子供の矯正の中でも歯がガタガタ、デコボコとなっているような乱杭歯(らんぐいば)や、叢生(そうせい)の治療法についてご説明したいと思います。
目次
子供の歯並びを治す3段階の治療法
歯がガタガタになる・重なるということは、顎が小さいということが原因です。顎が小さい為に、歯が並びきれず重なってしまいます。では、顎を大きくすれば歯並びの悪さは全て解決するのでしょうか? 残念ながらそうではありません。
10年以上前は、あごが小さい事に対して、顎を大きくするという治療のみをしていました。顎が小さい事が原因だから、顎を大きくする事で原因を治せると思っていたのです。しかし、そもそも顎が何故小さくなるのかという事を考え、治していくのが、本来の原因を治すということになります。
当院では、あごが小さくなる原因をまず概ね治し、更に矯正装置をお口に入れることで物理的にあごを大きくしていきます。(1期治療)
永久歯が生え揃ったタイミングで、例えば、歯が横を向いたり、斜めに生える事があるかもしれません。12歳を過ぎて永久歯が生え揃うタイミングで、あごが正常に発達していれば、歯がガタガタであっても歯並びをきれいに整えていくことが出来ます。(2期治療)
あごが小さい原因を治す→あごを大きくする(1期治療)→歯並びを揃える(2期治療)
この3段階で小児矯正は終わります。
子供の年令が低い場合の矯正
年齢が低い子供の場合、どうやって治すかご説明します。
あごが小さくなる原因
あごが何故小さくなるのか、その原因と治療法は以下の通りです。
あごが小さくなる原因:柔らかいものばかり食べている
あごが何故小さくなるかというと、理由はたくさんありますが、一番わかりやすい理由は、日ごろから柔らかいものばかり食べているという理由があげられます。
あごが小さくなる原因:口呼吸
あごが小さくなる原因で一番多い理由は、口呼吸です。口呼吸により、舌の位置が後ろに下がり、舌が適切に、上あごに当たらなくなります。
舌が上あごに当たらなくなると、どうなるでしょうか。
上あごは、舌の力で前や横に大きくなりますが、それがない為、大きくなる事ができません。上あごが成長しにくいということに、舌の力が弱いことが重なると、頬の筋肉が強く作用し過ぎてしまい、上あごを前や横へと押してしまいます。
それにより、上あごの成長が抑制されてしまい、お口が小さくなってしまうケースは大変多いです。
口呼吸や舌の癖がある子供は、まずその癖を治します。それが原因を治すということです。原因を治すために、マウスピースを使用します。プレオルソや、T4Kというものが該当します。
あごが小さくなる原因をマウスピースで治す
プレオルソやT4Kは特殊な形をしたマウスピースです。舌の位置が悪い子供がマウスピースをはめて、マウスピースの中の仕切りのようなものの上に舌を乗せると、舌が持ち上げられて正しい位置に置かれるようになっています。
舌が正しい位置にあると、舌で上顎を横と前に押す力が上顎に伝わりますので、上顎が大きくなるという仕組みになっています。
マウスピースの縁の部分には、上唇が上顎の歯や骨格にあたらないようにする仕組みがあります。
舌で後ろから上顎を押して、前からはマウスピースによって上唇の力を排除すると、上あごが適切に、前や横へ成長します。上あごが成長すれば、それに伴い、下あごも成長します。
上あごが小さいままですと、下あごがそれに伴い小さくなる、あるいは、受け口になってしまいます。
上あごを成長させることによって下あごを成長させるという治療法が、顎が小さい原因から治すプレオルソという装置です。
このプレオルソは、昼間1時間と、寝る時7~8時間付けるだけです。そのため、学校で付ける必要はありません。
寝る時に7~8時間ずっと付けますが、昼間は1時間しか付けませんので、学校や塾から帰って、寝るまでの間に、1時間どこかで付ければ、後は寝る時に付けるだけです。プレオルソや、T4Kはそのように使います。
子供の顎を大きくする一期治療
舌の位置が良くなり、舌が適切に上顎に当たるようになり、口呼吸も治りました。それだけでも顎は大きくなりますが、顎を確実に大きくする方法があります。
歯科医院では1期治療と呼んでおりますが、どうやって治すかご説明します。
インビザラインファースト
歯並びを治す方法は多くありますが、大人の矯正で世界的に流行っているマウスピース型矯正装置を使ったインビザライン矯正というものがあります。
子供用のインビザラインで、「インビザラインファースト」という名前のマウスピースの装置を使うと、お口を更に大きくします。
