インビザライン

インビザライン矯正で効果が出ない場合の原因と改善方法

インビザラインは歯並びを治すのに効果ある

インビザラインはアライナー(矯正用のマウスピース)を装着して歯並びを整えていく矯正治療です。歯が動くスピードがゆっくりなので、矯正の効果が実感できなくて心配になる方もおられます。インビザラインは本当に効果があるのかについてご説明します。

インビザラインで効果が出ないのはどういう場合?

インビザライン装着

マウスピース矯正では、アライナーの形通りに歯が動いていくのが特徴ですが、マウスピースが歯にぴったり合わなくなったり、歯から浮いたり、全くはまらなくなるという問題が起こる場合があります。効果が出ない場合の理由として考えられることは以下のような点です。

1. 適応症状に合わない場合

インビザラインは、軽度から中度の不正咬合や歯並びの問題に効果的ですが、以下のような場合には効果が期待できないことがあります。

重度の不正咬合

垂直方向や水平方向に大きくずれた歯並びなど、非常に複雑な症状には、インビザライン単独では対応が難しい場合があります。

骨格が原因で問題が起こっている場合

顎の骨に関連する問題や、顎関節症などは、インビザラインの対象外となることが多いです。

重度の歯の回転

特定の歯が大きく回転している場合、インビザラインでは十分に動かすことができない場合があります。

2. 装着時間が不足している場合

時計のイメージ

インビザラインの効果を最大限に引き出すためには、1日20~22時間の装着が必要です。

インビザラインはマウスピース型の矯正装置なので患者さんが自由に取り外しできる気軽さがあるものの、1日装着していただく時間が決まっています。

それは、「1日に22時間以上の装着」というものです。食事と歯みがきの時間以外は、寝ている間もしっかり装着していただかなくてはなりません。

この1日22時間以上という決められた時間の装着を守っていただけない場合は、歯が動きにくくなり、徐々に歯にぴったりとはまらなくなって浮いてしまう可能性があります。そのままの状態で何週間か治療を先に進めていくと、全く歯にはまらなくなって、治療効果が失われてしまいます。

つまり、歯が予定している位置に動かない場合の多くは、装着し忘れることが度々あって装着時間が足りていないケースということができます。しかしこれで矯正治療が失敗となるわけではなく、途中でアライナーが歯に合わなくなった際の対処法としては、再度クリンチェックを行い、アライナーを作り直します。

習慣化の難しさ

装着時間を守ることが難しいと感じる患者もいます。特に、食事や飲み物を摂る際に外す必要があるため、再装着を忘れることがあるかもしれません。

不快感

初期の装着期間には不快感を感じることが多く、これが理由で装着時間を短縮してしまうことがあります。

3. アタッチメントが正しく装着されていない場合

アタッチメントとは

アタッチメントは、特定の歯を動かすための重要な役割を果たします。そのため、アタッチメントの装着に不備があると、歯が期待

通りに動いてくれません。

適切な装着

アタッチメントが正しく歯に装着されていないと、歯の動きが不完全になります。歯科医の技術や装着時の不備が原因となることもあります。

アタッチメントの脱落

アタッチメントが取れてしまった場合、すぐに歯科医に相談し、再装着してもらうことが必要です。

4. 歯の形や位置の問題

歯の形状や位置が特殊なケースでは、計画通りに動かないことがあります。

異常な形状

例えば、非常に尖った歯や異常に大きな歯は、インビザラインのトレイにフィットしにくいことがあります。

予期せぬ動き

治療中に歯が計画とは異なる動きをすることがあり、この場合、治療計画の見直しが必要になります。

5. 最初のクリンチェックが間違っていて効果が出ない

iTeroエレメント画面

インビザラインでの治療では、治療前のクリンチェックで歯の動きを確認しながら設計し、ディスプレイ画面上で確認することが出来ます。そのため歯が実際にどのように動いていき、最終的にどのような歯並びになるのかが具体的にわかりやすくなっています。

