奥歯を噛んだ時に上下の前歯の先がぶつかる切端咬合という不正咬合があります。奥歯の噛み合わせに問題が起こり顎関節に負担がかかりがちな不正咬合なので、ご説明します。
切端咬合とは
奥歯を噛んだ時には通常、上顎の前歯が下顎の前歯に2~3mm程被さっています。横から見た場合は上顎の前歯は下顎の前歯よりも2~3mm程度前にあるのが正常な歯の位置です。
ところが、切端咬合の患者さんは、奥歯を噛んだ時に上下の前歯の先端がカチーンとぶつかり合ってしまっています。切端咬合は反対咬合の一種ですが、切端咬合の患者さんは全部の前歯が切端咬合になっているケースは稀で、一部の前歯のみが切端咬合という方が多いです。
切端咬合になると、前歯がぶつかってしまって奥歯でものが噛めません。そのため、下顎を前に出して咬んだり、横にずらして咬んだり、顎をずらして噛むことになります。そのため顎関節に負担がかかり、顎関節症の原因になります。
切端咬合は受け口(反対咬合)の症例と似ていますが、受け口は下顎が切端咬合の場合よりも更に前に来ている歯並びのことをいいます。
切端咬合になる原因は?
切端咬合はどのような原因から起きてしまうのでしょうか。原因として考えられるのは、受け口と同じく、舌のくせや口呼吸、骨格による問題、歯並びによる問題などです。
1.舌の癖
子供の時に、無意識に行う舌の癖が原因で切端咬合になってしまう事があります。例えば下の前歯の裏側を舌で押し続けることで、下顎が前に押し出されて、不正咬合の原因になります。
2.口呼吸
お口ポカンというのが口呼吸のサインですが、口呼吸は切端咬合の原因となります。口呼吸が多い子供は、通常は上顎の裏側にあるべき舌が下がってしまい、上顎が正常に成長しない劣成長に繋がります。口呼吸は出っ歯やガタガタ、開咬などの様々な不正咬合になるリスクが高いため、早めに治しましょう。
3.骨格による問題
下顎と上顎の骨格の発達バランスが異なることにより起こります。下顎だけが発達してしまう骨格、もしくは上顎が何らかの原因で骨格が劣成長という事があります。遺伝のケースもあります。
4.歯並びによる問題
骨格のバランスが整っていても、歯並びにより切端咬合が起こることがあります。それは、一部の歯がガタガタに生えている(叢生)場合です。ただ、一部がガタガタで切端咬合になっている場合は、骨格による問題よりも比較的早く治す事ができます。
5.矯正治療の失敗によるもの
経験の少ない歯科医師が矯正治療を行った場合、前歯はきれいに並んでも噛み合わせが狂ってしまい、その結果切端咬合になる場合があります。矯正専門の歯科医師であればこのようなミスは起こりませんし、矯正装置を歯に付けて切端咬合の治療を行うことも可能です。
切端咬合を治療しないとどうなるの?
切端咬合を治さないと、どのようなトラブルは起こるのでしょうか。
切端咬合の患者さんの中には、切端咬合の単一症状以外に、叢生やすきっ歯(正中離開)、反対咬合、正中線のずれ(上の歯の真ん中と下の歯の真ん中の線が合わない)などの他に歯列に対するお悩みも同時に抱えている方が多くおられます。
切端咬合を治療せずに放置すれば、主に2つのトラブルが考えられます。
1. 前歯が欠けたり、割れる事がある
奥歯で咬むと上下の前歯の先が当たってしまうため、前歯に大きな負担をかけるのが切端咬合のデメリットです。そのため、前歯の切縁(せつえん)が欠けてしまったり、割れてしまう可能性があります。最悪の場合、抜歯処置を伴う事があります。抜歯をしてしまうと、前歯は周囲の人の目が気になる箇所ですので、審美性に優れているインプラントでの治療を検討しなければなりません。
2. 噛み合わせが悪い為、咀嚼機能の低下や顎関節に影響
切端咬合ではものを食べる時に顎をずらして噛むことになります。そのため咀嚼機能の低下を招き、良く咬まないで飲んでしまいがちなため、消化器に負担をかけて栄養が十分に摂取できなくなるリスクがあります。
また、噛み合わせが悪い状態で無理に噛もうとすると、顎関節に負担がかかり、顎変形症や、顎関節症などを引き起こすリスクとなります。
切端咬合の治し方~子供の場合~
子供の切端咬合のケースでは、5歳位から1期治療を開始するのが望ましいです。乳歯期の5歳位から歯科医院で治療を開始した場合でご説明します。
拡大床やインビザラインファースト(マウスピース型装置)などの治療を行えば、抜歯をせずに歯並びを整えられる可能性が高くなります。拡大床やマウスピースは一日のうちに一定時間装着をする必要がありますが、大人になってからの矯正よりは負担が少ないと言えます。
しかしすべての切端咬合が小児の1期治療によって改善するとは限りません。改善がみられない場合は、乳歯が永久歯に生え変わった後で、ワイヤー矯正で治療を行う場合もあります。
切端咬合の治し方~大人の場合~
切端咬合を大人になってから治したい場合は、ワイヤー矯正、マウスピース矯正が一般的です。
▼ワイヤー矯正についてはこちらで詳しく解説しています。
▼マウスピース矯正インビザラインについてはこちらで詳しく解説しています。
切端咬合により顎関節の病名がついた場合は、口腔外科のある大学病院で行うと健康保険適応となりますので、治療費は安くなります。
上下の前歯がぶつかる切端咬合に関するQ&A
切端咬合とは何ですか?
切端咬合は、通常の歯の位置とは異なり、上下の前歯の先端が直接ぶつかり合う状態のことです。これは反対咬合の一種で、正常な歯の位置から外れた噛み合わせです。
切端咬合の主な原因は何ですか?
切端咬合の原因は舌のくせ、口呼吸、骨格による問題、歯並びによる問題などが考えられます。舌のくせや口呼吸が子供の場合に影響することがあります。骨格のバランスや歯並びによっても引き起こされることがあります。
切端咬合を放置すると、どのようなトラブルが起こりますか?
切端咬合を放置すると、前歯が欠けたり割れたりする可能性があります。また、噛み合わせの問題から咀嚼機能の低下や顎関節に影響を及ぼすことがあり、栄養不足や顎の問題を引き起こすリスクがあります。
まとめ
今回は切端咬合についてご説明しました。切端咬合は受け口などと同様で、なるべく早く治療したほうが良い反対咬合の一種です。「子供の歯が気になる」と思われた場合は、一度クリニックにカウンセリングへ行き、ご相談をおすすめします。