小児矯正

子供のマウスピース矯正の注意点

子供のマウスピース矯正の注意点

子供の歯並びを整えるための矯正治療は、マウスピースで行うことが出来ます。装置によって目的や取り扱いが異なりますので、注意が必要です。子供のマウスピース矯正で注意すべきポイントについてご説明します。

子供のマウスピース矯正とは?

子供のマウスピース矯正は、年齢別に使用する装置や目的が異なります。乳歯列の期間は、永久歯が生えるまでの間に子供の顎を十分な大きさに発達させることが目的となり、その後永久歯が生えそろってから歯並びを整えるのが一般的な方法です。

子どもの1期治療に使用する装置

3~5才くらい

子どもの0期治療ムーシールド

3~5才くらいで受け口の不正咬合のある子供には、ムーシールドプレオルソT4Kなどの装置を使用します。口呼吸をしている子供の場合はマウスピースによって舌の位置が改善されて鼻呼吸が出来るようになり、顎の骨格が良い方向に成長するのを助けます。

6~10才くらい

小児矯正プレート 急速拡大装置

6~10才くらいで、歯並びが悪くなくても歯と歯の隙間が少なく、このままでは永久歯がガタガタに生えてしまうという場合にプレート急速拡大装置などの装置であごを大きく広げる治療を行います。

6~12才くらい

インビザラインファースト

インビザライン・ファーストという、子供専用のインビザラインの透明なアライナーを使って乳歯から永久歯への生え変わりをサポートしながら歯を整える方法もあります。

子供のマウスピース矯正は大人の矯正とどう違う?

「子供の矯正にはマウスピース矯正も選べると聞いたけれど、大人の場合とどう違うの?」
このよう装置のに思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

子供でもマウスピース矯正が可能ですが、大人と全く同じ方法ではありません。成長過程にある子供ならではの特徴を考慮した治療法が求められます。

マウスピース矯正装置の違い

マウスピース矯正とは、透明な取り外し可能な矯正装置(アライナー)を使って歯並びを整える方法です。金属のワイヤーを使用しないため、見た目が自然で目立ちにくいのが特徴です。

矯正の種類にはいくつかありますが、代表的なものとして以下のようなものが挙げられます。

インビザライン(大人・ティーン向け)

  • 成人向けの「インビザライン フル」、中高生向けの「インビザライン ティーン」があります。
  • 1日20時間以上の装着が必要です。

インビザライン・ファースト(子供向け)

  • 乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」の子供が対象。
  • 成長を利用しながら顎の発育をコントロールします。

「子供用のマウスピースも大人のものと同じ?」と思われるかもしれませんが、実は大きな違いがあります。

子供のマウスピース矯正の特徴

子供のマウスピース矯正(インビザライン・ファーストなど)は、大人の矯正とは異なる点がいくつかあります。

1. 成長を利用する

大人の矯正はすでに成長が完了した顎に対して歯を動かしますが、子供の場合は顎の成長をコントロールしながら治療を進めることができます。これにより、将来的な抜歯のリスクを減らすことが期待できます。

2. 乳歯と永久歯が混在している

子供の矯正は、乳歯と永久歯が混ざっている「混合歯列期」に行われることが多く、そのため歯の生え変わりを考慮した治療計画が必要です。大人の矯正ではすべての歯が永久歯なので、このような調整をする必要はありません。

3. 使用時間の違い

  • 大人のマウスピース矯正 → 1日22時間以上の装着が必須
  • 子供のマウスピース矯正 → 成長に合わせた使用時間の調整が可能

子供の場合は使用時間を調整出来るため、学校生活や食事の時間を考慮しながら、無理のないスケジュールで治療を進めていく必要があります。

子供のマウスピース矯正で注意すること

子供

1. マウスピースの適切な装着

マウスピース矯正では、1日の装着時間を必ず守らねばなりません。プレオルソ、T4Kは夜間に装着に加えて昼間は1時間の装着が必要です。インビザラインファーストの場合は1日22時間以上の装着が推奨されます。

特に子供の場合、自分で装着時間を管理するのが難しいことがあります。そのため、親が毎日の装着状況を確認し、適切な時間装着しているかどうかをサポートすることが重要です。