その時に歯科医師からの指示が間違っていると、歯が計画通りに動きません。その場合は、装着時間をきちんと守っていても、治療途中で明らかにアライナーの形と歯の動きが合わなくなりますので、その時点でクリンチェックをやり直してマウスピースを作り直すことになります。

不正確な診断

例えば、歯科医師が誤った診断を下した場合、治療計画自体が効果を発揮しません。

途中の変更

例えば、歯の動きに応じて治療計画を変更する必要が生じた場合、治療がスムーズに進まなくなることがあります。

6. アライナーが歯にフィットしていない

インビザライン装着中

マウスピースが歯に正しくフィットしていない場合は、装着していてもあまり効果が得られない場合があります。フィットしていない原因として考えられるのは、以下のようなものです。

  1. 付け方が正しく出来ておらず、少し浮いた状態になっている
  2. 初期の型取りの精度が低くアライナーが適切な形ではない
  3. 何らかの原因で損傷している

7. ゴムかけの指示を守らなかった

エラスティックゴム

インビザライン矯正では、歯を効果的に動かすためにアライナーへのゴムかけを行う場合があります。ゴムは出っ歯や開咬を治療するときや、比較的大きく歯を動かさなければならないときなどに使用します。

マウスピースをつけなければ歯が動かないのと同じように、治療計画の中に入っている一定期間のゴムかけをさぼると、歯が計画通りに動かず、矯正治療の効果が出ません。マウスピースの装着時間を守るのと同じように、ご自身でゴムをつけることをしっかりと行っていただくしかありません。

上下の歯にゴムをかけると、「しゃべりにくい」ということが起こりますが、歯を動かすために必要なことですので、ゴムを使うように歯科医師から指示が出た場合は、勝手に外したりせず、必ず守るようにして頂きたいと思います。

8. 動きにくい歯があったため効果が出ない

インビザラインは多くの症例に対応していますが、歯は全てが同じ動きするとは限りませんし、動かしたい歯がなかなか動いてくれない場合もあります。歯が動きにくい原因は3つあります。

1. 舌癖

無意識のうちに舌で歯を押したりするクセのことです。例えば出っ歯の矯正治療で前歯を引っ込めたい場合に、前歯の裏を舌で押してしまうクセがあると、出っ歯を引っ込める方向への力が相殺されて歯が動きにくくなり、計画通りに歯を動かすことが難しい状態になります。

2. 咬合力の強さ

咬合力とは噛む力のことで、集中しているときや就寝中などに、歯を食いしばるクセのある人がいます。そうすると奥歯に強い力がかかり、矯正治療で歯を動かそうとする力を相殺してしまい、歯が移動しづらくなるのです。

3. アンキローシス

何らかの原因で歯根膜がダメージを受けて損なわれると、歯と骨がくっついてしまいます。これがアンキローシスです。事前の診断がしづらいことから、矯正治療を始めて2~3ヶ月で発覚します。アンキローシスの歯があるとわかった時点で、治療計画を見直すという対応が必要になります。矯正治療が失敗して終了とはなりませんので、ご安心ください。

効果をあげるための改善方法

インビザラインの効果が出ない理由がわかれば、それを改善します。

アライナーを正しくフィットさせる

1. アライナーの付け方

  1. アライナーを歯列に合うように奥歯から順番に前歯に向かってはめていきます。
  2. 歯にはめていく時にアライナーが内側に折れ曲りやすいので注意しながらはめていきます。
  3. 指でしっかりと押しながら歯とアライナーの間に隙間がないか確認します。
  4. 最後にチューイーを数十秒間噛み続けます。

