インビザライン

口腔内スキャナーiTeroとはどういうもの?

口腔内スキャナーiTeroってどういうもの?

大阪矯正歯科グループ 歯科医師 松本 正洋

iTeroはインビザラインのアライナー(マウスピース)を作るための歯型取りに使用する口腔内スキャナーです。お口の中を3Dでスキャンしたデータを利用すると、すぐにその場で3D画像で歯並び治療の治療計画が作成出来ます。

歯科治療ではデジタル化がどんどん進んでおり、レントゲン写真が診療チェアに付属のディスプレイ上で見れることは今では当たり前のことになっています。iTeroで撮影したデータはリアルタイムで3D画像が作成されますので、患者さんにとっても大変興味深いものだと思います。

矯正治療で使う口腔内スキャナー「iTero」とは?

現在多くのメーカーから口腔内スキャナーが提供されています。インビザラインで使用するのはiTero(アイテロ)という名称の口腔内スキャナーです。

インビザライン

正式名称はiTeroスキャンニングシステム(アメリカのアライン・テクノロジー社が開発)で、口腔内に専用の3Dスキャナー(カメラみたいなものです)を入れ、矯正を行う口腔内の状態を直接撮影して、精密な歯型のデータをとることができる光学スキャンニングシステムです。

iTeroワンズ

従来の方法では、歯型を取る際にはトレーに印象材を盛って歯に圧接し、数分間固まるのを待ちます。これが苦手な患者さんが多く、特に全顎用のトレーは大きいために普段は嘔吐反射がないという方でも型取り中に吐き気がしたり、患者さんにとって快適とは言えないものでした。

従来の歯型取り

その点、iTeroは、歯に特殊な光を当てて口腔内の形を精密にスキャニングします。スキャニングには若干の慣れが必要ですが、熟練した歯科医師は1分程度で患者さんの歯を全てスキャニングし、データ化することができます。データは3Dで表示され、患者さんにすぐにお口の状態を見て頂くことができます。

iTeroの特徴

1.口腔内をスキャンした後、3Dのデータで見れる

iTeroスキャン結果を確認中

歯をスキャンした直後に実際のお口の中の様子を3Dのデータで確認することができます。

実際に歯並びや噛み合わせがどうなっているのかをモニター画面で見ることで、ご自身がどのような不正咬合で、治療する理由や目的がはっきりとわかります。

2.治療計画を3Dアニメーションで確認できる

iTeroエレメント画面

お口の中をスキャンしてデータを読み取った後は、現在の歯並びから治療後のきれいな状態に変わるまでの様子を3Dアニメーションで見ることができます。

ご自身の口腔内がダイナミックに動いてきれいなに整って行く様子を見ることで、治療計画の内容がより具体的にわかります。

3.印象剤での歯型採取が不要

iTeroスキャン中

従来の型取りは、専用トレイに粘土のような印象剤を盛ったものを口に入れ、歯に押し当てて印象剤が固まるまで数分間待ってから取り外すというものでした。印象剤が硬化するまでの間、患者さんは口を開けたままの状態でいなければならないため、嘔吐反射がある方、口を開けにくい方にとっては苦痛でした。

iTeroは3D光学スキャナを照射するだけで精度の高いデータとして記録できます。

4.精密で正確な型どりができる

iTero

従来の印象材を使っての型取りは、印象材が変形したり、石膏を硬化させる際に変形したり、石膏に気泡が入ったり、歯型を正確に作るためにはコツが要りました。iTeroはスキャンしたデータをそのまま治療計画やアライナーの作製に使います。そのため矯正治療に必要な情報をデータから全て得ることが出来、精密に口腔内の形を再現することができます。

インビザラインではマウスピースを交換しながら歯を動かしていきますが、このマウスピース製作にあたり、撮影されたデジタルデータを三次元ソフトに読み込ませて治療計画を作成します。そのため、お口の中の状態を正確にデータ化する必要があります。