装着の習慣化

朝起きたとき、食事の後、学校から帰ってきたとき、寝る前など、決まった時間に装着する習慣をつけることで、装着を忘れないようにします。

チェックリストの活用

親子で毎日の装着時間を記録するチェックリストを活用するのも効果的です。目に見える形で進捗を確認できると、子供のモチベーション維持にもつながります。

2. マウスピースを清潔に保つ

子供子供 マウスピース

マウスピースは、食事やおやつの前には必ず外す必要があります。また、食後は口腔内の清潔さを保つために、必ず歯磨きを行ってからマウスピースを再装着します。これを怠ると、食べ物のカスがマウスピース内に残り、虫歯や歯肉炎の原因となる可能性があります。

専用ブラシの使用

マウスピースの清掃には、専用のブラシや洗浄剤を使用すると、細かい部分まできれいに保てます。子供が自分でしっかりと清掃できるよう、簡単に扱える道具を選びましょう。

定期的な洗浄

マウスピースは少なくとも1日1回、専用の洗浄液できれいに洗うことが推奨されます。これにより、マウスピースの表面に細菌が繁殖するのを防ぎ、口腔内の健康を保ちます。

3. 装着中の食事と飲み物の管理

子供

特にインビザライン・ファーストの場合、子供の食事やおやつの時にマウスピースを外して、その後また装着しなければなりません。マウスピースを装着したまま飲食すると、マウスピースが傷ついたり、変形する恐れがあります。また、飲み物に含まれる糖分や酸がマウスピース内に残ったままになり、虫歯や歯の着色の原因になることがあります。

給食時はどうするのか

インビザライン・ファーストを使用するのは主に小学生のお子さんになりますので、給食時についてご説明します。

  1. 給食の前にマウスピースを外す
  2. 給食を食べる
  3. 出来れば歯磨きとマウスピースを洗う
  4. マウスピースを再装着

マウスピースの取り扱いが面倒だと感じられるかもしれませんが、必ず外す必要がありますので、食事前に外すことが子供の習慣になるよう、親がしっかりと確認しましょう。

飲み物の選択

水以外の飲み物を飲むときは、必ずマウスピースを外してから飲むようにします。特にジュースや炭酸飲料、スポーツドリンクなどは、酸や糖分が多く含まれているため注意が必要です。

マウスピースの保管

子供の飲食の際には、マウスピースを専用のケースに保管しましょう。紙ナプキンやポケットに入れてしまうと、うっかり捨ててしまったり破損することがあります。

4. 装着中の不快感や痛みの管理

マウスピースをつけることで不快感や痛みを感じることがあります。この場合、無理に我慢させるのではなく、適切な対処を行うことが重要です。

鎮痛剤の使用

痛みが続く場合は、歯科医に相談し、適切な鎮痛剤を使用することが考えられます。痛みが強い場合や長期間続く場合は、すぐに歯科医に相談しましょう。

歯科医とのコミュニケーション

受診の際に、痛みや不快感について歯科医に相談することが大切です。相談することで早期に対応してもらうことができます。

5. 子供のモチベーションを保つ

長期間の治療となるため、子供のモチベーションを維持することも重要です。子供が装着を嫌がる場合や、治療に対するモチベーションが下がった場合は、親が適切にサポートし、励ますことが必要です。

治療の進捗を可視化

子供が治療の進行状況を視覚的に確認できるように、矯正の進捗を記録したカレンダーやグラフを作成するのも効果的です。

小さなご褒美を用意する

一定の装着時間を達成した際や、治療が順調に進んだ場合に、小さなご褒美を用意することで、子供のやる気を引き出すことができます。

6. 親のサポートの重要性

子供のマウスピース矯正は、親のサポートが成功のカギを握ります。親が積極的に治療に関与し、毎日の装着状況や清掃、定期的な歯科医の診察をしっかりと管理することで、治療がスムーズに進みます。

これらの注意点をしっかりと理解し、実践することで、子供のマウスピース矯正を成功させ、将来の口腔健康を守ることができます。

まとめ

子供のマウスピース矯正は、永久歯がきれいに生えるために多くのメリットがありますが、治療を成功させるためには親のサポートが欠かせません。毎日の装着時間の管理やマウスピースの清掃、食事の際の取り扱いなど、注意すべきポイントをしっかりと理解し、実践することで、効果的な矯正治療が可能になります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。矯正歯科の認定多数。日本抗加齢医学会 認定医。

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