時折おられます。装着時間を守っていただけないと、治療計画通りに歯が動きませんので、いつまでたっても歯が動かず、新しいマウスピースに交換できないということが起こってしまいます。
計画通りに歯が動かず、治療期間が延びるだけでなく、途中でマウスピースが歯にはまらなくなってしまう可能性もあります。決められた時間装着できないというのは、計画通りに歯が動かないということになります。
何度もなくす、置き忘れて治らなかったケース
インビザラインでは、食事の時と歯磨きの時には、マウスピースを外します。この時に、どこに置いたのかわからなくなってしまって、なくしてしまう患者さんがおられます。
外した時に、ポイっとどこかに置いて、そのまま不明になってしまうようです。学校で外した時に失くしてしまう患者さんもおられます。
失くした時は、一個前のマウスピースに戻るか、一個先に進むかのどちらかになります。しかしどちらも歯にはまらない可能性がありますので、その場合は作り直すことになります。
インビザラインの場合はアメリカから空輸されますので、患者さんのお手元に届くまでに2週間程度かかる可能性があります。特定の番号のアライナー(マウスピース)だけですと、もう少し早く届くかもしれません。
しかしその間、患者さんがマウスピースを全く付けられない状態にあるとしたら、更に歯が動いてしまうかもしれませんので、その後の治療に支障をきたす可能性は拭えません。
マウスピース矯正で治らない歯並びに関するQ&A
マウスピース矯正が向いていないケースはどのようなものですか?
マウスピース矯正が向いていないケースには、顎骨に問題がある出っ歯や受け口の患者さんが含まれます。骨格の問題がある場合、歯並びだけを治してもEラインが改善しづらいです。
マウスピース矯正でクリンチェックが実際の治療と合わなくなってきた場合、どのように対処されますか?
治療を続けるうちにクリンチェックと実際の治療が合わなくなった場合、歯科医師は再度歯型データを取り、クリンチェックを修正します。必要に応じてワイヤー矯正に切り替えることも考えられます。
マウスピース矯正で装着時間が足りない場合、どのような問題が発生する可能性がありますか?
装着時間が足りないと、治療計画通りに歯が動かず、治療期間が延びる可能性があります。また、マウスピースが歯に合わなくなる可能性もあり、矯正が進まなくなります。
まとめ
マウスピース矯正で治らないケースについて、患者さんの顎や歯の状態に原因があり、歯を動かしただけでは横顔のラインが改善しない場合と、使い方に原因がある場合についてご説明しました。
患者さんの骨格が理由の場合は、治療計画を立てる際にある程度予想がつくのですが、患者さんがマウスピースを適切に使えない場合は、治療を始めてしまってから問題が発覚することになります。
後者の場合は、患者さんご自身できちんと装着、保管できるように努力して頂く必要があります。