
矯正中に飲み会が入ってしまい、リテーナーはどのようにしたらよいのかと悩まれるケースがあります。矯正治療中の飲み会参加の場合は、予め外すなどの事前準備が必要ですので、詳しくご紹介いたします。
矯正におけるリテーナーの重要性
矯正には動的治療と静的治療があり、歯並びを正しくするために歯を動かすのが動的治療、動いた歯をその位置で固定するのが静的治療です。静的治療をしっかり行わなければ歯並びは後戻りを起こし、見た目や噛み合わせがまた悪くなってしまうため静的治療はとても大切です。静的治療をするうえで重要なのがリテーナーと呼ばれる保定装置です。矯正治療後、歯は元の位置に戻ろうとする力が働きますが、この力を防ぐためにリテーナーを装着し、新しい位置に歯を動かないよう固定します。
リテーナーの種類と機能
リテーナーは患者の歯並びに合わせて作製し、歯並びの後戻りを防止します。取り外し可能なリテーナーと固定式リテーナーがあり、それぞれの状態によって選ばれます。取り外し可能なリテーナーは、飲み会など多い方の場合利便性が高いため最近人気のタイプです。見た目が目立ちにくいという特徴以外を挙げます。
- 取り外しができるとリテーナーを清潔に保ちやすい
- 歯磨きなどが行いやすい
飲み会の時にリテーナーを外さなければならない理由とは?
矯正治療が終わった後に、歯並びを安定させるために必要なのがリテーナー(保定装置)です。「飲み会のときも付けたままで大丈夫?」と思われるかもしれませんね。しかし、飲み会などでリテーナーを装着したまま飲食をすると、意外と大きなリスクがあるのです。
1. 飲み物の色素がリテーナーに付着してしまう
リテーナーを装着したまま、コーヒーや赤ワイン、ビールなどを飲むと、その色素がリテーナーに染み付いてしまうことがあります。特に透明なリテーナーは色がつきやすく、一度着色してしまうと、なかなか落ちません。
「ちょっとくらいなら大丈夫?」と思われるかもしれませんが、蓄積されるとリテーナーが黄ばんでしまい、見た目も気になるようになります。
2. アルコールや炭酸飲料がリテーナーに悪影響を与える
ビールやハイボール、ワインなどのアルコール類、また炭酸飲料には酸が含まれています。この酸がリテーナーの素材を劣化させ、ひび割れや変形を引き起こすことがあります。
特に長時間アルコールにさらされることで、リテーナーのフィット感が悪くなり、保定の効果が落ちてしまう可能性があります。
3. 食べ物のカスが挟まり、虫歯や歯周病のリスクが上がる
リテーナーを付けたまま食事をすると、食べカスがリテーナーと歯の間に入り込みやすくなります。その結果、歯垢(プラーク)が溜まりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まってしまいます。
さらに、リテーナーの内側に食べカスが詰まると、口臭の原因にもなります。「なんだか最近、口のニオイが気になる…」という場合、リテーナーの汚れが関係しているかもしれません。
4. リテーナーが破損する可能性がある
リテーナーは強い噛みしめや衝撃に弱い素材でできています。そのため、飲み会で「つい勢いよく噛んでしまった!」という場合、リテーナーが割れたり、変形することもあります。
リテーナーが壊れると、新しく作り直さなければならず、余計な費用がかかってしまうことも。特に、お酒が入ると注意が散漫になりやすいので、リテーナーの破損リスクも高くなります。
5. 飲み会の場では紛失しやすい
「ちょっとだけ外しておこう」と思ってテーブルに置いたリテーナー、うっかり忘れてしまった経験はありませんか?飲み会の場は酔いも回り、会話も弾んで、気づいたらリテーナーがどこにあるか分からなくなってしまうこともあります。
特に透明なリテーナーは目立たないため、間違えて捨ててしまうケースも少なくありません。リテーナーの紛失を防ぐためにも、ケースにしまって管理するようにしましょう。
飲み会の時のリテーナーの正しい扱い方
「じゃあ、飲み会の時はどうすればいいの?」という疑問にお答えします。以下のポイントを守ると、リテーナーを安全に管理できます。
- 飲み会の前にリテーナーを外し、専用ケースに入れる
→ ケースを持ち歩くことで、紛失を防げます。 - 食事が終わったら、歯磨きをしてからリテーナーを装着する
→ 歯磨きをせずにリテーナーを付けると、汚れが蓄積しやすくなります。 - できるだけ長時間外しすぎないようにする