2. 浮いていてはまらない感じた場合は歯科医院に連絡

チューイーをしっかり噛んでも浮いてしまう場合は、アライナーが歯にフィットしていないため、そのまま使っても良いかを歯科医院に確認しましょう。

装着時間の確保

1日の目標装着時間を意識する

1日に必要な装着時間を意識し、ご自身の生活に組み込むことが大切です。

装着の習慣を定着させる

装着することを日常の習慣にすることで、適切な装着時間を確保しやすくなります。

ゴムかけは指示通りに必ず行う

ゴムかけをサボると、治療計画通りに歯が動かなくなるため、歯科医師からの指示は必ず守りましょう。

インビザラインの効果範囲

インビザラインは特に以下のような歯並びの問題に対して効果的です。

  • 軽度から中度の歯のすきっ歯
  • 軽度から中度の叢生(ガタガタ)
  • 過蓋咬合(上の歯が下の歯に大きく被さっている)
  • 反対咬合(下の歯が上の歯よりも前に出る)
  • 開咬(上下の歯が咬み合わない)
  • 軽度から中度の歯のゆがみ

いつ頃から効果を実感できる?

インビザラインセット

インビザラインは治療開始時に歯の移動に合わせて30~50枚程度のアライナーが作製されます。1枚目はほぼ治療開始時の出っ歯や叢生、すきっ歯、受け口などの不正咬合の状態ですが、最後の50枚目は歯列がきれいに治った、治療後の歯並びの状態になっています。

アライナーは一枚一枚形が違っていて、一週間程度で1枚ずつ交換していき、マウスピースをつけかえる毎に、少しずつ歯が動いていきます。

マウスピース1枚でおよそ0.25mmほど歯を動かすことができる仕組みですので、1週間ごとに1枚の交換の場合1ヶ月で約1mm歯が動くことになります。

インビザライン アライナー

しかし歯の移動は横移動だけでなく、ねじれを解消するための歯の方向の移動や、上下の移動も行います。歯の移動の速度からいえば、一般的にはワイヤー矯正の方が早く確実に歯が動いていきます。

マウスピース矯正では時間をかけて少しずつ歯を動かすため、時間がかかるというデメリットがあると同時に、ワイヤー矯正と比較すると矯正中の違和感や歯の痛みが少なく、通院の回数も少ないというメリットがあります。

このようにマウスピース矯正ではすぐに歯が動いている効果を実感できるわけではありませんので、不安に思われる患者さんもおられるかもしれませんが、アライナーの形の通りに歯が動いていきますので、その結果、確実にきれいな歯列に変わっていきます。

インビザラインの効果に関するQ&A

Q

インビザラインの効果はいつ頃から実感できますか?

A

効果は通常、治療開始から約1ヶ月後から徐々に実感できます。アライナーを毎週交換するため、歯が少しずつ移動していくことにより、変化が感じられます。

Q

インビザラインとワイヤー矯正との比較で、歯の移動速度にはどのような違いがありますか?

A

一般的に、ワイヤー矯正の方が歯の移動速度が速く、確実に歯が動きます。一方、インビザラインは時間をかけて歯を移動させるため、違和感や歯の痛みが少なく、通院回数も少ないというメリットがあります。

Q

インビザライン治療中にアライナーの装着時間を守らなかった場合、どのような問題が生じる可能性がありますか?

A

アライナーは1日に22時間以上の装着が推奨されています。装着時間を守らない場合、歯が移動しにくくなり、アライナーが歯にぴったり合わなくなる可能性があります。これにより、治療効果が失われる可能性があるため、装着時間を守ることが重要です。装着し忘れた場合、歯科医師はクリンチェックを行い、再製作が必要となることがあります。

まとめ

歯のキャラクター

インビザラインなどの矯正治療で歯並びの改善に目に見えるくらいの変化を感じられるまでの期間には個人差があります。すぐには歯が動いている実感が得られなくても、治療前と現在の歯並びを画像を見比べると、明らかに歯並びが改善してきている効果を感じることができます。

また、マウスピースの1日の装着時間は22時間以上となっています。これより短い装着時間になると、治療計画通りに歯が動かない場合がありますので、出来る限り装着時間は守っていただくよう推奨しています。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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