5.歯並びがどのように変わっていくかをスマホで確認できる

iTeroログイン

担当医は歯型データをもとにクリンチェックという治療計画を作成します。患者さんはウェブサイトにログインすることでそのデータをスマホからいつでも見れるようになります。

6.クリンチェックで最適な治療計画をご提案

クリンチェック

矯正医は、患者さんの現在の不正咬合が理想的な歯並びになるまでの道筋を、クリンチェックの画面で3D画像を見て確認し、何通りもの案の中から最適なものを選びます。

歯に取り付けるアタッチメントの形や厚み、位置が細かく設定できるようにクリンチェックが改良され、歯を移動させる距離や軸の傾き、噛み合わせ等の治療計画を画面を見ながら作成できますので、より具体的にドクターの希望に沿った治療計画が実現できるようになりました。

7.データを送るだけなのですぐにアライナーを作製できる

インビザライン輸送

従来の印象の場合は歯型をアライン・テクノロジー社へ輸送し、そこからコスタリカへ輸送する手間がありました。
コスタリカで工業用CTにスキャンし、インビザラインのクリンチェック作製まで約2週間かかっていました。そのため患者さんの手元にアライナーが到着するのは約4週間~6週間と、かなり先になってしまっていました。

ところが、iTeroではスキャンした口腔内データを直接コスタリカへデータを送信しますので、輸送にかかる日数が短縮されます。そのため、患者さんの手元にアライナーが提供されるまで3週間~4週間となります。患者さんは矯正を一刻も早く始められたい方が殆どですので、アライナーが早くお手元に届くことは大きなメリットとなります。

インビザラインとケースのセット

8.CTなどで被ばくをするがiTeroでは心配なし

iTeroワンド

CTなど医療器具においてわずかな被ばくをするのは、皆様周知の事実かと思います。iTeroから放出される光は、CTやレントゲンのような放射線ではありませんので、安全で体には害がありません。

勿論、スキャンの器具の先端部は使用の度に交換しますので、衛生面でも安心です。

9.グッドデザイン賞、デンタルエクセレンスアワード(診断部門)を受賞

The Chicago Athenaeum Museum of Architecture and Design

iTero element2と口腔内スキャナーは、2018年に世界的なグッドデザイン賞、デンタルエクセレンスアワード(診断部門)を受賞しました。デンタルエクセレンスアワードは歯科医療業界において優れた新製品、サービス、会社と指導者に授与されます。ノミネートはサイトの読者ですが、選定は業界の専門家たちによってされるとのことです。よりよい治療と診断に欠かせない商品とサービスに対しての表彰ですので、患者さんにとっても安心がおけるものですね。

iTeroの歴史

iTeroの歴史

スキャンしたデータを利用した3D画面で歯の動きをチェック

インビザラインでの治療はスキャンしたデータを基に3D映像でどのように口腔内が変化していくのかを見ることができます。

上の動画は実際に画面を見ながら今までのインビザライン治療の経過を患者さんにご説明しているドクターの様子です。患者さんはちょうど8枚目のアライナーを終えて、これから9枚目の新しいアライナーに付け替えるところです。

この画面を見ると、元の歯並びからどの位歯が動いてきれいに整って行っているかが、はっきりとわかります。動画をご覧になり、治療の参考にしてくださいね。

なお、動画内の歯面についている三角や四角のものはアタッチメントといい、レジン製の突起物です。これによって歯が動くための力が効果的にかかり、スムーズに治療が進んでいきます。

歯茎の下に表示されている番号のついたひし形のマークは、IPR(ディスキング)をする位置と削る幅を示しています。スライスは歯の両サイドのエナメル質の部分を僅かに削って、歯が動くためのスペースを作る方法です。

まとめ

マウスピース矯正インビザラインでの矯正治療における口腔内スキャナーiTeroとはどういうものなのかをご説明しました。

光学カメラで口腔内をスキャンしたデータは、デジタル印象としてアラインパートナー技工所に送信され、インビザラインのアライナーをスピーディーに作製することが可能になりました。そのためアライナーが到着するまで、以前ほど患者さんを長くお待たせすることがなくなりました。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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