
矯正治療のための歯科医院を選ぶ時、非抜歯でできるか、見た目はどうかなどよりも、料金に重きをおいて比べていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。30万円で行える矯正治療とはどんなものかご説明します。
目次
30万円の歯列矯正治療費は高い?安い?
歯列矯正全体の費用相場との比較
- 一般的な矯正治療の費用は、全体矯正で60万円~130万円程度が相場です。
- 部分矯正の場合、10万円~50万円程度が主流です。
全体矯正は、歯並びや噛み合わせ全体を包括的に改善するため、装置や技術の複雑さが増し、費用も高くなります。一方、部分矯正は治療範囲が限定的であるため、費用を抑えられるケースが多いです。
結論:30万円は部分矯正の範囲内では適切な価格帯ですが、全体矯正としては非常に安い部類に入ります。
30万円で行える治療内容
部分矯正
- 前歯の軽度の隙間や歯のねじれを改善。
- 治療期間は6か月~1年程度が目安。
マウスピース型矯正装置(簡易型)
- インビザラインGO、それ以外の名称の前歯の軽度な不正咬合専用の安価なマウスピース装置など。
- 軽度の症例のみに対応。
一部の金属ワイヤー矯正
- 前歯の限られた範囲のみを治療する。
- 奥歯のみを動かす場合は難しい場合がある。
部分矯正では、治療対象が限定されるため、30万円でも満足できる結果を得やすいです。一方、マウスピース型矯正装置は、透明で目立ちにくい利点があり、簡易型であればこの価格帯で提供可能です。ただし、複雑な症例や重度の不正咬合には対応できないことがあります。
高いか安いかの判断基準
治療目的が達成されるか
- 患者さんのお悩みが解決出来るかが大事。
- 中度、重度の不正咬合で全体的な矯正が必要な場合、部分矯正では効果が不十分。
治療内容とクオリティ
- 使用する装置の種類や治療計画が価格に見合っているか。
アフターケアの有無
- 保定装置(リテーナー)の費用や治療後の経過観察が含まれているか。
費用だけに目を向けるのではなく、治療内容や結果の満足度も考慮する必要があります。特に、アフターケアが十分でない場合、矯正終了後に再度問題が発生し、追加費用が必要になる可能性があります。
長期的な視点での費用対効果を考える
- 矯正治療は一時的な投資ではなく、長期的な健康や審美性の改善につながる。
- 安価な治療が将来的に再治療の必要性を生む場合、結果的に高額になるリスクも。
安い治療を選んだ結果、再治療や補正が必要になると、かえって費用がかさむ可能性があります。一方で、初期投資を抑えながらも適切な治療が受けられれば、高い費用対効果を得られるでしょう。
治療を受ける前に30万円などの格安の矯正治療の内容をチェックしよう

インターネットで調べると、30万円などの格安で行っている医院があることがわかります。料金の安さに惹かれ、矯正を今すぐ開始したいと思うかもしれませんが、まずどんな内容の治療かをしっかり時間をかけて調べていただきたいと思います。
何故そんなに他の医院より料金を安くできるのでしょうか。他の歯科医院よりも安い治療費ということは大きなメリットですが、デメリットもあるかもしれません。
歯並びの矯正は医療行為ですから、お買い物のように気軽に出来るものではありません。疑問や不安点を全体的に解決して、クリアな状態になってから、治療を開始されるべきです。
不正咬合の程度により金額に違いがある
ワイヤーとブラケットの装置を使った、治療の中では安価な部分矯正という治療で考えてみましょう。
部分矯正は治療期間が比較的短期間で終わるのが特徴で、歯の重なり具合の程度により軽度、中度、重度に分かれ、料金が変わる歯科医院が多いようです。軽度の場合は最短2ヶ月程度で治療が完了する医院もあります。
中度の方の部分矯正を例に挙げると、治療費は30~40万円程度の歯科医院が多いようです。その30~40万円の治療費にブラケットやワイヤー装置などの材料費や技工費や人件費など様々な諸経費が含まれ、歯科医院毎に価格を定めています。
格安になる理由って何なのか?

「格安でできる矯正」を行っている歯科医院の場合、例えば、材料費、技工費、人件費などを多くかけてしまうと、格安の値段ではマイナスになって利益が出ない可能性もあります。その場合、多くの患者さんを治療すればする程、クリニックは赤字路線に拡大する可能性が高まります。
そのような点から考えると、「格安でできる矯正」は、低価格の高品質とは言えない材料を使い、技工費もなるべく抑え、治療回数やスタッフを減らすという事をしない限り、格安の料金で治療を行っていくことは難しいです。
歯の動くスピードは人によってまちまちなので、医院側が早く治療を終わらせて人件費を少なく済ませたくても、そう簡単にはいきません。患者さんの歯の動くスピードに合わせて治療を行っていかなければ後戻りなどが起こる可能性もあります。矯正治療においては治療期間がある程度必要なので、通院回数も期間に応じて必要になります。
歯列矯正で失敗したくない方へ
日本臨床矯正歯科医会が2009年に行った意識調査をを見ると、治療を経験した患者さんの治療後の満足度は、「治療を受けてよかったと思う」が71.5%と高い結果となり、「デンタルケアへの関心が高まった」52.3%と、”予防歯科”への意識が上昇する傾向があります。(下記図1:日本臨床矯正歯科医会参照)

ただ、「保定期間、リテーナー装着を頑張ったのに歯並びが後戻りをしてしまった。今度こそ長く保てるような再矯正をしたい」と相談に来られる方も残念ながら少なくありません。その分治療費も再度かかることになってしまいます。
下記の国民生活センターへの相談件数は少ないとは言い難い件数です。(下記図2:国民生活センター参照)
治療をお考えの方に申し上げたいのは、料金はもちろん検討材料の中で大きなウエイトを占めるかもしれませんが、それ以外に担当する歯科医師が今までに多くの症例数をこなし、矯正治療の経験が豊富であるか、治療前のカウンセリングでの説明がわかりやすいものか、また担当医が患者さんのお話を伺う姿勢もチェックすべきポイントです。あとは院内の雰囲気も見てみることをおすすめします。
30万円が高いか安いかの最終判断
- 部分矯正や軽度の矯正を目的とする場合、30万円は妥当な価格と言えます。
- 一方で、全体矯正や複雑な症例をこの価格で実現するのは現実的ではない場合が多いです。
- 費用だけでなく、治療範囲、装置の種類、アフターケアの内容を総合的に判断し、自身に最適な治療を選ぶことが重要です。
このように、多角的な視点で費用を検討することで、30万円という価格の妥当性を正確に判断できるようになります。
まとめ
30万円で行える矯正治療は、主に部分矯正や軽度の歯列不正を対象とした治療が中心です。具体的には、前歯の隙間や軽いねじれを改善する部分矯正、簡易型マウスピース矯正(例:インビザラインGO)などがあげられます。
30万円という価格帯では、治療範囲が限定されており、全体的な歯列矯正や噛み合わせの改善は難しい場合が多いです。また、費用が抑えられる理由として、装置が既成品であり、患者さんの歯型に緻密に合わせていない場合があることや治療期間が短いことがあげられます。
安い価格帯での矯正治療をご希望の方は、治療内容やアフターケアがきちんとした内容であるかどうかを確認することが大切です。費用を抑えつつ満足のいく結果を得るためには、ご自身の症状に適した治療法を歯科医師と相談しながら選ぶことが重要です。