出っ歯の方の原因や症状はたくさんあり、大人か子供かによって治し方も全然違います。出っ歯は骨格による原因の方が結構多いですが、骨格の原因といっても様々です。今日は下顎が後ろに下がっている方の治療法を、ご説明します。
出っ歯の様々なケース
出っ歯の方の中には、上の歯だけが前へ出ている方や、骨格自体が前に出ていていわゆる口ゴボになってる方もおられます。
上顎の位置が正常なのに、下顎が後ろへ下がってしまっているために相対的に出っ歯に見えるという方も意外とおられます。
子供の頃に原因があるにケースも多く、鼻が悪い、アデノイド顔貌など、様々な原因があります。
大人で下顎が後ろへ下がって出っ歯に見えているケースは下顎を前に出す
大人の方で下顎が後ろへ下がったケースは、本来の出っ歯ではありません。ではどうやって治すのかというと、下顎が下がっている方で、上顎を下げてしまうと、お顔が萎縮してしまい、変になってしまいますので、上顎の位置が正常ならば、下顎を前に出すという治療になります。
下顎が下がっている場合は、前後ではなく、上顎の前歯の斜面に沿ってスライドしています。下顎が下がっている方は、噛み合わせが深くなっていることが多いので、上顎を変えずに、下顎を前に出して、正しい位置に導いてあげると治ります。
頬には顎関節という顎の関節があり、関節の位置を、前に導いていかないといけないです。年齢が低ければ低いほど、関節の位置は動きやすいですし、前へ導きやすいです。
顎関節に関する説明
関節窩(かんせつか)というくぼみの中に関節円板というのがあります。顎関節症というのは、この関節円板が破れてしまい、顎の関節と関節窩の骨が直接当たって痛んだり、頭痛が起きたり、耳鳴りがしたりします。
年齢が低い子供の場合は、特に骨格自体を、前に移動させようと思った場合、関節のくぼみを変えないといけません。
関節を前へもっていく事により、くぼみの位置も前に移動します。関節窩が前に行くとは、どういう事かというと、頭蓋骨は前に移動しないので、骨が溶けて、また新しい場所に、骨が移動します。
大人の方の場合、1年半~2年位かかりますが、2.5mm程、前に移動できます。大人の方も地道に行えば、下顎が前に動かせます。
要するに、下顎が下がってる方の場合は、下顎を前に出さなければいけません。そうしないと、歯並びは綺麗になっても、お顔立ちが綺麗になりません。
下顎を前に移動させるために使う矯正装置
では、下顎を前に移動させる治療を行うためには、どんな矯正装置を使って行うのでしょうか。私どもの場合は大人の場合だと、主にインビザラインというマウスピース型の矯正装置を使います。
子供の場合だと専門用語になりますが、斜面板(しゃめんばん)という矯正装置を使います。子供の矯正で良く使う取り外し式のプレートのようなものを入れて、下顎を前に移動します。根本的に、下顎が下がっている場合は、この方法しかないという事になります。
【動画】出っ歯の治療方法 下あごの骨格が原因の場合
出っ歯の治療方法で、下顎の骨格が原因の場合に関して、以下の研究が参考になります。
1. 顎下骨延長骨切り術と矯正治療の組み合わせ
15歳の患者で、下顎の後退による顎の不足と上唇の突出を改善するために、顎下骨延長骨切り術と矯正治療を組み合わせたケースがあります。この治療では、下顎の後退を補正し、咬合を正常化し、顔貌を改善することができました。治療期間は14ヶ月で、矯正装置を使用し、マンディブラ(下顎)を前方に伸ばすことにより、咬合の改善と顔面の審美性が向上しました。【Maeda et al., 2008】
2. リジッドエクスターナルディストラクションオステオジェネシス
5.5歳の女児で、中顔部低形成と少数歯を伴う患者にリジッドエクスターナルディストラクションオステオジェネシスと矯正治療を行ったケースが報告されています。この治療では、上顎前方への移動と新しい骨形成が観察され、下顎は前方頭蓋基底に対して後退しました。これにより、歯列の不整と骨格の関係がクラスIIIからクラスIへ改善されました。【Kitai et al., 2003】
これらの研究から、下顎の骨格が原因の出っ歯に対しては、矯正治療と顎骨の延長や再配置を組み合わせた手法が有効であることがわかります。治療は個々の症例に応じて慎重に計画される必要があります。