インビザラインファーストの利点は、歯列を大きくすると同時に歯並びを治す事が出来ます。
取り外し式のプレート
プレートと呼ばれる装置は取り外し式であることが利点です。プレートには真ん中にネジが付いており、ネジを巻く事によってプレートが左右に広がり、歯列を横方向に大きくします。
ただ、これは条件があり、舌の癖が治った子供にのみ使用します。舌の癖が治っていない子供に使うと、舌は本来上顎にあたっているのですが、プレートのせいで当たらなくなってしまうのです。
まず舌の癖を治し、その後でこの装置を使うようにしています。
急速拡大装置
急速拡大装置は非常に高い効果があります。頭蓋骨の真ん中が割れて、左右に分かれているのが正中縫合ですが、それは上あごにも存在します。
正中縫合に急速拡大装置のネジで横への力を加えると、上顎を左右に広げる事が出来ます。広がった隙間には、また新しく骨が出来ます。この拡大装置を使用することで、確実に上顎が広がります。
マウスピースのプレオルソなどを使ってもお口が完全に広がりきらなかった場合でも、これらいずれかの装置を使えば、お口は広がります。
歯並びを更に綺麗にする二期治療
顎が広がり大きくなれば、二期治療と呼ばれるものに移ります。
お口が大きくなると、歯がきちんと並ぶためのスペースが出来るので、歯並びは基本的に綺麗になります。しかし、歯が歪んだり、横向いたり、回転して生えたりする場合もあります。
あるいは、更に綺麗な歯並びにしたいと、いわゆるスマイルラインも綺麗にしたいという方もおられます。その場合にも、二期治療を行います。
二期治療で使用する矯正装置は、大人の矯正と同じ装置を使います。
ワイヤー矯正
二期治療の一般的な方法は、ワイヤー矯正です。歯にブラケットと呼ばれる小さなボタンのような装置を貼り付け、それにワイヤーを通します。
当院では目立たない白いブラケットを使用しており、ワイヤーも銀色のものでなく、白いワイヤーを選ぶことも出来ます。白いワイヤーは別料金となります。
インビザライン
最近人気のあるインビザラインという取り外しの出来るマウスピース型の矯正装置で歯並びを整えることも可能です。
どちらかの方法で二期治療を行うと、歯並びそのものを綺麗にすることが出来、骨格を治して歯並びも綺麗に治りますので、大人になってからの矯正で歯並びのみを治すよりは綺麗に治ります。
矯正は何歳から始めたらいいのか
「矯正は何歳から始めたらいいのか」というご質問は、一般的によくお母さんからいただくものです。歯のガタガタやデコボコにつきましては、基本的には6歳からで間に合います。もちろん5歳から始めてもいいですが、6歳からでも間に合う事が多いです。
9歳までなら(場合により)間に合いますが、10歳を過ぎて矯正を始めると、ガタガタを原因から治す事は難しくなります。
ガタガタの歯列や八重歯そのものは、大人になっても治す事は可能ですが、「あごが小さい」という歯並びが悪くなった原因を治そうと思う場合は、少なくとも9歳までに治療を開始するのが望ましいです。
【動画】矯正歯科医が教える 子どものガタガタ歯並び矯正
子供の歯並び治療法に関するQ&A
子供の歯並び治療はどのように分かれていますか?
子供の歯並び治療は通常、3つの段階で行われます。最初に、顎の成長を促進し、原因から治す「1期治療」が行われます。次に、永久歯が生え揃った後に歯並びを調整する「2期治療」が行われます。最後に、歯並びをさらに綺麗に整える「二期治療」が行われます。
子供の歯並びの悪さの主な原因は何ですか?
子供の歯並びの悪さの主な原因は、顎が小さいことです。これは主に柔らかい食べ物の摂取や口呼吸によるものです。柔らかい食べ物ばかり食べることで顎が発達しなくなり、口呼吸によって舌の位置が変わり、顎の成長が妨げられます。
子供の顎の成長を促進するために使用される具体的な治療法は何ですか?
顎の成長を促進するために使用される方法には、特殊なマウスピース型の装置(プレオルソやT4K)や急速拡大装置があります。これらの装置は舌の位置を正常にし、顎を広げる力を加えて成長を促進します。
まとめ
子供の歯並びが悪い原因を治すために、以下のような3つのステップで治していくことをご説明しました。
顎が小さい原因を治す→顎を大きくする(一期治療)→歯並びを揃える(二期治療)
歯並びがガタガタの子供につきましては、目安としては6歳から矯正を始めることです。いくら遅くても、8~9歳位までには始めます。
実際には9歳では顎が小さい原因から治るかどうかは難しいところです。10歳だと、私どもではお断りするケースもある位です。できたら6歳から始められる事をおすすめします。