→ 長時間外すと、歯が後戻りしてしまう可能性があるので注意が必要です。
飲み会でのリテーナーの扱い方
社交の場では、リテーナーの着脱が必要になることがあります。
リテーナーの着脱タイミング
食事や飲酒の直前には必ずリテーナーを外しておきましょう。リテーナーを外す理由は主に3つです。
- 咀嚼によりマウスピースが変形したり破損する可能性がある
- 色素のある食べ物や飲みものを摂取すると歯やリテーナーが着色する
- リテーナーに食べかすが入り付着すること虫歯や歯周病のリスクが高まる
リテーナーを外して食事をしなければ、唾液の自浄作用もリテーナーの内側には届きません。ストローを使用してもリテーナー内に糖分や色素が入り込むと虫歯菌の好む口腔環境になってしまいます。そのため、リテーナーをしたまま飲めるものは、40℃以下で香りのない水のみです。熱いお湯などをリテーナー着用のまま飲むと、リテーナーが変形してしまいますので、必ず外してください。
飲み会中のリテーナーの保管方法
専用のケースを持参しておき、食事前にお手洗いで外してさっとゆすぎ、ケースに入れておけばリテーナーを安全に保管できます。リテーナーをテーブルに直接置いたり、ナプキンやティッシュに包むのは絶対によくありません。直接置くとリテーナーが不衛生になり、何かで包むとゴミと間違われ紛失してしまうからです。飲み会直後は口をすすぎ、可能なら歯を磨いてからリテーナーを再装着します。
アルコールと矯正治療の相互作用
アルコールは脱水作用があります。そのため、口腔内の乾燥を引き起こし、リテーナーの装着感が不快になることがあります。飲み過ぎないように適度な量を心がけ、水分をこまめに摂取しておきましょう。アルコールによる歯の着色や腐食を防ぐ目的から、飲酒後は必ず口をすすぎましょう。
リテーナーの清掃方法
長期的なリテーナーのケアと管理をこまめに行うことが、効果を最大限に引き出すためには不可欠です。毎日の清掃でリテーナーの衛生を保て、臭いや汚れの蓄積を予防できます。
- 水道水で洗う
- リテーナー洗浄剤で洗う
- 歯ブラシで洗う
水道水で洗う
取り外し式のリテーナを装着し始めたばかりの頃は、水道水で流すだけでも臭いや汚れが取り除けます。温度によって変形する材料のため、必ず冷たい水で洗浄する必要があります。また、ぎゅっと力を入れて握って洗うと固定式リテーナーのワイヤーが変形してしまうので、優しく持って水で洗いましょう。
リテーナー洗浄剤で洗う
市販されているマウスピース洗浄剤を使用すると、臭いと汚れが除去できます。洗浄剤を入れた水にリテーナーを浸け置き、時間が経てば水で流します。泡タイプの洗浄剤の場合は、直接リテーナーに吹き付けて時間を置き、その後、布などで拭きとるものもあります。説明書をしっかり読んで使用しましょう。
歯ブラシで洗う
歯ブラシでこすって落とす場合、硬めの歯ブラシでこするのはおすすめしません。リテーナーに微細な傷がつき、細菌が侵入すると虫歯のリスクが高くなる場合があるからです。やわらかい歯ブラシで、いろんな部分を優しくこすりましょう。
リテーナー清掃後は乾燥させて、清潔なケースに保管しましょう。定期的に歯科医師のチェックを受け歯並びと共にリテーナーの状態を確認し、医院の超音波洗浄機で洗浄してもらいましょう。適切なフィット感を維持しておかないと、リテーナーの装着がイヤになってしまいます。
まとめ

飲み会のときにリテーナーを外さなければならない理由は、以下の5つです。
- 飲み物の色素が付着してリテーナーが黄ばむ
- アルコールや炭酸飲料がリテーナーを劣化させる
- 食べ物のカスが挟まり、虫歯や歯周病のリスクが上がる
- リテーナーが破損する可能性がある
- 飲み会の場では紛失しやすい
リテーナーを長く清潔に使うためにも、飲み会の時は適切に外し、保管することが大切です。「ちょっと面倒かも…」と思うかもしれませんが、矯正治療の効果を長く維持するためには欠かせない習慣です。
「せっかくの飲み会、リテーナーの心配をせずに楽しみたい!」という方は、ぜひ参考にしてくださいね。
リテーナー装着中でも飲み会を楽しむことは可能です。適切なリテーナーの管理とケアを心がけることで、矯正治療での後戻りを防ぎ、美しい笑顔を保つことができます。リテーナーの正しい扱い方を理解したうえで、矯正治療中でも安心して飲み会を楽しみましょう。